「これで、中東和平への道が開けるのかもしれない」

パレスチナ解放機構(PLO)が15日、今後イスラエルを和平交渉の相手としないと宣言したのに接してそう思った。
この結果パレスチナをめぐる事態が流動化しそうだからだ。

「アブ・ディス」をパレスチナ新国家の首都とする新中東和平案

この宣言に先立って開かれたPLOの会議で、パレスチナ自治政府のアッバス議長は次のように言ったと伝えられた。

「アブ・ディスを首都とする(パレスチナ)新国家なんてありえない。だけど彼らはアブ・ディス(を首都とするように)と言っているのだ」
アブ・ディスは、エルサレムの東側の郊外にある人口12,000人ほどの小さな町。アッバス議長は「彼ら」が誰なのか触れなかったが、米国とイスラエル、サウジアラビアは、エルサレムの大半をイスラエルの首都とする代わりにこのアブ・ディスをパレスチナ新国家の首都とする新中東和平案をまとめたと言われていた。

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シナイ半島の1600平方キロの土地をパレスチナ新国家に編入する案も提唱

この和平案は、首都のあり方に加えてガザ地区に隣接するシナイ半島に1600平方キロの土地をエジプトが提供し新国家に編入することも提唱しており、昨年11月末サウジアラビアのムハンマド皇太子がアッバス議長を呼びつけ、この案を呑むよう求めたとニューヨーク・タイムズ紙などが伝えていた。

「二ヶ月間でこの和平案を受諾しないと、あなたは議長の地位を失うことになる」
皇太子は議長にこう迫ったと言う。

サウジアラビアは、それまでも経済援助を縮小してパレスチナ自治政府を追い込んできており、この要求を拒否するとアッバス体制は崩壊すると言われていた。

「イスラエルを相手とせず」と宣言し、事実上新和平案を拒否

しかし、アッバス議長は二ヶ月の期限を前に「イスラエルを相手とせず」と宣言し、事実上新和平案を拒否したわけで、イスラエルのリベラルな日刊紙「ハーレツ」電子版は「アッバスの絶望からの叫び」だったと分析する社説を掲載した。

この拒否を待っていたかのように、米国務省は米国の国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への拠出金6500万ドル(約72億円)を保留すると16日発表した。これはUNRWAの総事業費の30%に当たる額で、危機に瀕していたアッバス体制にとどめを刺すことになると考えられている。

アラファト前PLO議長を暗殺した男がパレスチナ新国家の首相に?

問題はその後だが、新たな指導者として浮上してきたのがモハメド・ダーランという人物だ。ダーラン氏はアラファト前PLO議長を暗殺したとしてパレスチナを追われアラブ首長国連邦に亡命中だが、サウジアラビアやエジプトはこの人物をパレスチナ新国家の首相に据えようと画策していると言われる。

そうなると、パレスチナ新国家建設がにわかに現実味を帯びてくるわけで、一見和平への障害に思えたPLOの宣言も、逆に和平へのきっかけになったと後に言われるのかもしれない。