「必ず帰ってきますから」話題のメッセージ

ふりかけやお好み焼きなど、日本の食卓には欠かせない“青のり”

そんな青のりのパッケージに書かれたメッセージが心を打つと今、Twitterで話題になっている。

まずはそのメッセージを見てもらいたい。

(提供:三島食品株式会社)
(提供:三島食品株式会社)
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三島食品が品質に自信をもってお届けしてきたすじ青のりを伝統の青いパッケージで作る事ができなくなりました。国内産地での記録的な不漁が続いた為です。

陸上養殖をふくめ原料確保につとめていますがしばらく時間がかかりそうです。
その間、今できる精一杯の青のりを準備しました。

でも待っていてください。必ず帰ってきますから。

「必ず帰ってくる」という熱いメッセージの横には、青色のパッケージの「青のり」という商品の写真が載っている。

メッセージを記載しているのは、「ゆかり」のふりかけで有名な三島食品株式会社が製造・販売する新商品「あおのり」。

ひらがなで「あおのり」と書かれている緑色のパッケージで、焼きそばやお好み焼きなど各種料理の薬味やふりかけとして使える、国産の青のりだ。

実は発売したばかりの「あおのり」は、6月末で休売した「青のり」の代替え商品として誕生した。

左:休売中の「青のり」 右:代替え商品「あおのり」(提供:三島食品株式会社)
左:休売中の「青のり」 右:代替え商品「あおのり」(提供:三島食品株式会社)

休売した「青のり」では、特に香りが強く、色が鮮やかな緑色になることから高級品とされるスジアオノリを使用していたが、新商品「あおのり」ではウスバアオノリやヒラアオノリを原料として使用しているという。

なお、スジアオノリは主に調理用として使われ、収穫量の減少と共に高級な肉と引けを取らない価格で取引されているそう。ウスバアオノリやヒラアオノリはポテトチップスなどの菓子に使用されることが多いという。

(提供:三島食品株式会社)
(提供:三島食品株式会社)

この三島食品の熱いメッセージは、Twitterでも話題に。

同社の「青のり」を愛用しているというサガノちゃん!(@saga_no)さんが、メッセージ部分と2つの商品写真と共に「裏面に切なくも愛しいメッセージ書かれてたよ…読んでほしい…」などとTwitterに投稿したところ、「会社の矜持が感じられて素晴らしい」「誠意とプライドを感じます」といったコメントが並び、3万以上のいいねの反響があったのだ。

(サガノちゃん!さんが投稿した写真)
(サガノちゃん!さんが投稿した写真)

不漁により原料確保ができていないと書かれたメッセージ。そこで休売するのは分かるが、なぜ新商品として新たな「あおのり」を発売したのか?

そして「でも待っていてください。必ず帰ってきますから」に込められた思いとは? 三島食品株式会社・広報担当の佐伯俊彦さんに話を聞いた。

「日本古来の青のり食文化を絶やしたくない」

ーーなぜ、新商品として「あおのり」発売をすることになった?

原料であるスジアオノリの収穫がここ数年で激減しているため、商品販売を継続することが困難になりました。

そこで、まだ安定供給できるウスバアオノリとヒラアオノリを原料とした代替え商品で、一時的に消費者がお困りになられないように商品化しました。

企業が思っているほど、消費者の皆様は事細かく商品に関する認知をされないでご使用になられている場合もあります。スジアオノリからウスバアオノリとヒラアオノリに原料を変えたことで、「いままでと違う!」などの苦情が発生しないようにする目的でパッケージの色を変えました。

さらに、商品名をひらがなにしたのもお客様相談室へお問い合わせいただけた際に、商品確認しやすくする目的で変更しました。

あおのり 素材の比較 (提供:三島食品株式会社)
あおのり 素材の比較 (提供:三島食品株式会社)

ーーどうして裏面にメッセージを載せた?

代替え商品とは異なることの消費者認知を深めていただけるきっかけにしたい事。

青のりではリーディングカンパニーである責任として、日本古来の青のり食文化を絶やしたくない思いにつきます。公言することで社内における活力の一助にもなっていると思います。

「あおのり」(提供:三島食品株式会社)
「あおのり」(提供:三島食品株式会社)

ーー反響を教えて

「青のりファンとしては死活問題でもあります。でも、必ず復活されることを心よりお待ちしております!『青のり』なくさないでください!」「いつも美味しく食卓で愛用しています。パッケージ変わっても買い続けます、頑張って下さい」

といった、代替え商品が小売店に並び始めて、応援していただけるメッセージがお客様相談室へメールで頂けるようになってきました。


ーーその反響に対してはどう思う?

必要としていただける喜びと、われわれのメッセージがお客様に届いている実感と喜びになり、益々がんばって行きたいと思っております。

左:スジアオノリ 右:ウスバアオノリとヒラアオノリ(提供:三島食品株式会社)
左:スジアオノリ 右:ウスバアオノリとヒラアオノリ(提供:三島食品株式会社)

減少対策として自社で陸上養殖

三島食品によると、2016年からスジアオノリの収穫量が激減。

収穫回数を増やすなどして2017年には一時的に回復したものの、翌年から再度減少し、2019年度には2015年度の10分の1にまでなった。平均落札価格は、2015年度と比べて約5.5倍に上昇している。

収穫量と平均落札価格の推移グラフ(提供:三島食品株式会社)
収穫量と平均落札価格の推移グラフ(提供:三島食品株式会社)

ーースジアオノリの収穫量減少の理由は何?

正確な要因は公の機関からも出されていませんが、

・地球温暖化による海水温が下がらないこと。
・川がきれいになり過ぎて栄養が不足していること。

などが言われています。水害があるといけないので川の護岸工事をしますが、それで山の栄養分が川に流れにくくなるのではないかと言われています。


ーー収穫量減少に対して行っていることを教えて

スジアオノリを自らの手で養殖しています。

2015年から高知県室戸市で陸上養殖に取り組み、養殖ノウハウを培ってきました。また、今年6月の竣工で広島県福山市走島にも陸上養殖施設を完成させて養殖を開始しています。

陸上養殖することで水温調整などができ、安全・安心・安定供給を目指しています。

(提供:三島食品株式会社)
(提供:三島食品株式会社)

青のり業界をけん引する企業として「日本古来の食文化が途絶えることだけは避けたいです」と、今後の業界全体への責任を三島食品から感じる。

裏面に記載されたメッセージには、商品へかける三島食品の誇りと共に、スジアオノリの収穫量減少というあおのり界への危機を伝えていた。

なお、青いパッケージの「青のり」(容量2.2グラム)に対して、「あおのり」は0.1グラム増量の2.3グラムとしつつ、価格は同じ226円(税抜き)。「青のり」の再販売に関しては、「1年~1年半を目標に再販を目指しています」とのことだ。

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プライムオンライン編集部
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