「トランプはTPPに復帰したいと“装って”いるだけ」

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「我々の愚鈍な最高指揮官(トランプ大統領)は、TPP(環太平洋連携協定)が中国を除いた通商圏を作るものだということに気づき、にわかに興味を示し始めたのだろう。大統領は中国を不安にさせるためにTPPを利用したいだけで、本気でTPPに関心を持っているとは思えない。事実、こうした愚かなハッタリ交渉術は彼の得意とするところだからだ。中国との貿易戦争が一段落つけば、彼のTPPへの関心は失われるに違いない」

米国のリベラルなウェブ・マガジン「マザー・ジョーンズ」に掲載された同誌のブロガー、ケビン・ドラム氏のコラムの一部。
その見出しは「トランプはTPPに復帰したいと装っているだけ」というものだった。

トランプ大統領が12日、突然TPPへの復帰検討を指示したことについて、反トランプの立場だが見事に言い当てていたことが今回の日米首脳会談で証明された。

会談後の記者会見でトランプ大統領は「TPPには戻りたくない。二国間の協議が望ましい」と前言をあっさりと翻したのだが、それではあの復帰検討の指示は何だったのだろうか。

中国はかつてない微笑で日本に接近

ドラム氏は中国に対するハッタリにTPPを利用したのだというが、米中の貿易摩擦は前回のこのコラムで取り上げたように両国のにらみ合いの末、中国側が「まばたき」して外資の規制緩和や自動車の関税引き下げなどの妥協策を発表したことでとりあえず沈静化した。

もはやトランプ大統領はTPPへの関心を失ったのかもしれない。
しかし、そのTPPをめぐるかけひきは思いがけないところに効果を及ぼしていた。

いま中国はかつて見せなかったような微笑で日本に接近してきている。
8年ぶりに閣僚級の「ハイレベル経済対話」が開かれ、中国側は今年国務委員に昇格した王毅外相が議長を務めるという力の入れようだったが、これは米中の貿易摩擦が激化する中で、日本が主導的立場にあるTPP陣営への接近をはかる意図からだと大方の識者が分析している。

またその対話の成果の一つに「自由貿易の重要性確認」がうたわれたが、これはトランプ大統領の「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」式貿易を否定するものに他ならない。
ここでも自由貿易の見本のようなTPPが、中国との関係で大きな役割を果たしている。

日本はTPPという“宝物”を上手く活用せよ

さらに、今回の日米首脳会談では日米間で「新たな協議の枠組み」を設けることで合意したが、米国側は2カ国間のFTA(自由貿易協定)を目指して様々に無理難題を押し付けてくることが予想できる。

これに対して日本は「私たちにはTPPがありますから」と反論すれば、一度は復帰検討を指示したトランプ大統領はむげには否定できないだろう。

つまり、TPPは日本にとって中国や米国との交渉で「レバリッジ(てこ)」の役割が期待できる存在なのだ。
北朝鮮問題で流動化する国際情勢の中で、TPPという宝物を上手に使うことが肝要だ。


(イラスト:さいとう ひさし)