マティス国防長官は米朝交渉“成果”を楽観視

「現時点では、思うに、米朝交渉が成果を挙げることになるであろうと楽観的になる理由が幾つもある。いずれ判る。」
“Right now, I think there's a lot of reasons for optimism that the negotiations will be fruitful and we'll see.”

23日にワシントン郊外のペンタゴンで開催されたタイの国防相歓迎式典でのマティス国防長官の言葉である。

「週末に金正恩委員長がミサイル実験を停止し地下核実験場を廃棄すると宣言しましたが、これは本物の進展と受け止めますか?それとも言葉だけの約束と受け止めますか?」という記者の質問に短く応えたものだ。

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次期国務長官に指名されたポンペオCIA長官が取り仕切る下交渉の詳細をマティス国防長官は知りうる立場にある。
我々には不明だが、マティス長官がこう発言するからには相応の理由があるはずで、現時点で、米朝交渉が良い方向に進んでいるのは間違いないと見てよさそうだ。

一方、トランプ大統領含め悲観的な見方も

しかし、トランプ大統領自身が「先は長い。」(We are long way from conclusion on North Korea.)と日曜日にツイートしたように非核化を巡る鍔迫り合いは続いていて、溝は深いというのが大方の見方である。

この交渉の先行きについて、アメリカ政府の関係者は「予想するのは難しい。変数が多すぎる。」と現状を評している。

別の事情通氏は「金正恩政権が譲歩する気があるのは、核とミサイル実験の無期限停止と拡散防止程度ではないか。」とかなり悲観的である。

北朝鮮ウォッチを専門にしているアメリカの研究機関“38度ノース”の分析に拠れば、北朝鮮が発表した核実験場の破棄はそれなりに意味があるという。
既に使い物にならなくなっているのは実験場の北側坑道だけで、西側と南側の坑道はまだ十分に使えるので、一部で報じられているように、単に無用の長物を廃棄するだけでは無いという。

とすれば、実験場を破棄するなら、北朝鮮の核弾頭の小型化の進展は、北朝鮮の意思で、外形上、ストップすることになる。

長距離の大陸間弾道ミサイルの実験を凍結するなら、弾頭の大気圏再突入技術の確立は、これまた外形上だが、困難になる。
アメリカ本土への直接的な脅威は、北朝鮮の意思によって、遠ざかるということになる。

“たら、れば”の話ばかりになるのをお許し願いたいが、もしも、これだけで手打ちを求められる状況に陥った時、トランプ大統領は窮地に追い込まれる可能性がある。

何事も性急に白黒つけたがるトランプ氏にとっては・・・

事情通氏は、その代償として「アメリカ側が何をどこまで譲歩するか予想がつかない。」とした上「交渉が思うように行かないことが判った時にトランプ大統領が痺れを切らして怒り始めるのではないか?」と危惧している。

トランプ大統領が、何事も性急に白黒をつけたがるのは既に周知の事実である。

安全保障問題担当のボルトン補佐官は、あのイラク戦争を今でも正しかったと主張する御仁である。
性急な武力行使に対するハードルがボルトン氏の場合はかなり低いと容易に想像できる。

議会証言に立ったポンペオ次期国務長官が明言したように、外交的手段が尽きた時の軍事的選択肢を作成するようマティス国防長官は既に指示されている。

アメリカの駐韓国大使に指名されていたヴィクター・チャ氏が指名撤回の憂き目にあった理由は、チャ氏が“鼻血作戦”とも呼ばれる限定的で懲罰的な武力行使に異を唱えたからだといわれている。

「変数が多すぎる」という現状は、米朝首脳会談が武力行使に道を開くような結果にならないという保証は無いという意味も含んでいるように思えてならない。

今は下交渉が進行中であり、まだ、首脳会談が実現するかどうかも定かで無い。

27日には南北の首脳会談も控えている。
“たら、れば”ばかり心配しても仕方ない。

救いがあるとすれば、武力行使に対してはアメリカ国内でも反対の声が強く、韓国も日本も中国もロシアも賛成しないはずであるという点である。
そして、誰よりも北朝鮮が最も避けたいだろうと考えられることである。

世界最強のアメリカの軍事力を背景にしたトランプ大統領の“恫喝外交”が実を結ぶことを、マティス国防長官ならずとも、誰もが願っている。

日本にとっての希望は、米朝交渉がどう転ぶにせよ、次に金正恩委員長が目を向けるのが日朝交渉になることである。
そして、その機会を拉致問題の解決に繋げることを政府はじっと狙っているはずである。