元二重スパイ自宅ドアで濃厚な神経剤痕跡

「ドアノブに毒が仕掛けられたという事実はスパイ暗殺計画に高いレベルが関与したことを示唆している」

“Poisoned Door Handle Hints at High-Level Plot to kill Spy”
ニューヨーク・タイムズ紙の4月1日の報道である。

ロシア人元二重スパイ、セルゲイ・スクリパル氏と娘のユリアさんが襲撃された事件で、猛毒の神経剤“ノビチョフ”の痕跡は、スクリパル氏の自宅玄関付近で最も濃厚に発見されたという情報は既にイギリス・メディアが伝えている。

確認されていないが、この日のニューヨーク・タイムズ紙は、“ノビチョフ”は玄関ドアのノブに仕掛けられていたとロンドンとワシントン発でさらに具体的に伝えている。

そして、同紙によれば、ロシア政府の高いレベルの関与が疑われる根拠は“ノビチョフ”のような極めて危険で扱いの難しい化学兵器をドアノブに仕掛けるのはきちんとした訓練を積んだ“プロ”にしかできず、そのような神経剤と“プロ”を動かすには最高レベルの承認が必要であるということである。

プロにしか出来ない仕業とNYタイムズ紙報道

“プロ”でなければ、他人の自宅玄関ドアのノブに怪しまれることなく“ノビチョフ”を仕掛け、狙い通りにターゲットに吸収させることはできないという点は比較的容易に想像できる。

然るべき訓練を経て、その扱いに習熟していなければ、自分自身の身に害を及すからである。

だが勿論、これだけで、例えば、直ちにプーチン大統領の関与を断じる事はできない。

しかし、綿密な計画・準備と一定以上の高いレベルの承認が無ければ、このような極めて特殊な化学兵器を使った暗殺未遂事件は起きないというのである。

ロシア政府はでっちあげと主張しているが、イングランド南西部の街・ソールズベリーでロシア人の元二重スパイと彼の娘が、旧ソビエトによって開発された第4世代の神経剤“ノビチョフ”により重篤に陥った事件からほぼ1ヶ月が経った。

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ロシア政府は否定しているが“犯行”はその決意を示す為の見せしめか

スクリパル氏は依然意識不明のようだが、現在では娘のユリアさんの容態はかなり良くなり、どの程度か不明だが、会話もできるようになったという。

内容は漏れ伝えられていないが、ユリアさんの証言は非常に重要になる。

この間、イギリスやアメリカ始め西側各国とロシアの間で外交官の追放合戦が始まっている。西側各国が追放を決めたロシア人外交官は現時点で合計130人以上。ロシアもイギリスとアメリカの外交官に対し計80人以上の退去を要求するという報復措置を発表している。

“ノビチョフ”という極めて特殊で、いわば“足がつく化学兵器”の神経剤を使って、ロシア政府から見れば“裏切り者”の元二重スパイの暗殺を謀れば、誰もがロシア政府の関与を疑う。

ロシア政府は否定しているが、それでも実行した理由は“ロシア政府の決意を示し、裏切り行為への警告として見せしめにする為”と多くの専門家が指摘している。

次元は全く異なるが、スポーツにおけるロシア政府の組織的ドーピングとドーピング隠しでも判る様に、彼らの思考回路は我々とは全然違う。

勝てば良い、力で押し切れば良いという基本的な考えを持つロシアには「こちらも強く出なければ何事も上手くいかない。」という我が国外務省の専門家の言葉を改めて思い出す。

だが、この事件を巡る対立がいつどこでどのように収束するのか、終わりは見えない。