こどもにとっての「あそび」とは

この記事の画像(4枚)

GWを前にして、「子どもをどこかに連れて行くべきなのか」と悩んでいるお父さんたちは多いだろう。しかし、遠出することだけが子どものためになるとは限らない。例え身近な場所でも、あそび方次第では子どもを大きく成長させることになるのだ。さて、本題に入る前に、子どもにとって「あそび」とは一体何なのか、改めて考えたい。教育玩具の輸入販売と遊び場開発を行う日本企業、「ボーネルンド」が全国に21店舗展開する親子で遊べる室内遊び場「キドキド」で、「プレイリーダー」として日々こどもと触れ合う鈴木洋滋(すずきようじ)さんはこう話す。 「ボーネルンドでは“あそび”と“娯楽”を分けて考えています。非日常的な一過性の刺激を受動的な姿勢で楽しむ“娯楽”に対して、“あそび”は日常に存在し、能動的かつ継続して行うことで、子どもの成長に大きな影響を与えるのです」(鈴木さん)

また、東京大学の発達保育実践政策学センターで准教授を務める、野澤祥子(のざわさちこ)さんは、発達心理学の観点からこのように話す。

「そもそも子どもの年齢が低いほど、“あそび”と“生活”の区別がないんです。生活そのものがあそびであり、そのすべてが学びの機会。五感からさまざまの情報を得て物事を理解し、同時に他者との関係を育んでいきます」(野澤さん)

両者とも「あそびは特別なものではない」と話す一方、「そもそも子どもと何をしてあそべばいいのか分からない」と悩む父親が多いのは事実だ。Twitterのフォロワー数が40万人を超え、“日本一有名な男性保育士”といわれているてぃ先生は、そんな父親の気持ちを、保育士の観点からこう読み取る。

「世のお父さんたちは、『せっかく一緒に遊ぶなら、親として何かを学ばせたい』と難しく考えがちかもしれません。あそびはこども自身から生まれるものであり、大人にできることがあるとすれば、“0から1を生み出すこと”ではなく、“1を2や3に増やすこと”。つまり、あそびの可能性を広げてあげるということです。例えば、一つの事にとことん付き合って掘り下げるようなあそび方は、男性に向いているかもしれません。パパならではのあそびを、こどもたちは求めています」(てぃ先生)

近所をお散歩する時、「色」を探してみよう

「あそびは特別なものではない」。それを言葉で理解できても、日頃子どもと接する時間の少ない父親が、いざ子どもを前にすると戸惑ってしまうだろう。せっかくの連休、何か子どものためになることを、などと考えてしまうとなおさらだ。そこでまずは、身近な場所でできる「見る力」の育て方について聞いた。 「○○レンジャーゴッコなどの“ゴッコあそび”はいかがでしょうか。例えば、赤ちゃんにとっては、人の顔そのものがとても面白い存在です。顔を近づけ、いろいろな表情を見せてあげるだけで興味を示し、やがて1歳くらいから始まるゴッコあそびへと発展するのです。ゴッコあそびにより、こどもは様々な場面を再現しながら物事を理解し、更なる探求心を育んでいきます」(野澤さん)

まずは、「いろいろな表情を見せてあげる」。これは“自宅”でいますぐできそうなあそびだ。子どもの探究心を深めることにもつながるというから、早速始めたい。

また、てぃ先生は“お散歩中”にできることを教えてくれた。

「僕が保育園でよくやるのは“色を探すお散歩”です。『今日は青いものを探そう!』と、色のテーマを決めたらあとは歩くだけ。日頃意識しない場所に意外な色を見付けたりして、大人も結構楽しいんですよ。応用編として『緑色で丸いもの』『赤くて四角いもの』など、色に加えて形も取り入れると、子どもはさらに注意深く周囲を観察するようになります

他にも、怒っている人や泣いている人を身振り手振りで演じ、子どもに当てさせる『ジェスチャーあそび』や、絵が得意なパパなら、同じ絵を2枚描いて、一部の違いを当てさせる『間違え探し』も盛り上がると思います。これらは自宅でできますよね。また、スマートフォンを子どもに渡して写真を撮らせてみると、大人にはないユニークな視点を持っていることに気づけて面白いですよ」(てぃ先生)

鈴木さんが提案するのは、“公園”などでできる「ボールあそび」。ごく定番のものだが、実に重要な能力を養うことにつながるという。 「キャッチボールなどの『ボールを使ったあそび』は、目で見た情報をもとに相手との距離感やスピードを判断するため、『空間認識能力』を養うことができます。少し変わったキャッチボールとして、ボールを地面に転がし、それをお尻や肘で止めてみると、いつもと違った感覚で面白いですよ。これは普通のキャッチボールやサッカーに慣れ親しんだお父さんの方が難しく感じるかもしれません。そこもポイントです」(鈴木さん)

お父さんが子どもを「見る」ことで、子どもの意識が変化する

「見る力」の養い方ひとつとっても、実にさまざま。また、「見る」はお父さん側にとっても非常に大切なことだという。 子どもとのあそび方がわからないお父さんは、まず子どもの様子を観察することから始めてみてはいかがでしょうか。例えば、子どもが電車に興味を示していた場合、『パパが子どもの頃は○○っていう電車が走っていたんだよ』と、そこにお父さんならではの経験や想いを伝えてあげます。それに対し子どもは、『自分を理解してくれている。気持ちを共有している』と感じ、お父さんへの信頼が増すのです。相手と一緒に同じ物を見ることを発達心理学では『共同注意』といい、その物に対するお互いの気持ちや意味づけなどを共有する機会になります」(野澤さん)

子どもは自分の存在を認められたいという承認欲求が非常に強いため、あそんでいる様子をよく見て、小さな変化でも『さっきよりできるようになったね!』と褒めてあげるだけでとても喜びます。逆に、いい加減に見ているとすぐにバレてしまいます。ぜひ目の前にいるお子さんにしっかりと目を向けてあげてほしいです」(鈴木さん)

今年のGWは自宅や公園で子どもの「見る力」を育てつつ、同時に、自身が子どもを見ることについても意識を向けたい。子どもの小さな変化に気づけるようになれば、父親としての責任感や愛情も増すだろう。これは、親子ともに成長する良いきっかけになるかもしれない。

■プロフィール

左:てぃ先生
Twitterのフォロワー数が40万人を超える “日本一有名な男性保育士” 。本人の実話から生まれた、笑えて泣ける保育日誌を完全コミカライズした漫画『てぃ先生』(KADOKAWA)も発売中。

中央:鈴木洋滋(すずきようじ)
ボーネルンドあそびのせかい たまプラーザテラス店 副店長。親子の室内遊び場「キドキド」で「プレイリーダー」として日々子どもと触れ合っている。

右:野澤祥子(のざわさちこ)
東京大学教育学研究科 発達保育実践政策学センター准教授。

取材・文=下條信吾
イラスト=木下きこ