麻酔を使って出産の痛みを和らげる「無痛分娩」で、妊婦や新生児の死亡事故などが相次いで発覚したことを受け、厚生労働省の研究班が3月29日、安全対策をまとめ、公表した。

麻酔に習熟した常勤医が「麻酔管理者」として責任を持って診療に当たるなど、無痛分娩を行う医療施設の望ましい体制を提示。
分娩の実績や容体が急変した場合の具体的な対応について情報公開を徹底するよう求めるとともに、施設の体制強化、妊婦らが施設や分娩方法を選べる環境を整えることで、安心して無痛分娩を受けられる体制を作り上げるのだという。

年々増加している無痛分娩を巡っては、妊産婦が死亡したケースが2010年以降14件あり、重篤な後遺症が残ったケースも起きている。

今回の安全対策で死亡事故を防ぐことができるのだろうか。
また、そもそも無痛分娩にはどのような問題があり、死亡事故が起きるのだろうか。

厚生労働省の研究班の代表で北里大学病院の院長、海野信也さんに話を聞いた。

日本での実施率は5%

ーー無痛分娩、日本での実施率は?
硬膜外麻酔を用いた無痛分娩は先進国では、普通のお産の様式の一つです。

お産の様式には文化的側面があります。
お産をする年代の女性の考え方も変化します。そのため時代とともに変化してきていますし、国によって相当な違いがあるということを認識していただく必要があります。

たとえば、帝王切開によるお産は、わが国では20%弱ですが、40%位の国もあります。
無痛分娩についても、日本では5%くらいですが、フランスでは60%を超えているようです。

わが国では無痛分娩があまり拡がっていなかったのですが、最近は増えてきています。

その理由は主に、お産をされる方々の中で無痛分娩を希望する方が増えていることにあると思われます。

死亡事故の一因は合併症への対応

ーーなぜ死亡事故が起きるのでしょう?
 
妊産婦の死亡は無痛分娩でない場合でも、年間40例前後、発生しています。

わが国の妊産婦死亡率は先進国の中でも比較的低いと考えられますが、現代の医学では完全に防ぐことはできないのが現実です。

わが国では、報告された妊産婦死亡例について、一例一例、原因を検討し、少しでも妊産婦死亡を減らすための努力を続けています。

無痛分娩に関連して報道された個々の死亡例の原因については直接調べたわけではないので、正確なところはわかりません。

無痛分娩は硬膜外麻酔という麻酔方法を用いて実施されることが多く、それが世界標準でもあるのですが、硬膜外麻酔では頻度は非常に低いものの、適切に対応できないと、母児が危険な状態になってしまう合併症が起きることがあります。

2017年に報道されている例では、そのような合併症の際の対応が間に合わなかった可能性があると考えています。

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今回の安全対策に効果はあるのか?

ーー死亡事故を起こさないためにはどんな安全対策が必要?

報道された例のような状況に対しては、麻酔の合併症に適切に対処できるように、日頃から準備して、訓練を行っておくことが重要と考えられます。

ーー安全対策は徹底されている?

これまで、このような安全対策について、明確な基準はなかったので、徹底されているかどうか調査されたことはないと考えられます。

今回の研究班では安全対策の基本的なことを示しました。

今後は現場の医療機関で、しっかり安全対策が行われるように体制を作っていく必要があると考えています。

ーー安全対策が徹底されない理由は?

これまで基準がなかったので、徹底されているかいないか自体がわかっていないということです。

すでに十分に安全対策がなされている施設は多いと思いますが、それも調べられたことがなかったということになります。

ーー海野さんが代表を務める厚生労働省の研究班が出した安全対策について。これによって安全性は向上すると思う?

今後、安全対策を実現していくために、関係学会・団体で取り組んでいくことにしています。

その取り組みの中で安全性の向上を達成していくという考えで進めています。