1年経って妊娠しなければ「不妊」

今回のドラマでは、奈々(深田恭子)と大器(松山ケンイチ)夫婦が、結婚して1年3か月経つのに自然妊娠しないことから、妊活を決意。不妊治療専門のクリニックを受診します。

そして、医師から「検査するまでもなく不妊です」と診断されました。

「えっ、そうなの?」と思った方もいるかもしれません。

日本産科婦人科学会では、不妊の定義を「妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一年間妊娠しないもの」としています。ドラマの医師の診断は正しかった訳です。

通常は夫婦が妊娠を望むと、1年で約8割、2年で約9割が妊娠すると言われています。

現在、日本で不妊症に悩むカップルは6組に1組と言われ、何らかの不妊治療を受けている人は50万人に上ると推測されています。

女性の「生涯妊娠しない」率を左右するもの

ドラマでは、奈々は35歳の設定です。
晩婚化も、不妊が増えている大きな要因の1つです。では奈々は晩婚に当たるのでしょうか?

日本人の平均初婚年齢は、男性31.1歳、女性29.4歳(2016年 厚労省の人口動態調査)。

「30歳前後なら、妊娠・出産に全く問題ないのでは」と感じるかもしれません。しかし、こんなデータがあります。

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女性が一生涯にわたって妊娠しない率=「生涯不妊率」は、女性の結婚年齢が30歳を過ぎると10%を越え、35歳以降になると30%を越えるのです。奈々はこのラインにいる訳です。

なぜこのような高い率を示すのか。ここで注視すべきなのは、「卵子の年齢」と「卵子の数」です。

“同い年”の卵子が減り続ける…

男性の場合、生涯を通じて何歳になっても、睾丸で精子は作られます。

一方、女性は生まれた時点で、卵巣内に約200万個のすべての卵子の元が備わっており、生まれて以降に新たに作られることはないのです。つまり、卵細胞は本人と一緒に年齢を重ねていく訳です。

35歳の女性が排卵する卵子は、胎児期に作られてから35年以上経って排出されているのです。“35歳以上”の卵細胞では、染色体異常率の上昇など、妊娠・出産に至らないリスクが高くなっていきます。

また、200万個もあった卵細胞は、月経が始まる思春期頃までに約180万個が自然消滅し、約20万個にまで減ってしまうのです。

その後は、月に約1000個減り続け、37歳になると残っているのは約2万5000個とされています。

不妊の半数は男性が原因

しかし、不妊の原因は女性にだけあるのではありません。

大器は、会社の同僚から「不妊症の約半数は男性が原因ですからね」と知らされ、驚きます。

世界保健機関(WHO)の調査では、「女性のみが不妊の原因」は41%。一方、「男性のみが原因」「男女ともが原因」がそれぞれ24%。つまり、男性が関与しているケースは48%と、半数を占めているのです。(残りの11%は原因不明)

このような場合を男性不妊といいます。男性不妊の約90%が、精子をつくり出す機能自体に問題があり、精子をうまくつくれない「造精機能障害」です。

精子の「数」と「元気度」

「造精機能障害」があると、精液の中の精子の数が少なかったり、精子の動きが悪いなどの症状が出ます。精液中の精子の数や運動率などを調べるのが、ドラマで大器も受けた「精液検査」です。

世界保健機関(WHO)の正常精液所見では、精子の濃度が、1500万個以上 / ml、運動率40%以上ならば正常とされています。ドラマでも医師がこの数値を言っていました。

(検査の結果、「無精子症」という精液中に精子が1個もない状態であったとしても、精巣内に精子や、精子になる前段階の細胞がある場合があります。1個でも生きた精子が回収できれば、不妊治療による妊娠が期待出来ます)

精子の“待ち伏せ作戦”

そして大器と奈々が取り組み始めた不妊治療が「タイミング法」。不妊治療の最初のステップです。

女性の排卵日を予測してセックスするもので、大器のように精液所見で問題がない場合に行われます。排卵日にセックスするのが最も妊娠しやすいと考えている方が多いようですが、実は違うのです。

排卵のときに、受精が行われる卵管にある精子の数が多いほど受精率は高くなります。

精子は女性の体内であれば数日は生存しています。そして、動きの早い精子は5~6時間で卵管に達しますが、遅い場合は数日かかります。一方、卵子は排卵後、24時間しか生殖能力がありません。

つまり、排卵当日の性交では、多くの精子がたどり着く前に卵子の寿命が尽きてしまうのです。

だから、排卵時に多くの精子が卵管にすでに「待機」している状態、精子が卵子を〝待ち伏せ“するのが得策なのです。そこで、クリニックでは排卵時期が近づいてきたら、経腟超音波検査で卵胞の直径を計って、排卵日をより正確に予測します。

通常、卵胞径が20mmに成長する直前、つまり排卵2日前あたりでセックスを行うよう、医師から指示があります。

不妊治療でEDも…

ドラマでは、奈々が用意するスタミナ料理等のプレッシャーに押され、大器が「緊張する」と言って、一時“不調”に陥っていましたね。

排卵日を意識するあまり、男性が「今日やらなくては」「もし失敗したら・・・」といった緊張や不安で、EDや射精障害を招くことがあり、これを 「タイミングED」といいます。
まずはご主人の精神的なプレッシャーを和らげること。また、場合によっては、バイアグラなどのED治療薬を服用するという選択肢もあります。

不妊治療の第一歩でもあるタイミング法。実際どのくらい行えば効果があるのでしょうか。そして「止め時」は?

大器と奈々の不妊治療の行方と合わせ、次回の「隣の家族は青く見える」の放送終了後(毎週木曜10時放送)に、この「ホウドウキョク」で解説いたします。

はるねクリニック銀座 院長
清水真弓

「隣の家族は青く見える」公式サイト:
http://www.fujitv.co.jp/tonari_no_kazoku/index.html