昔食べたあの店のあの料理、大好きで通い続けている、そんな素敵な「味」の思い出はないだろうか。時代を越えて愛される愛媛の老舗グルメ。愛媛・松山市の堀江地区から親子3世代で続く食堂の看板メニューと人気の丼ぶりを紹介する。

時代を越えて愛される老舗グルメ

訪れたのは松山市堀江港。目の前には瀬戸内海が広がっており、海の駅「うみてらす」がある。ここはプレジャーボートが係留できる浮桟橋や休憩所が整備されていて、誰もが気軽に立ち寄れるスポットとなっている。

「みなと食堂」の外観と地図
「みなと食堂」の外観と地図
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老舗グルメは堀江港のすぐ目の前にある、昭和42年に開業した「みなと食堂」だ。
中に入ると、お昼どきとあって店内はお客さんでにぎわっている。

20年前から「みなと食堂」を知っているという男性客
20年前から「みなと食堂」を知っているという男性客

常連客は、「エビフライ定食が大好きで週に1回は必ず食べる。僕の定番」と語った。
また、北条地区から訪れた別の男性客は、20年前からこの店を知っているといい、松山で用事があった帰りに「ここがおいしいから立ち寄る」と話す。

「みなと食堂」の看板メニュー「なべ焼きうどん」
「みなと食堂」の看板メニュー「なべ焼きうどん」

現在の店主は3代目の松岡佑樹さんだ。祖母のサダヨさんが立ち上げた食堂を、父で2代目の秀樹さんと切り盛りしている。親子3世代で続く「みなと食堂」の看板メニューは「なべ焼きうどん」だ。開業当時から変わらないおいしさで親しまれている。

なべ焼きうどんを食べているお客さんは、「うまいです、昔懐かしいなべ焼きうどん」
「おいしいですよ、甘みがあって。麺はやわめでコシがある」と絶賛する。

ダシのレシピについて話す3代目店主の松岡佑樹さん
ダシのレシピについて話す3代目店主の松岡佑樹さん

佑樹さんは、「ツユは、数種類の削り節、しょうゆ、砂糖だけ。作れるのが私と2代目だけなので何も書き残してないんです。今後どうしようかなと悩んでいる」と、ダシのレシピは歴代店主に口伝えで受け継がれることを教えてくれた。

みなと食堂のなべ焼きうどんは甘く炊いた牛肉の甘みが特長
みなと食堂のなべ焼きうどんは甘く炊いた牛肉の甘みが特長

みなと食堂のなべ焼きうどんの特徴を佑樹さんに聞くと、麺は少しやわらかめで、煮込むと麺が少しずつスープを吸って、甘く炊いた牛肉がなべ焼きうどんの甘みの特長になっているという。器はアルミ鍋を使っているので熱が伝わりやすくアツアツだ。

牛肉の甘みとうま味がダシととけあった、松山らしい甘めの味付け。うどんの食感はふんわりとやわらかく、懐かしい昭和の味わいが受け継がれた一杯だ。

港町の盛衰と食堂の危機 2代目語る

みなと食堂が開店した当時、堀江港は、広島県の呉市を結ぶ国鉄連絡船や民間のカーフェリーが運航していて、周辺は船の利用客などで大いににぎわった。

みなと食堂が開店した当時を振り返る、2代目の松岡秀樹さん
みなと食堂が開店した当時を振り返る、2代目の松岡秀樹さん

佑樹さんの父で2代目店主の秀樹さんは「私も12、13歳ですでに手伝うようになってました。その当時からずっと店におるような感覚」と当時を振り返った。

しかし、瀬戸大橋やしまなみ海道の開通で船の利用者は徐々に減少。2009年6月を最後に堀江港を発着するフェリーはなくなった。

秀樹さんは「どんどん車が人がいなくなって私どももいつ店をやめるのか、ぎりぎりの所までいきました」と当時の苦境を語った。

新たな挑戦で地域と共に歩む

みなと食堂が存続の危機に立たされる中、3代目の佑樹さんは堀江港を再び人が集まる場所にしようと考えた。

佑樹さんは「堀江港に来る人がフェリーに乗る人以外にいなかったのが原因。まず堀江港に来てもらおうというところからスタート」と語った。

佑樹さんは地元のまちづくり協議会と連携し、堀江港で「青空市」を開催したり、「海の駅」の整備を松山市に要望するなど地域のにぎわいを創出。店も地域に親しまれるファミリー食堂として家族連れや観光客らの利用が増えていった。

佑樹さんは「休日には県外からたくさんのお客さんに来ていただいている。もちろん地元のお客は大切にしながら全国、海外の方も少しずつ来ていただけるお店にしていきたい」と意気込む。

みなと食堂3代目の佑樹さんが考案した「釜あげしらす丼」
みなと食堂3代目の佑樹さんが考案した「釜あげしらす丼」

佑樹さんが6年前に考案した「釜あげしらす丼」は、そんな新たな挑戦のひとつだ。
お客さんから海の幸を使ったメニューのリクエストがあり、実現した。

みなと食堂3代目の佑樹さんのモットーは「3世代で楽しめる食堂」
みなと食堂3代目の佑樹さんのモットーは「3世代で楽しめる食堂」

佑樹さんにお店のモットーを聞いてみると「3世代で楽しめる食堂」だという。「離乳食が終わった子供でも食べられるので、小さいお子さまからお年寄りまで楽しめる丼ぶりは何かないかというとこで『釜あげしらす丼』を考え付いた」と語った。

愛媛県産の新鮮なシラスをたっぷり使った港近くの食堂ならではの一品は、特に女性客に人気だ。

「釜あげしらす丼」を食べるテレビ愛媛・曽我部愛麗アナウンサー
「釜あげしらす丼」を食べるテレビ愛媛・曽我部愛麗アナウンサー

テレビ愛媛・曽我部愛麗アナウンサーが試食すると、「シラスがふわっとしてます。さっぱりした味わいで、卵とシラスがからみあってとってもおいしいです。こんなにシラスがのってぜいたく」と絶賛した。

佑樹さんは、「おじいちゃんおばあちゃんがずっと来ていただいて、その子供さんたちがまた来ていただいて、お客さまの家族、身内がどんどんお客さんを呼んでくれるところが老舗の良いところ」だと語った。

人と人がつながるみなと食堂。受け継がれた味を守りながら、新たな挑戦で活路を開いた店主の情熱がにぎわいを支えている。

(テレビ愛媛)

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