医師「早期では症状が出ない」
国立がんセンターの統計によると、最近では、がんにかかる確率が男性62%・女性46%とおよそ「2人に1人」が、がんにかかる時代だ。
そんななか、2020年以降、1番多いがんになると予測されているのが、「前立腺がん」。
先日、演出家の宮本亜門(61)さんが公表したのも前立腺がんだが、胃がんや肺がん、大腸がんなどと比べて、詳しく知られていない。
いったいどんな病気なのか…
男性:
「分からない。年配の方とかが、なりそうなイメージです」
別の男性:
「知らないですね」
女性:
「主人がなって、働けなくなったら困ります」
あまり知らないという人が多いという「前立腺がん」。そもそもどんな「がん」なのか?
豊富な治療実績がある愛知県の刈谷豊田総合病院を訪ねた。
Q.前立腺がんとは、どこにできるどんな病気か?
刈谷豊田総合病院(泌尿器科)田中国晃副院長:
男性の膀胱の下に『前立腺』があります。がんは前立腺の外側にできやすいんですね、尿道から離れているので早期では症状が出ない。進行すると尿道が圧迫しておしっこが出にくいとか、血尿が出るなどの症状がでてきます
高齢化で患者数増 検査の普及も要因
前立腺がんは、50代以上の男性に見つかりやすく、さらに高齢社会で患者数が増加している。
Q.なぜ前立腺がんが急増しているのか?
田中副院長:
1つは高齢化ですね、高齢男性の病気なので。2番目は食事の欧米化ですよね。もともと前立腺がんは日本人に少ないと言われていたんですけれど、環境の変化で増えてきました
一般的にゆっくり進行して、早期発見では治る可能性が高いが発見が遅れると骨に転移しやすいという特徴もある。
もう1つ増えた要因は、血液を採るだけで分かるという「PSA検査」の普及だ。
「前立腺がん」にかかると「PSA」と呼ばれるたんぱく質が血液中に漏れ出す。採血をして、このPSAを測定するだけで、高い精度で「前立腺がん」の可能性が分かるようになった。
この検査のおかげで早期発見での治癒が可能となった。PSA検査は健康診断や人間ドッグの際、3000円ほどのオプションで受けられる。
田中副院長:
「前立腺がんは早期に見つかれば、治るがんなので、PSAの検診を50歳以上になったら必ず受けていただくのがいいと思います」
一時的でも医療費は高額…「がん相談支援センター」に相談を
前立腺がんの治療は3つ、「手術」と「放射線治療」「ホルモン療法」がある。
早期の患者に行われるのが「手術」で、「ダヴィンチ」という手術ロボットも使われる。執刀医は、遠隔操作でお腹の中のアームとカメラを動かして「前立腺」を摘出する。
田中副院長はこれまで300人ほどを治療したスペシャリストだ。
実際に、模擬手術を見せてもらうと、皮膚に見立てた樹脂に針金を通していく。まるでカニの手のようなこまかな動き…。
手ぶれが補正され、人の手では出来ないような精密な動きができるので、神経や血管を傷つける可能性が低く、患者の体の負担が少ないという。
田中副院長:
「傷口が小さいので回復が早いということと、出血が少ないですよね。なので輸血することがないです。膀胱と尿道を縫う時に非常に細かく丁寧にできるので、入院期間が短くなります」
半年前、ダヴィンチで手術をした男性に話を聞いた。
ダヴィンチで手術を体験した男性(66):
「(体調は)すごくいいですね、実に毎日楽しくて、好きなゴルフをどんどんやります」
このほか前立腺がんを進行させる「男性ホルモン」の作用を抑えて、がんを小さくしていく「ホルモン療法」や、主に75歳以上や手術を選ばなかった場合は、「放射線治療」を選択できる。
体の外から前立腺に放射線を当て、がんを根治させますが、毎日1カ月半ほど平日に通う必要がある。
さらに患者が直面するのが高額な医療費だ。
治療中の男性(77):
最初に請求された時に1万1000円請求されて、それで28回通うと、えらい金額なのででびっくりしました…
ここで知っておきたいのが拠点病院に設けられている「がん相談支援センター」の存在だ。
「がん相談支援センター」では、高額な医療費を軽減する制度などを教えてもらえる。
刈谷豊田総合病院 医療ソーシャルワーカー 高麗彰子さん:
だいたい、通常月々25万円から30万円までの所得の方ですと、月々10万円を越えた位の金額は戻ってくると思っていただいていいかもしれないです。
放射線治療を受けている男性(77)は後期高齢者の制度と、収入が考慮され自己負担は1ヶ月最大8000円程度で済むことになった。
治療中の男性(77):
ひと安心したわけですけど28回通えば、たぶんもう大丈夫だろうと思うんですけどね…
実際に前立腺がんが発見された場合、医療費については一時的な負担でも大きな額になるため、病院のセンターにまずは相談してみてほしい。
(東海テレビ)