トランプ嫌いのテレビ・ニュースに変化が

 
 
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いわゆる「ロシア疑惑」が根拠のないものと分かって以来勢いを失ったものがある。トランプ嫌いのテレビ・ニュースだ。
AP通信によると、ムラー特別検察官の報告書の要約が発表された翌日の先月25日(現地時間)、ニュース専門局でも最も人気のあったMSNBCの番組「レイチェル・マドー・ショー」の視聴者は250万人で前週と比較して19%減り、翌日はさらに下がって230万人となった。

ムラー特別検察官
ムラー特別検察官

捜査結果に「正気を失いそうだ」

番組のキャスターのマドーさんは、テレビニュースのキャスターの中でも反トランプ急先鋒として知られ、この22ヶ月間「ロシア疑惑」について微に入り細に入り伝えてきたのだが、ムラー検察官の捜査の結果大統領が潔白とされたことについて「正気を失いそうだ」と25日の放送では嘆いた。

そのMSNBCと反トランプで競うCNNの人気番組「クオモ・プライムタイム」の視聴者を同じ二日間で見ると、25日は97万3000人で翌日は87万3000人に過ぎずその前の週に100万人を超える視聴者があったのに比べて減少が目立つ。

視聴者を増やしたのは親トランプ派メディア

その一方で、ムラー特別検察官の報告をきっかけに視聴者を増やしたのが親トランプ派のFOXニュースだ。マドーさんと視聴率のトップを争っていたショーン・ハナティさんの番組は25日、視聴者の平均の32%増の400万人を記録し、他の番組も大幅な視聴者の増加を見ている。

トランプ大統領は早速ツイートで「フェイク・ニュースは必ず負ける!」と気勢を上げたが、トランプ嫌いのテレビ・ニュースからの視聴者の離反は必ずしもそのチャンネルを見捨てたわけでもないとAP通信は分析する。

実はマドーさんの番組は2016年の大統領選でクリントン候補が敗れた直後にも視聴率が急降下したことがあったらしい。この時はクリントン候補の支持者たちがトランプ候補が勝利したという現実を直視したくなくてテレビから離れたのだと言われた。同様に今回もマドーさんが伝え続けてきた「ロシア疑惑」が間違いだったという事実をトランプ大統領に反対の人たちは受け入れたくないのだろう。

いずれにせよ、トランプ嫌いのMSNBCとCNNは「冬の時代」を迎えているようで、最近の番組からは前のような元気を感じないのは寂しい限りだ。

トランプ嫌いの度が過ぎての「フェイク・ニュース」も少なくなってきたようだが、そうなるとこのコラムのタイトルも変えなければならないのだろうか?

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
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【イラスト:さいとうひさし】

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木村太郎著『トランプ後の世界 第2幕』
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木村太郎
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理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。