「運転士」「車掌」の名称を「乗務係」に統一する方針
列車の一番前に乗り、運転を行う「運転士」と、列車の一番後ろに乗り、車内放送やドアの開閉などを行う「車掌」。
この「運転士」と「車掌」というのは馴染み深い名称だが、これらの名称をJR東日本が「乗務係」に統一する方針なのだという。
それだけでなく、「運転士」や「車掌」になるために必要だった社内試験を廃止する方針も固めた。
また、「車掌」や「運転士」には新卒採用の社員しかなれなかったのだが、今後は中途採用の社員も「運転士」や「車掌」になれるようになるのだという。
こうした新たな方針を2020年4月に実施する考えなのだが、ネット上では「客の安全が守れるのか」「事故が増えそう」などと、不安視する声があがっている。
「運転士」「車掌」の名称を「乗務係」に統一するのはなぜなのか?
また、「運転士」や「車掌」になるための社内試験を廃止することにはどのような理由があるのか?
JR東日本の広報担当者に話を聞いた。
理由は「運転士」と「車掌」の結びつきを強めるため

――「運転士」と「車掌」という名称を「乗務係」に統一するのは本当?
はい。その方針です。
――その理由は?
これまで、「運転士」と「車掌」は職場が異なっていたのですが、「運転士」と「車掌」が協力し、「安全」「安定輸送」「サービス品質」のさらなるレベルアップを目指すため、「運転士」と「車掌」の結びつきが強くなるよう、職名を「乗務係」で統一することとしました。
「車掌」を経験しなくても「運転士」になれる
――「運転士」や「車掌」になるための社内試験を廃止するとのことだが、そもそも、車掌や運転士になるためにはどのような条件があった?
「車掌」になるためには、まず駅員を2~3年務め、それ以降に実施される社内の車掌試験に合格し、入社3年目以降に車掌研修、実乗務見習いを経て、車掌となります。
「運転士」になるためにはまず、車掌を2年以上経験し、入社5年目以降に実施される社内の運転士試験に合格する必要があります。
さらに、入社5年目以降に運転士研修、実乗務見習いを経て、国家資格の免許取得後、運転士となります。
また、車掌、運転士共に必要な運転適性検査、医学適性検査の基準をクリアしている必要があります。
つまり、新卒で入社しても、運転士になるためには、最短でも6年程度かかっていました。
――社内試験を廃止することで、それがどう変わる?
入社して駅員を2~3年務めた後、「車掌」を経験しなくても「運転士」になれるようになります。
ただし、国家資格の免許を取得しなければ運転士になれないことに変わりはありません。
――廃止する理由は?
試験を経た一律的な養成から、社内外の経営環境の変化に対応し、社員一人ひとりの様々な成長の可能性を拓いていく運用ができる柔軟なジョブローテーションを導入することにしました。
社内試験廃止で安全性に不安は?

――社内試験を廃止することについて、ネット上では安全性を不安視する声があがっているが?
社内試験は廃止しますが、車掌や運転士の業務を行うために必要な研修や訓練を実施し、安全やサービスレベルの維持向上に引き続き、努めていきます。
――具体的には?
「車掌」、「運転士」に必要な運転適性検査、医学適性検査についてはこれまでどおり、実施していきます。
――中途採用の社員でも「運転士」になれるという方針。これはなぜ?
これまで、中途採用の社員は駅業務を中心に、新卒採用の社員は駅業務の後の乗務員を中心にそれぞれ活躍しています。
今後は新卒・中途問わず、多様な経験をしてもらうことを趣旨に、中途採用の社員が車掌や運転士などの業務に就くことを可能としました。
――こうした新たな方針に対する社内の反応は?
新たなジョブローテーションの実施により「社員の可能性がより発揮しやすくなる、柔軟な育成体系に移行する」こととなる、といった肯定的な意見が多く寄せられています。
JR東日本が「運転士」「車掌」の名称を「乗務係」に統一するという方針は事実だったが、なじみある名称が変わってしまうのは寂しくもある。
こうした背景には、中途採用社員の活用など働き方の多様化があるようだが、ひとまず安全性には問題がないということなので安心してほしい。