行列のできるコーヒー店

シアトルの商店街を訪れると、歴史のありそうな小さなコーヒーショップに行列ができていた。

店の名前はスターバックス。

言わずと知れた、世界規模で展開するコーヒーチェーンで、行列ができていたのは、その一号店。この場所から、スタバは世界に広がった。

行列はいつも店の外にまで続く
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店内はテイクアウトしかできない。かなり改装されているようで1971年開業時の面影はほとんど残していないが、ワンショットのエスプレッソを注文して店の外で飲んでみると、深いコクと香りはおそらく当時のまま。心地よい苦みが口いっぱいに広がった。

スタバ一号店はテイクアウトのみ

シアトルの一コーヒーショップに過ぎなかったスターバックスを世界的な企業に成長させたのが、元CEOのハワード・シュルツ氏だ。イタリアを訪れた際にエスプレッソ・バーの文化に衝撃を受け、シアトルでエスプレッソの販売を開始。「シアトル系コーヒー」というスタイルを確立し、世界中でブームを巻き起こした。

3月にテキサス州で開かれたイベントSXSWにスピーカーとして登場したシュルツ氏の話を聞いた際、「私はアメリカンドリームの証明として生きています」と語っていたのが印象的だった。

「私は公営住宅の出身です。何もないところから来ました。この物語は、アメリカでしか起こりえなかった」

ハワード・シュルツ氏

「アメリカンドリーム」の中でもシアトルは、スタバだけでなく、ボーイング、アマゾン、マイクロソフト、コストコなど世界的企業を生んだ街として知られている。

ただ、人口は72万4745人で、全米18位にすぎない(2017米国勢調査)。人口72万人と言うと、日本では岡山市くらいのサイズだ。愛称は「エメラルド・シティ」とされるほど水と緑と山に囲まれた自然の豊かな土地で、決して大都会と言えるような場所ではない。

空港で会った男性は「世界に開かれた街なのでたくさんのアイデアが集まり、穏やかな人と自然が多いおかげでイノベーティブな発想が生まれるんだ」と笑っていた。

SXSWにて。シュルツ氏は気さくに記念撮影に応じてくれた(左が筆者)

次に狙うムーブメント

「シアトル系コーヒー」という世界的流行を作ったスターバックスが次に狙うムーブメントが、高級志向による「のめり込むようなコーヒー体験」だ。

スタバが厳選した、希少で個性的なコーヒー豆を集めた「スターバックス リザーブ」。これを体験する施設や販売店が次々と増えている。

コーヒー豆を焙煎しているところを見学したり、焙煎したての豆から多彩な抽出方法で淹れたコーヒーを味わったりできる高級店「スターバックス リザーブ ロースタリー」が世界5店舗目として東京・中目黒に誕生したことは話題となっているが、シアトルには「ロースタリー1号店」以外にも「リザーブ・ストア」や「リザーブ・コーヒー・バー」など気軽に「リザーブ」を楽しめる場所がたくさんある。

建物のてっぺんに見慣れたロゴの人魚が少しだけ顔を出しているスターバックス本社を訪ねてみると、1階はリザーブ・ストアになっていた。

スターバックス本社

広々とした空間にイスやソファが置かれ、暖炉が落ち着いた雰囲気を醸し出している。お洒落なカウンターで談笑しながらゆっくりとコーヒーを入れているのが印象的だ。

ドリンクやパンのほか、少量生産の豆やTシャツなどの限定グッズも買うことができる。

スタバ本社1階の店舗
広い店内で、暖炉の前でコーヒーを楽しめる。

私自身は、コーヒーは好きだがこだわりがあるわけではなく、店内でウロウロしていると、個性的なヒゲの店員が声をかけてくれた。

あまり詳しくないことを正直に告げると、「もちろん気にしなくていい」とコーヒーの特徴を優しく説明してくれ、私の好みを判断して、重めで香りが高い豆を選んでくれた。

暖炉のそばでゆったりと飲むコーヒーの味は格別だった。

プロフェッショナルと会話をしながら、ゆったりとした時間を楽しむコーヒー体験。店舗の規模は違うが、もともと日本のコーヒー喫茶にある文化と近いのかもしれない。

コーヒーのプロと会話をしながら楽しむ

以前取材した、スターバックスのアジア担当副社長のデイビッド・ハンソン氏が語っていた内容を思い出した。

「朝起きてコーヒーを飲みたい、仕事をする前にコーヒーを飲みたい、仕事中でもランチタイムでもいつでもスターバックスに接していたい。お客様には、そんな風に思ってほしい。クオリティの高い商品を提供することで、スターバックスのブランド認知は確固たるものになっていると考えています」

イタリアのコーヒー文化を取り込んで「シアトル系コーヒー」というイノベーションが生まれたように、日本のコーヒー文化とも似た「新しいカルチャー」がまたシアトルから広がっていくかもしれない。

新しいコーヒー文化は根付く?

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