国の借金増えても問題なし…“MMT理論”って何?

国の借金増えても問題なし―。財政赤字恐れるに足らず―。
これまでの経済理論を真っ向から否定するこんな考え方が今、注目を集めている。

それがMMT=Modern Monetary Theory、「現代金融理論」。

自国の通貨を持つ国は債務返済に充てるお金をいくらでも発行できるので財政赤字が膨らんでもインフレを抑制していれば問題ないとする理論だ。


債務残高がGDP=国内総生産に対して約235%と先進国のなかでも突出した借金を抱える日本。そして財政再建に向け今年10月に消費税増税を控えるなか、「そんな夢のような都合のいい理論あるの?」という印象を持ってしまう人もいるだろうが、この「MMT理論」は、もともとは1990年代にアメリカの大学教授らによって提唱された考えだ。なぜ今、「MMT理論」が関心を集めているのか?

その背景には2人のアメリカ人の存在が大きく影響している。
 
1人は2018年11月にニューヨーク州から下院選に立候補して当選し、史上最年少の女性下院議員になった野党民主党のアレクサンドリア・オカシオコルテス氏。

NY州 アレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員

今年のタイム誌で、「世界で最も影響力がある100人」にも選ばれた彼女はMMTの支持者だ。

そしてもう一人が2020年の大統領選に出馬を表明している民主党のサンダース上院議員。MMTを提唱したニューヨーク州立大学のケルトン教授がサンダース議員の顧問を務めている。

バーニー サンダース上院議員

日本の有識者会議で異例4ページ説明

では、日本では「MMT理論」はどう受け止められているのだろうか?

4月4日に、国会で麻生財務大臣がMMTについて質問された際には「財政規律を緩めることは極めて危険なことになりうる」と否定的な考えを示した。

そして17日には、国の予算の在り方などを有識者たちが提言する財政制度等審議会(財政審)の財政制度分科会が開かれ、財務省は出席者に渡す資料の中でMMTを紹介した。

一つの経済理論について異例ともいえる4ページに渡って説明が記され、分科会では初めて議論された。

元総務大臣の増田寛也分科会長代理によるとMMTについて「みんな否定的だった」という。

元総務大臣 増田寛也氏(左)

財務省の“危機感”

ここまでページを割いてMMTを紹介した背景には財務省の“危機感”がある。

2018年11月、審議会は麻生大臣に、平成の時代の予算編成に関する意見をまとめた「建議」を提出した。

そこには厳しい見解が列挙されていた。

「財政事情を後世に押し付けてしまう恰好になっている」。
「平成時代は、受益と負担の乖離が徒に拡大し、税財政運営が歪んだ圧力に抗いきれなかった時代と評価せざるを得ない」。さらに「一段と財政を悪化させた過ちを二度と繰り返すことは、あってはならない」と警鐘を鳴らした。


増田会長代理は「財政審としての危機感は高まっている」としたうえで、「こういう理論(MMT)を財政審で議論する意味はある」と話した。平成の財政と同じ轍を踏むことが許されない中、MMTを資料に取り上げることで“異端理論”にくぎを刺そう、という財務省の狙いが透けて見える。

ある財務省幹部も、国民の中にはこうした理論に「安易に乗ってしまう人がいる」と指摘した。


 また、今回の審議会では主な議題がもう一つあった。それが来月大阪で開催する13年ぶりの地方公聴会だ。

財政の深刻な状況が国民に十分に自分たちの問題として受け止められていない、という問題意識から、「財政の在り方」を国民と一緒に考える場を設けようというものだ。こうした場で、日本の財政の現状、そして、その是非はさておきMMTのような異端理論にも目を向けることは、我々の税金はどのように使われているのか、またどのように使われるべきなのかを考えるいいきっかけとなるかもしれない。

執筆: フジテレビ 経済部 財務省担当 日比野 朗