昨年から、ソフトバンクやDeNAなど大手企業でも解禁され、広がりつつある副業。

自分の趣味や特技などを活かし、副業として確立できたら楽しい。しかし、「果たして収入は得られるのか?」「時間をどうやりくりしているのか?」といった不安や疑問が残る。

そこで、今回は、「キャラクターフィギュア制作」の趣味を活かした副業を持つ人に、その実情を取材した。

週6日の“トリプルワーク”

福岡県に住む田中博幸さん(48)は、パート社員として、物流と子どもの福祉関連の2つの職場で勤務している。

ダブルワークをしながら副業に取り組む田中さんの1週間は、なかなか忙しい。
9時~13時までの物流の仕事を終えると、14時~18時には福祉の仕事をこなす。帰宅後は、21時からフィギュア制作に取り掛かり、1日の作業時間は3時間ほどだ。

「本業2つ+副業」のトリプルワークの生活は、月~土曜日の6日間。
日曜日も予定がなければ5時間ほど副業に充てている。さらに、福祉の仕事に役立つ心理学の勉強にも取り組み、カウンセラーとして活躍することも目指しているというから、そのバイタリティには脱帽だ。

技術は「独学」スタート

「好きなことを仕事にして収入を得たかった」という田中さん。副業の平均月収は、3万円ほど。
月によってバラつきがあり、現在もステップアップのため奮闘中だというが、趣味のフィギュア制作が副業になるまでの経緯を聞いた。

ーーなぜフィギュア作りを副業に選んだ?

中学生のころに、一度フィギュアを作ったことがありました。それを2年ほど前に思い出し、「もう一度やってみよう!」と思ったのがきっかけです。
これがまた、楽しかったんです。夢中で作っていました。アニメの美少女を作るって言ったら、引かれそうなので、家族には内緒で(笑)

そうして作ったフィギュアの複製品が、初参加した販売イベントで売れて、「これを仕事にできたらいいな」と思いました。

綿棒で頬をピンクに塗装。まつ毛は立体感を出すため「付けまつげ」を使用。

ーー技術はどうやって学んだ?

フィギュア作りの関連書籍やDVDを片っ端から買い集めて勉強しました。ネットの情報なども読み込み、実際に手を動かして、試行錯誤しながら作れるようになりました。
綺麗なラインやリアリティを出すために、マンガ・イラスト・ポーズ写真集も勉強しました。骨格モデルやアナトミーフィギュアも参考にしています。

学校へ通ったり、直に先生についてもらって指導を受けたりしたことはありません。「中学生の時に作れたんだから、作れるだろう」と思って。
一通り作れるようになってからは、表現力の向上を目指して、添削付の動画通信講座を受講しました。

アナトミーフィギュア(右)は、左半分が皮膚、右半分が筋肉の解剖フィギュア

「好きなキャラが目の前に存在するのはうれしい」

これまでに完成させたフィギュアは、全部で7体。
自信作は、1983年に放映されたロボットアニメ『聖戦士ダンバイン』に登場するヒロイン「チャム・ファウ」の第2作目(改良版)だ。

「チャム・ファウVer.2」 完成した第1作目には納得できない部分が多く、作り直すことに。

ーーフィギュア制作の魅力は?

作る過程で一番楽しいのは、最初の形ができる段階です。顔ができて、体できて、だいたいの形になるまでが楽しいです。

完成後は、棚に並べています。市販品には存在しない、自分の好きなキャラが立体で目の前に存在するって、嬉しいものですよ。ほんわかした気分にもなります。超自己満足です(笑)

ーー作品づくりへのこだわりは?

形ができてからから完成までがちょっと大変で、ひたすら表面仕上げをする単純作業。しかも、傷がなかなか取れなくて時間がかります。モチベーションが下がらない内に作業が進むような素材・工具の探求を今でも続けています。
それから、人体に有害な物、特に有機溶剤系のものは極力使わないようにしています。

作るのが難しいのは、手・スカート・髪の毛です。
手は感情も表現するので、デッサン力や表現力、造形力が必要とされ、なかなか思ったようには作れません。スカートと髪も、空気感や躍動感を出すのがとても難しいです。かわいさと美しいボディラインを出せるように努力を重ねています。

複製品を「組み立てキット」として販売

フィギュア完成までの道のりは長い。
1体のフィギュアを作るのに、時間にして約2~3カ月、費用は、複製作製用のシリコンが高価なため、材料費だけで3000円~1万円程かかるという。

設計図→顔づくり→骨格づくり→ポーズ付け→肉付け→服を着せるため、体をパーツに分割→服・髪の毛づくり→ヤスリ掛け→コーティング

このように、細部までこだわって制作したオリジナルのフィギュアから型を取り、その複製品を「ガレージキット」と呼ばれる組み立てキットとしてパッケージングし、イベントで販売している。

つまり、田中さん自身が「ごく少量のプラモデルを製造・販売するメーカー」のようなものなのだ。

原型となるオリジナル(左)と複製品(右)。シリコンゴムで型を取り、樹脂を流し込み固めたものを「ガレージキット」として販売している。

他にも、フィギュア制作で身に着けた技術を活かして作った一般市販のプラモデルをネットオークションで販売したり、福岡市内のワークスペースを借りて、作り方指南のワークショップを不定期で開催したりと、活動の幅は広い。

「今後は通信制制作講座を開設したい」

3つの仕事を持つ田中さん。「たくさんの人と繋がりを持てたことがうれしい」という一方で、副業は体力的にも大変な面もあるという。

「職場のストレスも制作ペースに影響するので、なかなか思うように進まなくなるのが苦労する点です」

時には、「何もせずぼーっとする」ことでリフレッシュをしながら、現在制作中の新作フィギュアを8月に開催されるイベントに出品する予定だ。
今後は、製作工程を公開している自身のYouTubeチャンネルで、「フィギュア制作のポイントや小技を解説する通信制制作講座を開設したい」と意気込んでいる。

画像提供:田中博幸さん
(※ アニメキャラクターのフィギュアやガレージキットは、すべて版権元の許可を得て制作・販売しています)