福山市の神辺西中学校3年・三好美羽選手が、陸上女子100メートルで日本中学記録を更新した。「中学3年生をきれいに締めくくって恩返ししたい」と語っていた三好選手。全日本中学校陸上での活躍に期待がかかる。

14年ぶりの快挙! 日本中学新記録

7月6日、ホットスタッフフィールド広島で行われた中学生通信陸上広島県大会。8月に行われる全日本中学校陸上の出場をかけ、三好選手は予選から記録更新をねらう。他の選手を大きく引き離してフィニッシュ。その瞬間、会場が騒然となった。なんと予選で日本中学記録(11秒61)を上回る11秒60。しかし、追い風が2メートルを超えていたため参考記録に…。この日の三好選手の敵は朝から吹き続ける強い風だった。

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決勝で再び記録更新をねらい、得意のスタートで一気に飛び出す。中盤でも失速することなくトラックを駆け抜け圧倒的な強さでゴールした。タイムは11秒57。決勝では天候も味方につけ、風はギリギリ公認となる追い風2.0メートルだった。2010年以来となる14年ぶりに日本中学記録を更新し、全日本中学校陸上への出場を決めた。

三好選手は「タイムを見てこれは夢だなと思いました。努力の積み重ねで達成できたと思います。家族、先生、友達のおかげだと本当に改めて実感しました」とコメント。前日本中学記録保持者の土井杏南選手に対しては「レースの時の風は私の方が強かったですが、そんなすごい方とタイムが近いっていうのがとてもうれしいです。高校でもすごいタイムを出されていて、本当にあこがれです」と話し、土井選手を目標にずっと頑張ってきたことを明かした。

中学2年生で11秒台へ突入

陸上短距離界の歴史に名を刻んだ三好選手。この3年間で確実にタイムを縮めてきた。
2022年9月、中学1年生ながら12秒13で広島県中学記録を5年ぶりに更新し注目を集めた。

2023年7月、中学2年生で11秒台を記録
2023年7月、中学2年生で11秒台を記録

2023年7月、中学2年生の時に挑んだ広島県中学校陸上の女子100メートル決勝で11秒89と初めて11秒台をマーク。レース後、三好選手は「予選では力が入ってしまって思うような走りができなかったですが、決勝の前に顧問の先生に『力を抜いて頑張ってこい』と言ってもらって頑張れたと思います。2023年の目標が11秒8台のタイムを出すことだったので、目標をクリアできた」と話している。

「後半に強くなりたい」

そして2024年2月、三好選手はさらなる高みを目指し、練習に取り組んでいた。
「後半がやはり課題で100メートルを走りきるために、短い距離だけでなく100メートル走を練習でも取り入れて最近は走り切れるようになってきたかなと。後半に強くなりたいなって思います」と自分の課題に向き合う。
三好選手の最大の武器は、何といってもスタートダッシュ。爆発的な加速で優位にレースを進めてきたが、課題克服のため“得意のスタート”でも意識を変えた。「まずスタートで力を使わずに走ることをイメージしています。後半の走りで足が後ろに流れてしまうことが課題なので、足を前に出せるように家でストレッチを頑張っています」と三好選手。後半の失速を防ぐため、後半に体を起こす意識を持っているという。

2024年2月、中学最後のシーズン前にインタビュー
2024年2月、中学最後のシーズン前にインタビュー

また、中学校最終学年に向けた目標について聞かれると「中1、中2でつらいことも楽しいこともありましたが、ここまで来られたのは応援してくれている方々のおかげです。陸上の練習で両親が送り迎えしてくれたり、先生も私たちに寄り添ってくれて、一緒に練習する仲間も『一緒に頑張ろう』と言ってくれるから私も頑張ることができます。たくさんの人に感謝し、中学3年生をきれいに締めくくって恩返しできるように頑張りたいです」と笑顔で答えていた。

トップレベルの日本選手権で自信得る

中学3年生の今シーズン、レベルアップのために国内最高峰の大会に挑んだ。6月に行われた陸上の日本選手権で、三好選手は女子100メートルに出場。予選は持ち味のスタートで他の選手たちに食らいつき、上半身をうまく使った独特のフォームで後半もペースダウンすることなく3位でフィニッシュ。目標としていた準決勝に進んだ。

予選から3時間半後に行われた準決勝。得意の鋭いスタートで前半は横一線の争い、トップレベルの選手を相手に果敢に挑む。後半はさすがに引き離され、初の日本選手権は準決勝敗退となったが堂々たる走りを見せた。この種目に出場した中学生は三好選手ただ1人。日本のトップスプリンターのスピードを体感し、「全中(全日本中学校陸上)に向けて、自信がつきました」と手応えを感じていた。

8月の全日本中学校陸上で優勝を目指す三好美羽選手
8月の全日本中学校陸上で優勝を目指す三好美羽選手

日本選手権で得た自信を胸に、2024年7月、三好選手はついに日本中学記録を更新。課題としていた後半でもスピードが落ちるどころか圧倒的な強さでゴールを切った。レース後、「全中(全日本中学校陸上)、全小(全国小学生陸上)でまだ1回も優勝できていないので、今年こそ優勝をねらいたい」と決意を語った。

2023年の全日本中学校陸上で、わずか1000分の7秒差で優勝を逃した三好選手。あれから1年、課題と向き合い努力を重ねて挑む2024年の全日本中学校陸上。中学最後の全国の舞台でどんな走りを見せてくれるのか。女子最速の中学生スプリンターから目が離せない。

(テレビ新広島)

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