不妊治療はステップアップしていく

『隣の家族は青く見える』第4話の冒頭で、奈々(深田恭子)は医師から、タイミング法から人工授精への『不妊治療のステップアップ』を勧められます。

不妊治療では、不妊の原因や年齢、不妊歴などを考慮しながら、一定期間で治療法を変えていく、ステップアップ治療が行われています。

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(1)タイミング法→(2)人工授精→(3)体外受精→(4)顕微授精…の4つのステップが基本になります。

受精を患者さん本人の卵管で行う「一般不妊治療」には、タイミング法と人工授精があります。

さらに高度な技術を用いる「生殖補助治療」が、体外受精、顕微授精です。また、人工授精からは、保険治療の適用外ですので、自費診療になります。

35歳の奈々は、タイミング法を経て、人工授精へとステップアップする段階にいる訳です。

「自然」へのこだわりが妊娠を妨害する

しかし今回、奈々は夫である大器(松山ケンイチ)や自身の母親から、人工授精へのステップアップに抵抗や反対をされてしまします。

一般的に、出来るだけ自然なかたちでの妊娠を望まれる方は多いでしょう。

特に男性は、「人工」という名前に抵抗感を持つ傾向があります。「そんな人工的なことまでして子どもは欲しくない」等々…。しかし、不妊治療のゴールは赤ちゃんを授かることです。

そして厳しい現実ではありますが、タイミング療法に長い時間をかけた結果、女性が年齢を重ねてしまうと、妊娠率は下がっていきます。

ステップアップ治療をためらうことで、妊娠のチャンスを逃してしまうことにもなりかねません。前向きな気持ちでステップアップを考えることが大事です。

人工授精は『射精のお手伝い』

人工授精とは、排卵日にあわせて精子を採取し、細いチューブ(カテーテル)を用いて人工的に子宮の中へ精子を注入する方法です。

とは言え、精子と卵子の「受精」は患者さん本人の卵管で行われるので、実は自然妊娠と基本的には変わりありません。いわば射精のお手伝いです。

ただし、人工授精では、採取した精液をそのまま使用することはありません。

自然な性行為では精液の大半は外にこぼれ、女性の子宮に進入するのは元気な精子だけです。そこで人工授精では、元気な運動精子だけを集めて洗浄・濃縮する「精子洗浄濃縮法」を行います。

また、排卵モニタリングにより、排卵時期を正確に予測して、的確なタイミングで人工授精を行います。

人工授精の料金は1回当たり2万円前後です。不妊治療は高額なイメージがありますが、人工授精までなら、家計を大きく圧迫するほどの負担にはなりません。

人工授精の妊娠率と『止め時』

さて、気になる人工授精による妊娠率ですが…

精液所見が正常な男性と不妊原因の認められない女性のカップルの場合、人工授精の1周期当たりの妊娠率は、7~9%程度です。

人工授精では3周期目までに妊娠するケースが多く、ここまでに妊娠しない場合、回数を重ねる度に妊娠の確率は低下します。

このため、人工授精を4~5回繰り返しても妊娠しない場合には、次のステップである体外受精や顕微授精を選択肢として考慮することになります。

35歳以上の方だと、もう少しステップアップの時期が早まるでしょう(奈々もそうですね)。ここまでに妊娠しないご夫婦の場合、人工授精ではクリアできない不妊原因が隠れている可能性があるからです。

さて、大器と奈々は、人工授精で無事に妊娠へと至るのでしょうか。

それとも、より高度な「生殖補助治療」へとステップを進めていくことになるのでしょうか…?

はるねクリニック銀座 院長
清水真弓