新年度も初週の後半を迎え、新入社員の皆さんは、学生から社会人となりライフスタイルの変化に戸惑っているかもしれない。

一方、企業側にとっても大切な人材をどう育てていけばよいのか、頭も悩ませることだろう。
こうした中、毎年恒例となっている「新入社員のタイプ」が、産労総合研究所から発表された。

仕事場ではメモを取る機会も多いはず(画像はイメージ)
仕事場ではメモを取る機会も多いはず(画像はイメージ)
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今春の新入社員は「AIスピーカータイプ」

それによると、2019年度の新入社員は「呼びかけ次第のAIスピーカータイプ」。

注目のAIスピーカー(引き続きの売り手市場)。多機能だが、機能を十分に発揮させるためには細かい設定(丁寧な育成)や別の補助装置(環境整備)が必要。最初の呼びかけが気恥ずかしいが(オーケー!とか)、それなしには何も始まらない。多くの新入社員はAIにはできない仕事にチャレンジしたいと考えていることをお忘れなく。
(原文のまま)

(提供:産労総合研究所)
(提供:産労総合研究所)

発表では、幼少期に就職氷河期や「リストラの嵐」を見たため、就職活動や企業に期待を持たない傾向があると分析。
可能性を秘めているが、能力を発揮させるためには丁寧な育成が必要であるとしている。

実は昭和時代から行われている

ここまで読んだ新入社員の人は、「勝手に決めるな!」と思うかもしれない。
だが、この命名は“レッテル貼り”ではなく、新入社員の育成に役立てようという狙いがあるのだ。

平成の間に命名された「新入社員のタイプ」たち(画像は関係資料を基に作成)
平成の間に命名された「新入社員のタイプ」たち(画像は関係資料を基に作成)

「新入社員のタイプ」の発表は1973年度に始まってから、担当機関を変えつつも、ほぼ毎年度続けられてきた。タイプのネーミングにはその時代の流行などが反映され、平成元年度は「液晶テレビ型」、平成18年度は「ブログ型」、平成28年度は「ドローン型」などさまざまな呼び名が誕生。
年度ごとにおける新入社員の特徴と育成のヒントを、世間や企業関係者に伝えてきたのだ。

産労総合研究所は2018年度にこの活動を引き継ぎ、現在は企業や大学などへのアンケート調査などを参考に命名を行っている。

それでは、2019年度の新入社員になぜ「AIスピーカータイプ」と名付けたのだろうか。そして、上司たちはどう接し育てていけばよいのだろうか。産労総合研究所の担当者に話を聞いてみた。

他に「電子決済」「ネコ」「セルフレジ」...などの候補も

――「新入社員のタイプ」を命名するのはなぜ?

少子高齢化などの影響により、現代社会では新規採用となる社員の方も少なくなっています。
この状況を踏まえ、大切な人材となる新入社員の採用・育成に役立てていただければと、命名を引き継がせていただきました。
もちろん、新入社員全ての方を特定のタイプに当てはめているわけではありません。


――ネーミングの基準は?

話題となった言葉をピックアップし、その中から採用の支援活動や今後の育成につながるような言葉を選んでいます。
今年度は「AIスピーカー」以外にも、「電子決済型」「ネコ型」「はやぶさ2型」「定額サービス型」「セルフレジ型」が候補となりました。
これらの言葉は、就職活動が売り手市場だったこと、新入社員が企業への期待を持っていないことなどから選択肢となりました。


――その中で「AIスピーカー」を選んだ理由は?

当研究所の調査では、今年度の新入社員は質問に「はい」「いいえ」ではなく「どちらでもない」を選ぶ傾向があります。
自分の意志を表には出さず、能動的に動くことが少ないかもしれませんが、内部には自らの考えと可能性を秘めている。
仕事に対しても丁寧に教え、理解させればしっかりとした仕事をしてくれる期待感があります。

AIスピーカーは反応しないこともありますが、しっかりと呼びかければしっかりと貢献してくれます。そうした部分に通じるところがあるのではないかと、この言葉を選びました。


新元号が6つの候補の中から「令和」が選定されたように、「新入社員のタイプ」もいくつかの候補から選ばれていた。
それでは、企業側はどう育成すれば良いのだろう。そして新入社員が気を付けるべきこともあわせて聞いてみた。

「叱って伸ばす」のではなく「丁寧に見てあげる」

――企業・上司は新入社員をどう育成すれば良い?

「仕事はやって当たり前」という価値観で接するのではなく、仕事の意義や意味を教えるべきではないでしょうか。当研究所の調査では、今年度の新入社員は「成果につながる仕事」以外の業務に価値を感じにくい傾向にあります。

「雑用はしたくない」と感じる方もいると思われますが、社会人として総合的に成長するには回り道も大切です。企業や上司は、成果につながらない業務にも意味があり、成長できることを伝えるべきでしょう。


――接する上での注意点はある?

終身雇用や日本社会の崩壊が報じられてきたこともあり、社員の企業に対する執着心が薄れていると感じます。
企業の成長性や所属することでの将来性を伝えないままでいると、早期に辞めてしまうケースが出るかもしれません。

また、仕事に関しては「叱って伸ばす」のではなく「丁寧に見てあげる」ことが大切でしょう。
疑問点などをまとめて答えるのではなく、業務の工程ごとなど、その場その場の疑問に丁寧に答えることを勧めます。


――新入社員はどんなことに気を付けるべき?

これまでの「お金を払っていた」学生から、これからは労働者として「お金をもらう」立場になります。仕事をしていると嫌なこともありますが、「お金をもらうため」と割り切って考えることも必要でしょう。

また、仕事は個人よりも組織で動くことで、より多くの成果を得られるケースがほとんどです。
苦手な方もいると思われますが、コミュニケーションを取ることも大切でしょう。


――新入社員に呼び掛けたいことはある?

当研究所が発表している「新入社員のタイプ」はあくまで傾向であり、実際は100人いたら100通りの働き方があります。
仕事では難しい局面に出会うこともあると思いますが、「どうしたら面白くなるか」とポジティブに考えることをお勧めします。
ブラック企業の場合は話が別ですが、諦めたりマイナスな思考を持つよりも、困難を乗り越えることが成長にもつながるはずです。

新入社員の皆さん、頑張って!(画像はイメージ)
新入社員の皆さん、頑張って!(画像はイメージ)

働き方が変化していく中、育成方法も対応する必要があるが、「AIスピーカー」は確かに可能性を秘めている。新入社員の皆さんのこれからにエールを送りたい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。