「アメリカ・ファースト」は一回のみ

「トランプ大統領はモデルチェンジしたのだろうか?」
31日行われたトランプ大統領の年頭教書演説を聞いてそう考えた。
演説は野党民主党との対決よりも協力を訴えることに重点が置かれたものだったし、何よりも「アメリカ・ファースト(米国最優先)」という攻撃的なスローガンを口にしたのが、約1時間20分の演説中たった一回だったことも意外だったからだ。

それも、次のような移民問題で妥協することを弁解する場面での発言だった。
「大事なことは、この(移民問題をめぐる)提案は、アメリカ・ファーストを実現する法案しか署名しないという私の鉄のように固い誓いに沿う法律になるのです」

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移民に厳しい方針から方向転換?

この演説で、トランプ大統領はDACA(幼少の頃に密入国した不法移民の救済制度)を廃止すると発表したのを改めて、該当者の内180万人に米国籍を与えることを含む移民制度の改革を提案した。

トランプ大統領宿願のメキシコとの国境沿いの壁の建設と抱き合わせの提案だが、それでも不法移民には一貫して厳しい対応を迫ってきた同大統領としては大きな方向転換だったし、その考えは民主党に近く、与党共和党内にも反対の声が上がったぐらいだったので、その弁解に「アメリカ・ファースト」を借用したように思えた。

一年前の就任演説で、トランプ大統領が「アメリカ・ファースト」と言ったのは貿易問題を熱心に語った時だったが、今回同大統領が年頭教書演説の中で貿易問題に触れたのは、わずか4つの短い文節に過ぎず「アメリカ・ファースト」とは言わなかった。

貿易問題といえば、トランプ大統領はダボス会議の際に米国テレビのインタビューで、環太平洋連携協定(TPP)離脱を再考しても良いと言って「アメリカ・ファースト」路線を軌道修正したのかと驚かせた。

この一年の学習などからのモデルチェンジか

スティーブ・バノン氏

もしそうだとすれば、考えられるのは国内、国際問題を問わず対決路線に強くこだわっていた前首席戦略官のスティーブ・バノン氏が、先月トランプ大統領から決別を宣言されたことだ。

バノン氏は、かねて大統領の娘イバンカさんや婿のクシュナー氏が協調的な考えを主張するのと対立が伝えられていたが、これで2人の影響力がホワイトハウス内で増したのかもしれない。

また、昨年7月に大統領首席補佐官に任命されたケリー氏がホワイトハウス内の秩序を立て直したと言われおり、トランプ大統領も以前に比べて「お行儀よく」なったのかもしれない。

さらに、この一年でトランプ大統領もワシントン政界と様々な軋轢を繰り返し、その「学習効果」から対決姿勢ばかりをむき出しにするのを控えるようになったことも考えられる。

おそらくはこうしたことの複合作用なのだろうが、トランプ大統領が年頭教書演説で見せたように「モデルチェンジ」したのであれば、ホワイトハウスのあり方は昨年とは大分様変わりするのではなかろうか。