父親ならではの「触れる」あそび

第3回で学ぶのは、子どもの「触れる」の育て方だ。さまざまなものを「触る」ことは、子どもにとって貴重な体験となる。また、お父さんと子どもが文字通り「触れ合う」ことで、日頃不足しがちなスキンシップを補うことにもつながるといえるだろう。東京大学の発達保育実践政策学センターで准教授を務める野澤祥子(のざわさちこ)さんは、父親ならではの、子どもとの触れ合い方があると話す。

「一般的に男性は女性よりも筋力があるので、子どもとダイナミックに体で関わることができます。また、日頃仕事を通して社会と関わっているお父さんは、子どもに外の世界を見せてあげたり、その世界を広げてあげたりすることもできるんです。少し難しそうな遊具でも『やってみない?』と背中を押してあげるなど、お父さんだからこそできる遊びを提案してほしいですね」(野澤さん)

公園にある難しそうな遊具に一緒にチャレンジする。それだけで子どもの世界は広がるうえ、父子の関係性を育むことができるのだ。

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続いて、ボーネルンド「キドキド」のプレイリーダーである鈴木洋滋(すずきようじ)さんに話を聞いたところ、野澤さんも語った「父親ならではのダイナミックなあそび」の具体的なアイデアを話してくれた。

父親の足の甲の上に子どもを乗せて、手を繋いで一緒に歩く『ペンギンレース』というあそびが子どもに大人気なんです! 二人三脚のように『1、2、1、2』と息を合わせて歩くと、親子の一体感も生まれます。大人も意外と疲れるので、体力に自信のあるお父さんにオススメです。他には、子どもと手を繋いでグルグルと遠心力で回す『メリーゴーランド』もいいですね。子どもの手をしっかり握るのはもちろん、周りの安全をしっかり確認して、広い場所であそんでください」(鈴木さん) 子どもとのスキンシップがうまくいかず、悩んでしまう父親は多い。だが、前述のように、父親にしかできない役割、そしてあそび方があるようだ。続いて、保育士のてぃ先生は、ゲーム形式で楽しめる「触れる」あそびを提案してくれた。 「子どもに目をつむらせて、手のひらに石や木、葉っぱなどを置き『これはなんでしょうか?』と当てさせるというあそびは園児も大好きです。素材によってさまざまな温度や感触があるので、その違いを感じさせてあげるのは、子どもにとって貴重な経験になると思います。乾いたサラサラの砂、水を加えたネチョネチョの砂、芝生の意外とチクチクする不思議な感触、想像以上にしなる木の枝など、いろいろなものに触れさせてあげてください」(てぃ先生)

中には、あまり外のものに触ろうとしない子どももいるだろう。そんな時、お父さんが率先して「触ること」を導いてあげることで、子どもは知らない世界とつながることができる。お父さんの役割は、子どもの背中を押してあげること。子どもの触覚を育てるうえで、特にそれが有効となるようだ。

たくさん「失敗」させてあげる

現代の子どもたちは過剰に失敗をおそれてしまい、なかなか新しいあそびにチャレンジできないと言われている。そんな子どもたちとの接し方に対し、てぃ先生はこのように話してくれた。 「子どもに対して『失敗してもいいんだよ』と優しく伝えているパパやママはとても多いですが、子どもが失敗をしてしまった後に声をかけているケースが大半。けれど、子どもの立場からすると、今更声をかけられても遅い…と慰めにしか聞こえないわけです。ぜひ子どもが何かに挑戦する前に『失敗してもいいよ!』と声をかけてあげましょう。その言葉が強い安心感を与え、自発的な行動を後押しします」(てぃ先生)

また、失敗の仕方もお手本で示してあげるのが良いそうだ。

「子どもに新しいあそびを提案するとき、最初から上手なお手本を見せてしまうと、『ぼくはパパみたいに凄いことはできない』と自信をなくしてしまうことがあります。それを考慮し、ぼくはあえてヘタクソなお手本を見せてから、子どもと一緒にあそぶことが多いです。パパの凄い一面を見せたい気持ちはわかりますが、一緒に考え、一緒に失敗しながら、子どもとの関わりを楽しんでほしいです」(てぃ先生)

「ダメ」とは言わないあそびの制し方

あそびの中で、時にはその行動がエスカレートして危険を伴うこともある。そんなとき、どこからあそびを制するべきか。また、どう制したらいいか、対応に悩む親は多い。 「親として、子どもの危険を取り除こうと思うのは自然な発想だと思いますが、『痛みを経験させてあげる』というのも親の役目です。子どもは傷みや不快な経験を通して、注意する心を養います。もっと言えば、痛みを知らないことよりも、恐怖心を知らないことが問題なんです」(鈴木さん)

さらに、鈴木さんは「ダメ」という言葉を使わないことの重要性について話してくれた。

「どのような状況でも、『ダメ』という言葉は子どもを否定することになるので、ボーネルンドのプレイリーダーは使いません。子どもが周囲の環境を考慮したうえで危険を伴うあそびをしている場合は、あそびの“種類”を変えるよう促します。例えば、狭い場所で走り回っている子どもを制したい場合、上に高くジャンプするようなあそびを提案します。すると、動きが並行から垂直に変わっただけなので、『あそびを妨げられた』というストレスを子どもに与えなくて済むのです」(鈴木さん)

「触れる」というあそびにおいて、ダイナミックなスキンシップが楽しめるという意味で、よりお父さんの存在が重要となる。また、失敗や痛みを体験する機会が増え、子どもへの接し方も問われるため、「触れる」というあそびには、父と子がともに成長できるきっかけが数多く含まれていると言えそうだ。

■プロフィール

左:てぃ先生
Twitterのフォロワー数が40万人を超える “日本一有名な男性保育士” 。本人の実話から生まれた、笑えて泣ける保育日誌を完全コミカライズした漫画『てぃ先生』(KADOKAWA)も発売中。

中央:鈴木洋滋(すずきようじ)
ボーネルンドあそびのせかい たまプラーザテラス店 副店長。親子の室内遊び場「キドキド」で「プレイリーダー」として日々子どもと触れ合っている。

右:野澤祥子(のざわさちこ)
東京大学教育学研究科 発達保育実践政策学センター准教授。

取材・文=下條信吾
イラスト=木下きこ