アラフォー女性「昇給希望も、昇進には興味なし」

定年後もバリバリ働ける気力を備えたシニア世代が増えている「人生100年時代」の今。
去年10月に安倍首相が「70歳継続雇用」を表明したが、皆さんは何歳まで働くことを想定しているだろうか。

そんな中、総合情報サイト「All About」を運営する株式会社オールアバウトが「アラフォー女性の人生後半戦の働き方」についてのインターネット調査の結果を発表し、アラフォー世代の女性の43%が「60代まで働く」、26%が「70歳以降も働く」ことを考えている、ということがわかった。(2019年1月9日~1月15日、東京、神奈川、千葉、埼玉 「働くアラフォー世代の女性」35~49歳の有職者の女性657名、「働く50代の女性」50~59歳の有職者の女性436名が対象)。

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また、「50代以降も働き続けたい」と回答した人にその理由を聞いたところ、86%と最も多かったのが「お金を稼ぐため」。
2位以降は「老化防止」(54%)、「社会と接点を持っていたい」(51%)、「仕事をすることが好き」(32%)などの理由が挙がったが、「お金を稼ぐため」という切実な理由が飛びぬけていることが興味深い。

では、“アラフォー女性”たちはバリバリとキャリアを積み上げ、昇進・昇給を望んでいるのかというと、そうではないことも判明した。
「現在の年収に満足していない」人は72%と非常に多いのだが、管理職への昇進を希望しない人は74%と、ほぼ「昇進に興味なし」という結果が出ているのだ。

お金を稼ぐために仕事をしたいが、現在の収入では不満。なるべく長く働きたいが、昇進はしたくない…アンケート結果だけを見ると、なんとも難しい希望に聞こえる。

今後、定年後も働き続けることが当たり前になっていくとすれば、その中で生き残りつつ、かつ満足な収入を得る方法など存在するのだろうか。

オールアバウトはこの調査結果を受け、「アラフォーのうちから、70歳以降に役立つ“売れるキャリア”をつくることが重要」という結論を弾き出した。
早速、今回の調査結果や「70歳以降役立つキャリア」の作り方について、総合情報サイトAll About「キャリア」ガイドの水野順子氏と末永雄大氏にお話を伺ってみた。

資格の取得とキャリアアップに目を向けるべき

――「昇給したい」のに「昇進したくない」人が多いのはなぜ?

末永氏:
今回がアラフォー女性向けの調査ということもあり、女性は出世欲よりも職場での和や協調を重視することもあり、管理職への意欲は低めであるということも一定傾向として現れた可能性もあります。

一方で、これまでの日本の仕組み(年金制度や定年時の退職金制度等)は崩壊に向かい、それをアテにできないと考えている人が増えている中で、同じくこれまでの日本の旧来的な会社の仕組み(終身雇用・年功序列等)もアテにできない。日本の現状や将来を考えた際に、親の世代のように会社の業績自体が未来永劫伸び続けるとは思えず、ポストも増えていく見込みがなく、上が詰まっている感を感じている現状では、昇進は現実的ではないと感じ「昇進を希望しない」を選択した方が多いのではないかと推察します。


水野氏によると、高齢になっても仕事を続けたいと考えている人が多いのは「生活水準を上げたい」というようなプラスアルファのものではなく、「年金だけでは生活を維持するのが難しく、収入がなくなることへの不安を感じている」ため。

その中で、「給与・待遇に関しては、当初に決めた条件から大きく変わることが少ない日本の会社では、自分自身が変わらなければ大幅な上昇は難しい」として、「資格や技術を習得すること」や、「昇進や昇格などのキャリアアップを目指すこと」を考えるべきとしている。

しかし、末永氏が指摘したように、昇進を現実的と思わないアラフォー世代の中には「昇進に興味なし」のムードが漂っている。

――「昇進に興味なし」の人が多いけれど、この意欲は改善される?

水野氏:
現在の会社でのキャリアアップを望まない人が多い背景には、これまでの「管理職の働き方」にあると考えます。
まず、長時間労働をする前提があった上で管理職になれるという企業風土により、子育てや介護などで残業が難しい人が、管理職になることを躊躇しているということです。
また、長時間労働をする人が高い評価を受けることが多かったこれまでの企業風土では、時短勤務や何かしらの事情で残業ができない社員の場合、管理職というキャリアパスから外れていたということもあります。
管理職は正社員・男性中心という企業風土が根強くあることで女性の管理職が少ない現実もあります。 この点に関しては、女性活躍推進法、働き方改革によって、今後は労働時間だけではなく、能力が判断されるようになってくることや、在宅勤務やリモートワークなど働き方も柔軟になってくることで、これまで管理職になることができないと考えていた人がチャレンジしやすい環境になってくると、この数字は変わると思われます。

末永氏:
最近では、知識労働産業の伸びとともに、男女に関わらず、階層型組織からホラクラシーやティール型組織のようなプロジェクト単位のチーム運営が増えてきている中で、マネージャーは役職というよりは一つの役割であるという認識が徐々に広まっている中で、女性にとって管理職になるデメリットは減っていく流れになっていくのではと個人的に期待しています。

今後、様々な労働形態が受け入れられていくことで「昇進」への抵抗感が薄れていくと指摘。
さらに、階級や役職のない組織体系が広まることで「管理職」への転身のハードルが低くなるとしている。

一方で、水野氏・末永氏はともに「ひとつの会社の中だけでキャリアアップしていくことだけが“キャリアの継続”にはならない」と話す。

――「仕事を続ける」ことは、ひとつの職でキャリアアップしていくことだけではない?

