一般的なビジネスパーソンは、月曜日から金曜日まで、毎日通勤している。

長い通勤時間や身動きが取れないほどの混雑状況に、ストレスを感じている人は多いことだろう。

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「満員電車」と「睡眠時間」がおもな要因

毎日の通勤から、ストレスを無くすことはできないものか。

人事労務のカウンセリングサービスを行うベリテワークス株式会社・代表取締役で心理カウンセラーの浅賀桃子さんは「ストレスの要因は本当に色々あるので、人によって引き金になるものは様々」としたうえで、通勤のストレスはおもに、「(1)混雑・満員乗車」と「(2)睡眠時間」が影響していると分析。

まずは、「(1)混雑・満員乗車」の話から聞いた。

「満員電車にストレスを感じる人が多いのは、人と人の距離の問題です。自分の身近な人であればよいのですが、赤の他人であればあるほど、自分とその人の距離を保ちたいと思うのです。

たとえば、そんなに人が多くない電車に乗った時、7人掛けのシートがあると、どこに座りますか? 多くの場合、最初に両端、次に真ん中、そして徐々に残りの席が埋まっていきますよね。それは、できる限り人との距離を保ちたいから。

心理学的には『パーソナルスペース』と言いますが、満員電車はパーソナルスペースが狭まってくるのがストレスになるのです。そのため、『またこれに乗るのか』と感じますし、今の季節であれば、風邪など『流行性の病気感染への不安』も一因となるでしょう」(浅賀さん、以下同)

「また同じ人を見かけた」と、通勤電車で何度も同じ人を見かけた経験がある人は多いだろう。人は自分が思っている以上に、周囲の他人を意識・警戒している。それらをいちいち敏感に感じ取っていては、行動に不自由が出るため、私たちは知らず自分の感情を鈍麻させているのだが、気づかぬうちにストレスも溜まっているということか。

続いて、「(2)睡眠時間」については、以下のように話す。

「会社から遠く離れた場所に住んでいる人がいれば、すぐ近くに住んでいる人もいますが、出社時間は全員同じです。そう考えると、遠くに住んでいる人ほど朝早く起きなければいけないし、帰りも遅くなってしまいます。

つまり、睡眠時間が短くなりやすいというわけです。一般的に、睡眠とストレスは密接な関係にあり、睡眠の満足度が下がるとストレスを感じやすくなります」

浅賀さんは、「単純に通勤時間に比例するわけではない」としつつも、通勤時間が長ければ長いほど、満員電車に乗る時間は長くなるし、早起きをしなければいけないため、影響を受けやすくなる可能性は高くなりそうだ。

念願のマイホーム…郊外に住むことの影響は?

また、浅賀さんは、「子どもが生まれた」「マイホーム購入」といった人生の大きなイベントにともなう郊外への転居もストレス要因だという。たしかに、郊外に住めば、当然通勤時間も長くなりやすいが…。

「郊外に住もうというのは、子どもの環境を考えて自然の多いところに引越したり、マイホームを購入したりする人は少なくありません。

とはいえ、『今の仕事を変えたくない』という理由から、『職場は変わらないけど住む場所だけが遠くなる』ケースは子どもにとってはよいかもしれませんが、働いている本人にすればやっぱりストレスになります」

いくら自分の子どもとはいえ、誰かのために自分を犠牲にすることはストレスに。

同じ郊外への転居であっても、たとえば、自分の趣味で広いスペースを使うから、その趣味を充実させるために広い郊外の物件への引越しとなれば、また感じ方は変わってくるという。
それは、“自分のため”だからだ。

「郊外に住んでいて通勤時間が何時間もかかる人で、ストレスを感じづらい人の例でいうと、趣味がバイクでツーリングの男性。

東京23区だと高速道路を抜けるまで時間がかかるとか、そこがストレスになることがあります。しかし、都心部とは離れたところに住んで一般道を少し走れば地方にも抜けられるとなれば、趣味がストレス解消になりやすいのです。

この場合、普段の通勤時間は人よりもかかるけど、むしろ週末のおでかけで気晴らしになる度合いが高いので満足しやすいということです」

「電車で30分から1時間」がひとつの目安

ここまで通勤時間とストレスには、やはり相関性がありそうだということがわかってきたが、ストレスになりにくい通勤時間はどれくらいなのだろうか?

「『1時間』というのがひとつの目安です。通勤時間が1時間を超えると、ちょっと遠いなと感じる人は増えてくるのではないでしょうか。そう考えると、電車で30分くらいがちょうどいいと思います。また乗り換えの回数も少ないほどいいですね」

ただし、通勤時間を短くしようと会社のすぐ近くに住めばいいというのは、これまた別の話。自宅と職場の距離が近すぎることで、プライベートとの境目が見えなくなったり、自分の生活圏内で会社の人たちと会ってしまったり…。

それはそれでストレスの要因になり得るのだ。

また長い通勤時間は、有効活用することでストレス軽減できるとか。

「通勤時間が1時間くらいで、乗り換えがあるという人だったら、なかなかまとまった時間がとれず、できることが限られてしまいますが、たとえば2時間くらいかけて通勤している人。これだけの時間があれば仮眠をとることもできますし、本を読む、勉強するなどもできるので、通勤時間を有効活用しやすいですよね」

今すぐ始められるストレス解消法とは

とはいえ、通勤時間を変えるということは、引越し、もしくは転職をともなうこともあり、そう簡単にできることではない。

そこで、住む場所を変えずともストレスを軽減できる方法を聞いた。

「ストレスの解消法として、『日常からちょっと離れる』というのがあります。言い換えれば、『普段とちょっと違うことをしてみる』ということです。普段は電車だけど今日は自転車でとかバスでとか、電車が好きな人なら路線を変えてみるというのも効果的です」

もっと言えば、普段はJRだけど今日は地下鉄にしよう、家を少し早く出てひと駅分歩こうといったことでも「非日常」を味わうことができるそうだ。

通勤時間が長いことがストレスとは限らないし、人によってさまざまな要因がある。おそらく、自分が通勤時間中の何が不満なのかは自分がよくわかっているはず。
今回の話を参考に、通勤中の過ごし方を変えてみれば、ストレスの感じ方も変わるのではないだろうか。

取材・文=明日陽樹/考務店
取材協力
浅賀桃子/ベリテワークス株式会社
https://veriteworks.co.jp/

特集「休まる一年を祈願2018年は仕事から離れる勇気」第2回