世界的なロックバンド、ザ・ローリング・ストーンズ(以下、ストーンズ)のメンバーが自らプロデュースした大規模企画展『EXHIBITIONISM —ザ・ローリング・ストーンズ展』が今、話題だ。

貴重なギターや写真など500点以上のアイテムが並び、ショップではすでに売り切れのグッズもあるという。この盛り上がりを支えているのはストーンズ世代と言われる60代、70代のシニア層。今回はストーンズ展の人気と合わせて、日本でさまざまなブームを牽引している60代以上の消費について、経済ジャーナリストの渋谷和宏さんに話を聞いた。

(聞き手:新美有加アナウンサー)

今、シニア世代がブームの発信源に

メンバーが共に暮らした部屋を完全再現

――ストーンズ展、ご覧になってどうでしたか?

鑑賞する前は写真展のようなものだと勝手に思っていたんです。それがいい意味で裏切られました。愛用のヴィンテージギターや手書きの日記などプライベートな展示も多いですし、アルバム・デザインなどのアートワークや3Dで体験できるコンサート映像もあり、非常に見応えがありました。

1962年頃、ストーンズと名乗る前のメンバーが共同で暮らしていたアパートを忠実に再現した部屋ですが、これから世に出ようとしていた若い彼らの気配が濃厚に再現されていて感慨深くなりました。 

一流デザイナーが手掛けた70点を超える衣装も

それからステージ衣装。かなり奇抜なものもあって『よくこれを着ていたな』と思いましたが(笑)、実際に着用したライブ映像も合わせて展示されていて、それを見るとちゃんと着こなしていてさすがだなと。

今回の展示はただ並べるだけじゃなくて、それがどう使われていたのかも立体的に見せていて非常に説得力がありましたね。個人的にはアンディ・ウォーホルが好きなので、彼が手がけたアートワークをたくさん観られたのも嬉しかったです。 

アンディ・ウォーホルら名だたるアーティストが手掛けたオリジナル・アートワークも展示

――青春時代、ストーンズは聴いていましたか?

実はリアルタイムでは聴いてないんです。ずっとビートルズが好きで。ただ、1980年にフランシス・フォード・コッポラの映画『地獄の黙示録』を観たとき、ストーンズの『(I Can’t Get No)Satisfaction』が流れて衝撃を受けたんです。1965年の曲ですが、すごいリフだなって感動して。それで、60年代の曲から聴き始めてどんどんハマっていきました。

さらに『MISS YOU』という曲で本格的にのめりこみましたね。ストーンズらしいコアなR&Bをベースとした曲ですが、当時一世を風靡したディスコサウンドも見事に織り交ぜた素晴らしい曲です。

――展示会場には年配の男性が多くいらっしゃっていました。基本的には60、70代がコアなファン層といわれていますが、それより少し下の渋谷さん世代や私(20代)の世代もいたのも印象的です。改めて、ファン層の幅広さを感じました。
 
ストーンズ展と同じ現象を考えると、昨年大ヒットした映画『ボヘミアン・ラプソディー』が思い浮かびます。この作品、当初は僕やそれよりちょっと上の世代の人が懐かしがって観にいっていたのがだんだんと若い人にも伝わって観客動員数が増えた。

実は今、若い人の間に起こっている消費のムーブメントは60、70代のシニア世代から影響を受けているというのが少なくないんです。

2012年以降から現れた新しい消費傾向

――『ボヘミアン・ラプソディー』以外で、シニア世代が発信源になったものは何かありますか?

日本の消費シーンを振り返ると、僕は2012、13年頃、日本の消費が大きな転換期を迎えたと考えているんです。

まず、2012年頃に顕著に現れたのがフルサービス型喫茶店の復活。1980年代は喫茶店のピークでしたが、90年代半ばからはシアトル系のセルフサービス型カフェが日本に出店するようになり、若い客はそっちに流れ、90年代後半以降はフルサービス型の喫茶店は減っていきました。

ですが、2012、13年頃から息を吹き返し、それを牽引したのが「コメダ珈琲」。中京圏中心だった店舗が2013年になり全国展開し、今後も店舗数を増やしていくということで、完全に積極的戦略に切り替えています。

――大躍進ですね。

バイクもそうです。全盛期は販売台数100万台以上を超えていたんですが、これも90年代をピークに減っていき、2011年頃には40万台を割ります。ところが2013年頃に一時期、売れ出します。オートキャンプも同様で、こちらも90年代がピーク。その後、下がり始めて、2013年頃からまた増え始めいま、若い人たちの間でもアウトドア人気は高いですよね。

こういった現象の背景には、2012年頃の約810万人いると言われる、団塊世代の大量引退です。退職一時金や退職年金をもらい、時間も得ています。そういった人たちが喫茶店を潤したり、バイクに乗ったり、キャンプを始めたりしています。

シニア世代が消費をリード

――若い人たちにとっては、フルサービス型のカフェもオートキャンプも新鮮なモノに感じます。

そうですね。そして今、消費行動に第二段階が起きています。シニアの人たちが息子夫婦(団塊ジュニア)やお孫さんを「コメダ珈琲」などの喫茶店に連れてくるようになったんです。また、フルサービス型カフェを新鮮に感じた若い層たちが結構来ています。音楽でも、若いアーティストがCDだけじゃなくアナログレコードを発売するという動きもあるんです。

こういう風に2012、2013年頃からはっきりしてきたのが、シニアの人たちが消費をリードして若い人に影響を与えるというベクトルです。

また、SNSによる情報拡散の影響もあると思います。Facebookは40代が多いと言われていますが、60代もやっている人が多く、高校などの同窓会を呼び掛けたりしていますね。Facebook以外にもLINEなどで仲間内のクローズドなSNSを使って趣味などの共有をしています。

――シニアの方たちのパワーはすごいですね。

熱量だけではなく資産もすごいんですよ。日本人の個人金融資産の総額は1830兆円と言われていますがGDPが550兆円ですから、3倍以上。その7割近くを60歳以上が持っている。しかもその半分が預金と貯金とされていて、使おうと思ったらすぐ使える。しかもこの世代は時間もありますから、企業はシニア世代にいろいろとアピールしていきたいんです。


『EXHIBITIONISM – ザ・ローリング・ストーンズ展』
■開催会場:TOC五反田メッセ(東京都品川区西五反田6-6-19)
■開催日程:〜6月5日
■開館時間:月~土 10:00~20:00 ※最終入館 19:30まで/日 10:00~18:00 ※最終入館 17:30まで
(10連休期間 4/27~5/5  10:00~20:00 ※最終入館 19:30まで、5/6  10:00~18:00 ※最終入館 17:30まで)
■チケット:一般   3500円、学生2000円、小学生以下入場無料(但し保護者同伴に限る)、VIPチケット 8800円、土日祝限定・優先入場チケット (指定日前日まで)3700円、(指定日当日)4000円、トートバッグ付き入場チケット 5500円 、ピンバッジセット付き入場チケット 13500円
https://stonesexhibitionism.jp/


文・浦本真梨子