特集はお年寄りの自転車事故です。免許の返納などを背景に自転車に乗るお年寄りが増えているとされ、運転中の死亡事故も相次いでいます。大事なのは頭を守ること。警察は「ヘルメット」の着用促進に乗り出しました。

長野県上田市の79歳の女性。移動の手段は専ら自転車です。

女性(79):

「お医者さんへ行く時とか、買い物や銀行へ行く時とか。(自転車は)なくてはならないもの」

「愛車」は5年ほど前に買った電動アシスト自転車です。

女性(79):

「電動だと坂道もサーッと上がってきちゃうし、楽なんです」

車もありますが、もう1年以上ハンドルを握っていません。

女性(79):

「(Q運転しない理由は)怖い。コンビニに突っ込むとか、私もそうしてしまいそうな思いがある。頭が真っ白になってブレーキかアクセルかわからない時があった。これじゃいけないと。(免許は)もうじき返します」

免許の返納や健康志向の高まりで、こちらの女性のように、自転車に乗るお年寄りが増えていると言われています。それに伴ってか、大きな事故も…。

県内では、6月末現在、自転車の死亡事故が6件発生しています。すでに、去年1年間の3倍です。亡くなったのは全員65歳以上。6件のうち4件は、側溝などの道路外に逸脱した単独事故で、頭を強く打ったことが致命傷になったとみられています。

7月22日に上田警察署で行われた高齢者向けの自転車の安全講習。

講習:

「ちょっと座ってみてください。足はべったりつくくらい」

参加した6人には、ある役目が託されました。

委嘱式:

「ヘルメット着用モニターを委嘱します」

渡されたのは自転車用のヘルメット。一般的なものから、まるで帽子のようなものまであります。委嘱されたのは、自転車に乗る際は必ず着用してもらい、普及につなげようというヘルメット着用モニターです。

モニターの男性:

「自転車乗る機会が多いので、いずれヘルメットかぶろうと思っていた。(麦わら帽子みたいで)このまま買い物にもいける」

モニターの女性:

「ひさしがあるのがすてき。似合っているか似合ってないか、わからないけど、これなら大丈夫。かぶっている感じがしない」

自転車の単独死亡事故の増加を受けて、県警はヘルメット着用を広く呼びかけています。

上田警察署交通課・鷹野昌樹課長:

「管内では自転車使用中に転んでしまい亡くなってしまった事故が2件発生している。残念ながらヘルメットかぶっていなかった。頭部保護の観点からもヘルメットの着用をお願いしたい」

警察庁の統計でも、自転車に乗っていて死亡した人の「負傷箇所」は、6割以上が「頭部」でした。ヘルメットを着用していない時の「致死率」は、着けている時の2.4倍にもなり、県警も「死亡事故の多くはヘルメットをかぶっていれば、致命傷にならなかった可能性が高い」としています。

女性(79)は、髪型が崩れるのが嫌で以前はヘルメットをかぶっていませんでした。

しかし、去年4月に鎖骨を折る転倒事故を起こして以来、必ずかぶるようにしているということです。

女性(79):

「どうしたって転ぶでしょ。鎖骨を折った時は、頭つかないように肩をついたからよかったけど、やっぱり頭つく。(ヘルメットは)安心というか保身のために必要。必ずヘルメットをかぶって、転ばないように事故を起こさないようにしたい」

ヘルメットモニターにもなった女性は、引き続き、安全な運転を心掛け、車の免許の期限が切れる来年の秋には返納する考えです。

自転車販売店もヘルメット着用の呼びかけに協力しています。

サイクルベースあさひ長野徳間店・下山久志店長:

「車から自転車に移り変わる方は年々、増えていると実感」

免許返納の広がりもあってお年寄りの自転車購入は増えているようで、長野市の専門店ではシニア向け自転車のコーナーを設けています。

特に人気なのは、電動アシスト付きの車輪が小さく乗り降りしやすいタイプ。売れ行きは去年の同じ時期の1.5倍ほどです。そこで、店は警察と足並みを揃え、自転車と一緒にヘルメットの購入も薦めています。

サイクルベースあさひ・下山久志店長:

「まだ購入者はあまり多くはないんですけど、興味を示す人は多い。ヘルメットがあるのとないのでは、転倒の際の安全性がずいぶん変わってくる」

車に代わる高齢者の足として利用が増えている自転車。安全運転とヘルメットが、お年寄りを痛ましい事故から守ることにつながります。