精子任せにしない「顕微授精」とは?

『隣の家族は青く見える』の中で不妊に悩む奈々(深田恭子)と大器(松山ケンイチ)は今回、体外受精に踏み切りました。

卵を育てる注射を毎日自分で打ち、排卵前にクリニックで採卵。そして、奈々の卵子と、大器が用意してくれた精子を培養士さんが体外で受精させました。

今回、奈々は採卵した5個の卵子について、培養士さんから「3個を体外受精、2個を顕微授精にしようと思います」と言われます。

顕微授精とは、一体どういったものでしょう?体外受精とどう違うのでしょうか?
 

 
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体外受精の場合、卵子に精子を振りかけて自然に受精するのを待ちます。

一方、顕微授精では、形態や運動能力をみて選んだ1個の精子を、細いガラス針の先端に入れて、顕微鏡で確認しながら卵子に直接注入、人工的に受精を行います。

つまり、体外受精は卵子と精子の力で受精が起こりますが、顕微授精は人の手で受精させるという大きな違いがあります。

では、顕微授精の受精率はどれくらいでしょうか?

日本生殖医学会によると、顕微授精による受精率は約50〜70%です。これは、自然に受精するのを待つ体外受精と比べるとやや高い数字です。

卵子と精子が受精したあとは、体外受精と同じように受精卵を培養し、ある程度発育させたあとに子宮へと移植します。
 

無精子症でも可能なケースが!

顕微授精の登場は、不妊治療にとって画期的でした。

と言うのも、精子数が極めて少ない等の重度の男性不妊の場合、顕微授精が登場するまでは妊娠を諦めざるを得ませんでした。

しかし、1992年にベルギーで初めての成功例が出て以来、顕微授精によって多くのカップルに赤ちゃんが授かるようになってきました。

また、技術が発展したことで、無精子症でも精巣内部等から精子が得られれば顕微授精することができます。

費用についてですが、顕微授精はすべて自費となり、注射や採卵などを入れた費用は1回あたり30〜80万程度は考えておく必要があります。

顕微授精は、基本的には、体外受精でも受精出来なかった場合に行う治療です。

ただ最近は確実に受精卵を得るために、体外受精を行う際に、一部の卵子には顕微授精を行うクリニック・病院も増えています。

だから、奈々も「3個を体外受精、2個を顕微授精にします」と言われた訳ですね。
 

「顕微授精ベビーは高リスク」のデータは無い

自然妊娠の場合、放出された数億個の精子の中で、最後に勝ち抜いた1つの精子が卵子の中に入って受精します。

一方の顕微授精では、1つの精子を選ぶのも、それを卵子に注入するのも人が行います。当然そこには、安全性と高い倫理観が必要になってきます。

なお、ネット上などで散見される「顕微授精で生まれた子供には何らかの障害がある確率が高い」云々を裏付ける事実やデータはありません。

現在の研究では、不妊治療と出生児の異常との関係性は認められていません。

ただ、治療内容に関わらず、高齢出産であるほど様々なリスクが高くなるのは事実です。

そのことは、事前に理解をしておくべきでしょう。
 

「受精≠妊娠」「妊娠≠出産」

顕微授精は、人工授精や体外受精で成功しなかったカップルにとって最終手段となる治療法です。

ただし、顕微授精で受精したからと言って、それが妊娠に直結する訳ではありません。

妊娠するためには、受精卵が子宮内膜に根を張り、着床しなければなりません。顕微授精で無事に受精できても、妊娠しない可能性があります。

体外受精と顕微授精の両方を含めた、胚移植1回あたりの妊娠率は、30歳で42.1%、35歳で38.1%、40歳で26.1%と、年齢とともに下がっていきます。

また妊娠後も、流産・死産してしまう可能性があります。

最終的に出産に至る確率は、治療1回あたり30歳で21.5%、35歳で18.4%、40歳で9.1%となります。

このように、受精率が高い顕微授精であっても、加齢によって成功率は低くなっていきます。

治療を始めるタイミングが、とても重要だと言うことがわかります。

今回、めでたく妊娠した奈々。大器も周囲も大喜びです。

これから無事出産出来るのか、ますます目が離せませんね!
 

はるねクリニック銀座 院長
清水真弓