まだまだ暑い日が続いているこの時期、人間だけでなく動物たちも暑さ対策に奮闘している。「愛媛県立とべ動物園」では、動物たちが“夏限定”の姿に変身しているというが、その姿は私たちの想像をはるかに超えるものだった。
クジャクの“恋の季節”と羽の秘密
まず目を引いたのは、インドクジャクの姿。とべ動物園にはメス2羽、オス1羽のクジャクがいる。
この記事の画像(18枚)春から初夏にかけて、その華麗な羽で私たちを魅了するクジャクだが、8月末のとべ動物園では、全く異なる姿を見せていた。
竹箇平昭信キーパーは、クジャクの羽の変化について、「恋する季節(繁殖期)が春がメインなので、それが終わると古くなっていったん全部抜け落ちます」と説明する。
インドクジャクは4~7月が繁殖期で、この期間中のオスはメスへのアピールに全力を注ぐ。
その役目を終えた羽根は、徐々に抜け落ちていく。そして、翌年の春に向け、また新しい羽根を準備するサイクルが始まる。
興味深いのは、オスの羽の特徴とメスの好みの関係だ。
オスの羽は長く、目玉模様が大きく配置がいい、色合いがきれいなほどメスに人気が高いといわれている。
2024年のオスの様子について、竹箇平キーパーは「前の年はお嫁さんだけだったんだけど、(2024年は)もう一羽メスがおったから、ちょっと張り切ってましたよ。本当、羽が落ち出したのに、まだ広げてた感じ」と興味深いエピソードを語ってくれた。
最後の最後まで、モテたいオスの姿がそこにはあった。
また、通常だと羽を広げるのはオスがほとんどだが、とべ動物園ではメスが羽を広げる珍しい姿も見られるという。
夏のクジャクたちの意外な一面が垣間見えた。
ヒツジとポニーの涼しげ変身劇
続いて驚かされたのは、ふわふわの毛で知られるヒツジの仲間、コリデールの姿だ。
夏のコリデールは、スッキリとした姿に変身していた。
宮越聡キーパーは、この変身の理由を「暑くなる前に毛刈りをして、もこもこの毛がない状態にします。換毛が自分たちでできない動物なので、人為的に毛を刈ってあげる必要があります」と説明する。
コリデールの毛は保温性が高いため、少しでも暑さを和らげようと、夏の前に獣医師が毛をカットするのだ。
この作業は簡単ではない。専用の機械を使用し、独特な固定の仕方や刈る順序などがあるため、非常に技術力が求められる。
1匹あたり3kgから5kgもの毛を刈り取る作業は、1人で行うとかなりの技術とコツが必要だという。
しかし、その努力は動物たちの快適な夏を支える重要な仕事なのだ。
宮越キーパーは「同じ動物かってくらい姿が変わりますので、やっぱり刈ってあげてよかったなと思います」と満足げだ。
そして、ヒツジの隣にいるポニーたちも負けじと夏のイメチェンを披露していた。
宮越キーパーは、今回初めてポニーの散髪に挑戦し、こだわりのヘアスタイルを生み出した。
その腕前の秘密について「息子2人の散髪もまだやってますので、そういった経験が生かされたかなと思っています」と話す。
さらに驚きだったのは、若者に人気の“姫カット”のようなぱっつん前髪のポニーの存在だ。
宮越キーパーはカットの仕上がりに満足しているといい、「毎年やりたいくらいです」と話した。
キーパーによって個性豊かなヘアスタイルが生まれる。それもまた、動物園の夏の風物詩なのかもしれない。
ラクダが“夏バテ知らず”なワケ
最後は、フタコブラクダのウランだ。
4月に取材した時とは、雰囲気ががらりと変わっていた。
山内真司キーパーは、ラクダの夏の姿について「冬毛から夏毛に変わるということで、冬のもこもこのかなり長い毛がきれいに抜け落ちて、こういう裸のような形ですね」と説明してくれた。
ラクダは4月下旬ごろから換毛期となり、夏の間だけこの姿になるのだという。
その過程について、山内キーパーは「結構、体の方から頭やコブの方の先はどうしても最後の方になっちゃう。体の下の方からボロボロと少しずつですけど抜けていきます」と話す。
驚くべきことに、ラクダは気温に合わせて体温調整するのが非常に上手で、日本の猛暑でも夏バテ知らずだという。ウランも涼しげな様子だった。
ラクダの毛を実際に触ってみたテレビ愛媛・曽我部愛麗アナウンサーは「結構硬いのかなと思ったんですけど、ふわっとしてますね。ふわふわなんですね」と、予想外の感触に驚かされていたが、山内キーパーは「これまだたぶん生え始めなので、これがだんだん長くなってくると、もっともこもこになってきて。でも硬くはないですね」と話した。
さらに興味深いのは、オスのブライアンが8月にもかかわらず、すでに冬毛が生え始めているという事実だ。動物たちの季節感覚の鋭さに、改めて驚かされる。
「すみっコぐらし」とのコラボも!
夏休みも終盤に差し掛かっているが、この夏限定の動物たちの姿を見逃す手はない。
さらに、うれしいお知らせもある。
人気キャラクター「すみっコぐらし」ととべ動物園がコラボしたカプセルトイが、8月21日からとべ動物園限定で販売されている。
全部で6種類あり、どれもかわいらしいデザインだ。動物園訪問の記念に、ぜひゲットしてみてはいかがだろうか。
思わぬ発見と驚きが待っている、とべ動物園の夏。羽を失ったクジャク、すっきりとした姿のヒツジ、個性的な髪型のポニー、そして裸同然のラクダたち。彼らの意外な姿は、まさに夏ならではの特別な光景だ。
あなたも動物たちの意外な一面を探しに、とべ動物園に出掛けてみよう。
(テレビ愛媛)