駅弁をつくる過程で余ってしまったおかずを捨てずに何かに活かせないか?「フードロス」削減のカギは意外と身近なところにあったようで、同じ会社が運営する立ち食いうどん・そば店で50円の小鉢おつまみに。「もったいない」精神が課題解決につながった。
1日1万食の駅弁のおかずは200種類
JR広島駅の駅弁をつくる会社「広島駅弁当」は、1日に1万食以上を作っていて、入れる「おかず」は、およそ200種類。
この記事の画像(14枚)注文を受けてつくるので、足りなくなることは許されない。食材の仕入れを工夫して余りが、わずかになるように計算し、かなりのロスを減らしているが、盛り付けた後にどうしても余りがでるという。この会社では、余ったおかずを社員食堂で出しているが、それでも余った分はやむなく捨てていたという。
食べられる食品を廃棄するフードロスは、国内では減少傾向にあるものの、農林水産省などによると、捨てられている食品は、年間でおよそ523万トンあるとみられている。
広島駅弁当では、捨てる食品を1パーセント未満まで減らしたが、それでも余る分をどうするか頭を悩ませていた。
同じ会社の立ち食いうどん店が“おつまみ”に
そこで出てきたのは余ったおかずを、同じ会社が運営する立ち食いのうどん・そば店で“おつまみ”として出すというアイデア。きっかけは、店舗の責任者との立ち話だったという。
広島駅弁当 製造部・佐々木哲也部長:
うどん店の責任者から「余っている物ありますよね。店でおつまみにするアイデアがある」ということで、二つ返事で受けました。もったいなかったので、救われた思いですね。
余ったおかずは、広島駅前にある立ち食いうどん・そば店に。手軽にうどんやそばを食べられるとあって、昼は地域の人たちやビジネスマンでにぎわう。駅弁を配送するのと同じ衛生管理のもとで届いたおつまみを盛りつけた小鉢の値段は50円。店の藤田さんによると、うどんができるまで、待っている間に50円おつまみを目にして「ついでに」と買う人が多いそうだ。
お客さんの評判は上々なようだ。
来店客:
安いし、美味しそうだったので。
来店客:
おいしいです。めっちゃうまいです。
Q:お弁当に詰め切れなかった“おかず”を“おつまみ”として出しているそうだが…
常連客:
そうなんですか。でも50円って最高。こういうちょこっとしたものがあると、食べたくなるじゃないですか。で、全部美味しいんですよ。
午後5時を回ると、立ち飲みができる店に変わる。生ビールやハイボールにおつまみ小鉢が人気だ。この営業形態にしてから、こんなうれしい効果も。
立ち飲みで新客層ゲット
驛麺家ビッグフロントひろしま店・藤田 欣也さん:
外の看板や当社のSNSを見ていただいて、立ち飲みファンの方が立ち寄ってくださるようになり、新しいお客様に来ていただいている印象があります。
新しい来店客の獲得にもつながったこの取り組みで藤田さんは、フードロス削減のためにおつまみ小鉢を食べてもらって、店を盛り上げたいと語る。
“おつまみ”として提供することで、廃棄は4分の1ほど減少。広島駅弁当の佐々木さんは、さらなる削減に意欲を示す。
広島駅弁当 製造部・佐々木哲也部長:
毎年廃棄は減っているので、どこまで減らせるかチャレンジをしたい。組織文化として、「もったいないと思う」のは失いたくないと思っている。
おつまみ小鉢の50円という価格が驚きだが、廃棄にもお金がかかるので、これは言わば“食べてもらうための価格”で、赤字かどうかよりもフードロス削減を目的としているということだ。
食べられるのに、保管が難しく捨てざるを得ないフードロスは、いろいろなケースがあるが、「もったいない」精神を発揮させることで、新たな活用策を見出すこともできるようだ。
(テレビ新広島)