死刑判決が確定している袴田巖さんのやり直しの裁判は5月22日に結審しました。検察側は再び死刑判決を求め、弁護側は無罪を主張しています。社会部の斎藤力公 記者と菊地幸夫 弁護士が争点などについて解説します。

「検察は死刑を求刑する以外ない」

-菊地弁護士、この死刑求刑をどう受け止めますか?

菊地幸夫 弁護士:
捜査機関として“ねつ造”を認めるわけにはいかないので、そうなると死刑を求刑する以外ないですね

-齊藤記者はどう考えますか?

齊藤力公 記者:
やり直しの裁判で大きなポイントになっているのは「証拠がねつ造されたものかどうか」です。これを裁判所がどう判断するか。そのために検察は一貫して「袴田さんが犯人」としてきょうも死刑求刑をしたと考えられます。

証拠とされる5点の衣類はねつ造?

-斉藤さん、この「証拠のねつ造」について改めて説明していただけますか?

齊藤力公 記者:
裁判所が「ねつ造」と指摘したのが袴田さんの死刑確定の決め手となった犯行着衣とされた5点の衣類です

齊藤力公 記者:
時系列でみますと1966年の6月に事件が発生し、そして、8月に袴田さんが逮捕されました。

その間は、みそタンクに仕込み用の味噌が入れられ、ふたがされ、重しが載せられた状態でした。 翌1967年の7月から出荷のため味噌の取り出しが始まり、8月に味噌タンクの底から発見されたのが5点の衣類です
    
-弁護側はこの1年2カ月後に見つかった不自然さも指摘していますよね。

齊藤力公 記者:
はい、5点の衣類には血痕の赤みが残っていますが、弁護側は「長期間みそに漬かることで、黒く変色する」と主張。つまり「赤みが残った衣類は発見直前に入れられた」と主張しています。

袴田さんはこの時すでに逮捕されていますので、入れることは不可能だと。つまり、「5点の衣類は捜査機関によってねつ造された」と主張しています

東京高裁はねつ造の疑いを指摘

そして、裁判のやり直しを決定した東京高裁は「第三者がみそ漬けにした可能性がある。捜査機関による可能性が極めて高い」と“ねつ造”の疑いを指摘しました。
  
-捜査機関による証拠のねつ造の可能性の指摘は、捜査関係者にとってどんな意味があるのでしょうか?
   
菊地幸夫 弁護士:
「証拠のねつ造」というのは捜査機関にとっては屈辱的・侮辱的なことで、黙って受け入れる訳にはいかないですね

-やり直しの裁判では検察が死刑求刑をしなかったケースもありますよね?

齊藤力公 記者:
はい。過去の例を見ていますと無期懲役の判決が下された事件のやり直しの裁判では検察がそれまでの主張を一転させ、無罪を主張したケースや立証を放棄したケースがありました。

例えば東電OL事件や足利事件ではDNA鑑定によって真犯人とみられる第三者のDNAが新たに検出されたことから、検察が有罪立証を断念し無罪を主張しました。

ただ、過去に死刑確定後に無罪となった4つの事件ではいずれも検察は死刑を求刑しています

再審制度の見直しの動きは?

-袴田さんのケースも検察側にいろいろな選択肢があったのでは? 

菊地幸夫 弁護士:
例えば犯人の可能性がある第三者が新たに出てきたら別ですが、今回はそうではなく、
「証拠のねつ造」を否定しており、被害者が4人もいることを考慮すれば死刑以外ないでしょうね

-検察側の死刑求刑に対し弁護側は?

齊藤力公 記者:
弁護側は「5点の衣類は何者かが袴田さんを犯人に仕立て上げるためにねつ造したもの」としています。そして「それが実行できたのは警察としか考えられない」と無罪を主張しています

-判決はいつ頃に?

齊藤力公 記者:
5月22日で結審しましたが、判決は9月26日に言い渡されることが決まりました。
   
-静岡地裁の再審開始決定から10年以上が経ち、ようやく結審。再審制度の見直しも必要になって来るのでは? 

菊地幸夫 弁護士:
再審制度の条文は法律家から見ると20条にも満たないアッサリしたもので、もっと細かく規定した方が良いと思われる点があります。この事件をきっかけに改正に向けた議論が進むのでは

再審制度は70年以上改正されていません。ここまで袴田事件の再審裁判についてお伝えしました。

テレビ静岡
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