大谷選手 五輪出場の可能性は?

“二刀流”で日米を沸かせている大谷翔平選手。
そんな彼にはぜひ2年後の東京五輪で、侍ジャパンの一員として日の丸を背負って欲しいというのが日本国民の願いだろう。

しかしこれまでメジャーリーグベースボール(MLB)のトップ選手たちは五輪に出場していない。五輪の開催期間はMLBシーズンの大事な時期と重なるだけに、球団は主力選手を五輪に出さないのではないかと言うのが大方の見方なのだ。

実は今、大会組織委員会と野球・ソフトボールの世界連盟の間で“ある対立”が繰り広げられている。
その結果次第ではメジャートップ選手たちの五輪出場が実現するかもしれない。
両者の水面下の動きを探った。

「総当たり戦」か「2グループ制」か

5月2日、スイス・ローザンヌで開かれていた国際オリンピック委員会(IOC)の理事会でサッカーの競技会場が承認され、全43会場が正式に決まった。その裏で組織委はあることを警戒していた。

「世界連盟会長 東京五輪野球で総当たりをIOCに直訴へ」
一部でそんな報道が出ていたからだ。

実は、6チームで争う1次リーグの試合方式をめぐって、組織委と世界野球ソフトボール連盟(WBSC)は長い間対立しているのだ。

WBSC…総当たり戦で15試合
組織委…3チームずつの2グループ制で6試合

総当たり戦で1試合でも多く試合をしたいWBSCと、6試合に抑えたい組織委。
組織委は「2グループ制」ですでにIOCと合意したとしたという。
組織委もIOCも足並みが揃っていれば「2グループ制」で決まりのようにも思えるのだが、そこには一筋縄ではいかない難しさがある。

「各IF(国際競技連盟)は自身の競技の運営において主体性と自立性を堅持する」
「自身の競技実施に関する規則を定め、強化し、確実に適用する」
ー「五輪憲章第3章国際競技連盟」よりー

つまり野球の国際競技連盟であるWBSCは野球の実施方式などを決める権限を持つというだ。
「2020年東京を最高の大会にするためにも、譲るつもりはない」(2017年9月・共同通信)。
WBSCのリカルド・フラッカリ会長の強気も、この五輪憲章の規定によるのかもしれない。
WBSCは1次リーグの日程を3~4日増やして開会式前に試合を開始することをIOCに提案するなど強気な姿勢を崩していない。

もともとは「総当たり戦」だった

もともと五輪の野球は8チームの総当たり戦で1次リーグを行い、上位4チームが決勝トーナメントに進んでいた。
五輪復帰を果たす東京大会では参加チームは6チームに減るものの、WBSCとしては総当たり戦で試合数を少しでも増やしたいところだ。
ファンにとっても観戦できる試合数が増えることは喜ばしい。

突きつけられた10億ドルの削減

「IOCとしては夏季大会で10億ドル(約1100億円)、冬季大会で5億ドル(約550億円)を節約したい」(2017年10月・IOCコーツ調整委員長)

招致段階で約8000億円だった大会経費は、約2倍の1兆3500億円にまで膨らんでいる。
大会経費の巨額化が進み、開催に名乗りを上げる都市が減少していることに危機感を抱いたIOCが経費の削減を求めた形だ。

組織委が野球の試合数を抑えたい理由もやはり「経費」問題だ。
組織委の試算では総当たり戦にすると、輸送費などの経費がかなり膨らむと言われている。
また総当たり戦にしても日本やアメリカなど人気チーム以外のチケットがどれだけ売れるかなど組織委の不安は尽きない。

メジャーリーガーの参加は五輪復帰への“約束”

室伏広治スポーツ局長
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「ベストの選手に来てもらうことが約束だった」(2017年8月 組織委 室伏スポーツ局長)

 野球はロンドン大会、リオデジャネイロ大会と2大会連続で実施競技から外されたが、その背景の一つがメジャーリーグのトップ選手の不参加問題だった。組織委は野球を五輪に復活させる選定段階での約束だったとしてトップ選手の参加を実現するよう、2017年8月、書面でWBSCに要請している。
メジャーリーガーが参加するか否かは野球の盛り上がりを左右するだけに、組織委としては「約束は守って」というスタンスだ。

そもそもWBSCは五輪復帰を目指して、それまでの国際野球連盟(IBAF)と国際ソフトボール連盟(ISF)を統合した団体で、復帰活動の中で準決勝以降にメジャーリーガーを参加させる案などをIOCに示していたとされている。

「メジャーリーガーの参加が交渉カードに」

5月のIOC理事会では結局、WBSCが「総当たり戦」をIOCに直訴することはなかった。
しかし7月に開かれる次回の理事会までには1次リーグの方式を含めてWBSCと合意することが必要で、それまでに両者間で何らかの動きがあると見られている。組織委のある幹部は「WBSCがメジャーリーガーの参加を交渉のカードとして出してくる可能性がある」と話している。

「総当たり戦」を受け入れてメジャートップ選手の参加を確約させるのか、それとも「2リーグ制」を押し通した上でメジャーリーガーの参加も求めるのか…。

念願かなって12年ぶりに五輪に復活する野球。
そのフィールドに大谷翔平選手をはじめメジャーのトップ選手たちの姿はあるのか。
組織委の交渉は正念場を迎える。

(執筆:フジテレビ 経済部 オリンピック・パラリンピック担当 一之瀬 登)