末永氏:
ひとつの会社がひとりの人生やキャリアの面倒を見られなくなってきている時代背景の中で、「ひとつの会社の中で昇進していく・同じ職種の中で経験を重ねていく」といったような旧来的な「キャリアの継続」のみを前提として個人のキャリア形成を考えていることのリスクが大きくなっています。
会社内価値(ひとつの会社内での価値)よりも、市場価値(複数の会社など市場そのものでの価値)を高めていくことが、ハイクラスのキャリアを狙う人だけでなく、一般的に必要になってきているのだと思います。

水野氏:
現在は、一つの会社で勤め上げる人の方が少なくなっています。キャリアの継続と考えるとき、一社での経験と考えるよりも、「働き続けることで、自身の能力を伸ばしていくこと」がキャリアの継続と考えて良いかと思います。

定年後も「働き続ける」ため必要なのは?

――では、70歳以降に役立つ“売れるキャリア”、「市場価値」を高められるスキルとはどんなもの?

水野氏:
定年後も働き続けていける資格取得に関しては2つの考え方を持つと良いと思います。

まず1つに、現在の仕事の延長線にある資格であること
実務経験があることは、何歳で働くにしても即戦力として評価されます。これまでやってきた仕事に関して目に見える形で示すことができるのが資格です。

もう1つが、やりたい仕事の資格を取ること
自分自身が興味のあること、やりたかったことは学ぶこともスムーズですし、資格を取得した後も収入を得るためのモチベーションになります。

そして、特にやりたい仕事がないという場合にはどうするの?という方には、やはり、今後その資格の先にいる「お客様」が多い資格を取ることをお勧めします。

「仕事を続ける」ことは「会社に骨を埋める」ことと捉えている人も多いだろうが、その形も変わってきている。
長く仕事を続けていくことは、自分の付加価値を上げることとイコールになってきているようだ。

しかし、むやみやたらに資格を習得するのはNGで、実際に仕事の中で役立つものでなくては意味はない。
末永氏は「資格は“取っ掛かり”としてはある程度有効ではあるが、企業が本来評価するのは、何よりも実務経験で培ったスキル」として、今後“生き残る職種”を挙げている。


――今後も“廃れない”仕事とはどんなものがある?

末永氏:
70歳を超えても長く継続性のある仕事やキャリアについてですが、AIや機械による自動化の流れの中で、生き残る可能性の高い仕事は私の考えでは大きく3つあります。 
 
1つめは、感情や人柄、人間関係に依存する属人的な仕事。
その人のキャラクターだからこそ価値を持ち、ロジックではなく感覚で評価される職業は独自の価値を保持し続けやすいと思います。あえてわかりやすく例えるならば、お見合いのオバちゃん、キャリアコンサルタントやヘッドハンター、スナックのママなどです。

2つめは、企業の経営課題解決に関する専門分野で意思決定に関わる経験値が重要となる仕事。
企業の経営課題解決にかける予算やコストは市場が大きく、なくなりません。 しかし単純な業務処理についてはAIなどで自動処理化されてくリスクがあります。 その中でも、上流工程=つまりプランニングや意思決定という経験値が代替されにくく、価値として保持しやすいと思います。
具体的には、経理財務、人事、マーケティング、購買、システム開発などの分野において専門性を高め、それらを会社ごとに最適な取捨選択を行い、実行・運用を行ってきた経験値は代替されにくいです。 
 
3つめは、人に教える仕事。
自分が学んだ経験値、特に暗黙知を後輩などその他の人に教えること。人が経験値から学んできたことを第三者に教える仕事、特に暗黙知を教えることは豊富な経験値を積んだその人でしかできないことが多く価値を保持しやすいと思います。
講師・教師、製造業の熟練の匠、コンサルタント、コンテンツライター、YouTuber等でしょうか。

ユーチューバーまでが選択肢に入ってきたことは少々驚きだが、これも時代の波に乗った“強い”仕事のひとつなのかもしれない。
「人生100年時代」の後半戦の人生設計が立てづらい今、会社の中でのキャリアを考えるよりも、市場でのキャリア・自分の付加価値を積み上げていくことが有効なようだ。

(「アラフォー女性の人生後半戦の働き方」調査結果はこちら なお、オールアバウトでは今回の調査結果をマンガでも解説している。)
 

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。