聴覚を鍛える「聞く」あそび

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第2回のテーマは「聞く力」の育て方。「聞く」というと、やはり音楽や楽器を連想するが、さまざまな楽器の音を聞くという経験は確かに子どもに良い影響を与えると、ボーネルンド「キドキド」のプレイリーダーである鈴木洋滋(すずきようじ)さんは話す。

『音あそび』が有効です。キドキドにも、遊具とともにお魚の骨に見立てた小さなサイズのマリンバ、『お魚シロフォン』を置いていますが、この楽器は小さいながら、専門家によって一つひとつ丁寧に調律されています。正確な音階を子どもに聴かせるというのは、音に対する感性を育むという意味で、とても大切です。また、いろいろな楽器を使うことで、同じ音程でも楽器が変わると音色や鳴り方が違うと実感することも、子どもにとって興味深い経験になると思います。

この他、外でできる音あそびとしては、公園や河原などで石や砂、水、木の欠片を拾い集めて、空のペットボトルに入れてマラカスを作るのもオススメです。自然と触れ合いながら、素材によって音の違いを感じられます」(鈴木さん)

これは、ギターやサックス、ピアノなど、楽器を演奏する父親にとっては“見せ場”としても楽しめそうだ。例えば、ピアノを弾いて聴かせるとしても難しく考えず、人差し指と中指で鍵盤の上を“散歩”するだけで、子どもは音程の変化を楽しく学べるだろう。

また、音あそびにはスマートフォンも活躍する

室内で音楽を流しながら『椅子取りゲーム』をするのも良いでしょう。スマートフォンで音楽を流して、お母さんにストップを押してもらい、お父さんと子どもで椅子を取り合います。椅子が無ければ、クッションを取り合ってもよいでしょう」(鈴木さん)

スマートフォンを使ったあそびは、まさに現代ならでは。保育士のてぃ先生もそれを活用した音あそびを提案してくれた。

スマートフォンで電車の音や動物の鳴き声を流して『これは何の音でしょうか?』と当てっこするのも、パパと子どもで楽しめるあそびとして良いと思います。その音が何なのかを覚えることが重要ではなく、『これは何の音だろう…』と考えること。それ自体が想像力を育むという意味で、とても大切なんです」(てぃ先生)

「無音」を楽しむあそび方

聴覚を鍛えるためには、新しい音や洗練された音を聞かせるのが大切、とは限らない。てぃ先生は保育士の観点から、意外なあそび方も提案してくれた。 「あえて“無音”を楽しんでみてはいかがでしょうか。日常生活の中では、テレビやラジオ、音楽など、いろいろな音が絶えず流れているかと思いますが、聴覚がもっとも研ぎ澄まされるのは、『無音状態』だと考えています。パパと子どもで耳を澄ませると、車の音や木が揺れる音、風の音など、2人にしか聞こえない小さな音をたくさん見つけられると思いますよ」(てぃ先生)

父親ならではの「読み聞かせ」

「絵本の読み聞かせは、言葉の発達を促すという効果とともに、コミュニケーションツールとしても良い」と、東京大学の発達保育実践政策学センターで准教授を務める野澤祥子(のざわさちこ)さんは発達心理学の観点から話す。 「読み聞かせをする際、大人は絵本一冊を最初から最後まで読もうとしがちです。しかし、子どもの年齢によっては、一冊読み終わるまでに集中力が切れてしまうこともあります。また、お話の内容よりも『これは何?これは何?』と、絵そのものに興味を示す子もいるはずです。そういった場合、その子が好きなページだけを読み聞かせるのが有効ですし、ページごとに絵を見ながら、文章を読まずに親子の会話を膨らませてもいいと思います。言語を習得するには人と対面で話すのが効果的といわれているので、読み聞かせをきっかけに、子どもとの会話を楽しんでみてください」(野澤さん)

音楽、環境音、そして言葉。「聞く」という五感を刺激するために必要な音は、さまざまな場所と場面に存在するようだ。中でも、てぃ先生が提案した“無音”を楽しむというあそび方は、非常に合理的で、すぐにでも実践できるのではないだろうか。

■プロフィール

左:てぃ先生
Twitterのフォロワー数が40万人を超える “日本一有名な男性保育士” 。本人の実話から生まれた、笑えて泣ける保育日誌を完全コミカライズした漫画『てぃ先生』(KADOKAWA)も発売中。

中央:鈴木洋滋(すずきようじ)
ボーネルンドあそびのせかい たまプラーザテラス店 副店長。親子の室内遊び場「キドキド」で「プレイリーダー」として日々子どもと触れ合っている。

右:野澤祥子(のざわさちこ)
東京大学教育学研究科 発達保育実践政策学センター准教授。

取材・文=下條信吾
イラスト=木下きこ