胎児の心拍を確認したのに…

ドラマ『隣の家族は青く見える』で、体外受精で妊娠した奈々(深田恭子)。

大器(松山ケンイチ)や周囲も喜びに湧きます。

検診ではモニターで赤ちゃんの心拍も確認。おもちゃを用意するなど、母になる実感がつのっていく幸せな日々…。

しかし、悲劇は突然訪れました。

奈々は流産してしまいます…。

妊娠とわかった喜びもつかの間、妊娠が途絶えてしまう悲しみはとても深く、とくに女性の心身に強いダメージを与えかねません。

自然妊娠であっても、妊娠して流産する割合は15%前後あります。

統計上、体外受精・顕微授精は、やや流産率が高くなると言われています。
 

 
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体外受精や顕微授精など「生殖補助医療」による妊娠率と生産率(死産や流産にならずに赤ちゃんが生まれる確率)、流産率を年齢別にグラフで示しました。

30歳女性の場合、胚移植あたりの妊娠率は42%、治療あたりの生産率は22%です。

年齢が5歳上がり、35歳になると、妊娠率は38%・生産率は18%と少し下がり、さらに5歳上がって40歳になると、妊娠率は26%・生産率は9%となります。

そして流産率は、30歳で16.5%、35歳だと20.1%、40歳では34.6%です。
 

早期の流産が起こる原因とは

流産のほとんどは妊娠12週未満で起こる早期流産です。

早期流産の原因の約80%は胎児の染色体異常によるものとされています。

では、なぜ染色体異常が起こるのでしょう。

染色体異常は受精、卵割の段階で常に起こっています。精子と卵子が受精した遺伝子の組み合わせには、数限りないパターンが生まれます。

それらの中には、“偶発事故”として染色体異常が起こる場合が多々あるのです。

もともとの精子・卵子に異常がなくても、卵が成長する過程で異常が発生することもあるのです。

“偶発事故”による異常は、どのカップルにも起こる可能性があり、防ぐことのできない、ある意味「自然淘汰」の現象といえます。

ですから、早期流産したからと言って、その女性は妊娠・出産できないなどということではなく、次回の妊娠では無事出産に成功することは十分にありえます。

ただ、女性の年齢が高くなるにしたがって、染色体異常が生じる率は上がります。女性の加齢に伴う「卵子の老化」が関係しているのです。
 

「不育症」だと出産出来ないのか?

自然流産を繰り返し、なかなか出産までたどり着けない場合を「不育症」といいます。

その中でも、妊娠22週未満で3回以上流産を繰り返す場合を「習慣流産」と呼びます。

実は、不妊症と不育症を併せもっている方は少なくありません。「不育症」例の約1~3割程度は不妊症も併せ持っているというデータもあります。

「不育症」の原因はさまざまですが、「不育症」の約半数は、先述した“偶発事故”による染色体異常を、運悪く繰り返したことによるものです。女性・男性ともに何のリスク因子も持っていません。

ですから、特別な治療を行わなくても次回妊娠の予後は良好です。

子宮形態異常や抗リン脂質抗体症候群、プロテインS欠乏症などが原因の場合は、治療が必要になることがあります。

しかし、「不育症」全体で見れば、80%以上の方が出産することが出来るのです。

奈々は自分の中に宿った小さな生命の灯が消えた悲しみに耐えきれず、家を飛び出してしまいます。

もう母になることをあきらめるのか。それとも再び治療に向き合うのか。

ますます目が離せなくなってきましたね!
 

はるねクリニック銀座 院長
清水真弓