東京都では新型コロナウイルス感染者数が続え続け、警戒レベルが最も深刻なレベル4に引き上げられた。こうした現状を受け、政府は22日から施行予定だったGo To トラベルキャンペーンの内容を一部変更し、東京発着の旅行を観光支援事業の対象から外すことを発表した。この決断はどう評価できるのか。
今回の放送では、空気感染の現実性とリスクも含め、政治と外交、感染防御、医療ジャーナリズムそれぞれの専門家を迎え議論した。

”東京除外”は感染者の想定外の増加

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反町理キャスター:
ここ数日、東京では感染者数の数字が悪化。小池都知事もGo To トラベルのスタートを批判していた。東京除外という政府判断について。

佐藤正久 前外務副大臣:
東京都知事が慎重な意見を言い、地方の知事にも様々な意見がある中、最終的に政治判断がなされた。ここで東京が地方からどう見られているかを考えなければ。
つまり、東京は感染地域と思われている。知り合いの65歳の方も地元の岩手から、私も地元の福島から帰ってくるなと言われる。Go To キャンペーンでは、マイクロツーリズムと言われるように、県内で観光を回そうと考えている地方も。

反町理キャスター:
Go Toキャンペーンについて政府の発表。赤羽大臣は「Go Toトラベル事業では、現下の感染状況に鑑み、東京都を目的とする旅行や東京都に居住する方の旅行を対象から外す」。

佐藤正久 前外務副大臣:
元々は7月下旬から8月にかけて始める予定で、前倒しの形で今回の連休に間に合わせた。しかし、急に東京都で感染者が増えることは想定外だった。これはあくまで予算措置の運用の話で、県ではなく政府の責任で行うものであり、国が責任をもって国民に説明しなければいけない。

感染状況次第では別の地域の取りやめも

反町理キャスター:
純粋に医学的に見た場合、Go Toキャンペーンはどう見えるか。

加來浩器 防衛医科大学校  防衛医科学研究センター教授:
目的が観光などの人の移動を伴うことなので、病原体を持っている方が移動することで時間的・空間的に感染が広がるように見える。しかし実際は、エチケットや手洗い、3密を避けるなどの基本的な対策をしっかり行うかどうかによる。旅行を楽しむ中で気持ちが緩んで無頓着になり、感染症のことを忘れるようになってはいけない。

医療ジャーナリスト 鳥集徹氏
医療ジャーナリスト 鳥集徹氏

医療ジャーナリスト 鳥集徹氏:
まず1点、誰が東京都と決めたのか。安倍総理は政治判断のように言うが、「分科会に聞いてみる」など専門家への丸投げ発言に聞こえる。はっきり説明していただきたい。もう1点は東京都という括りが適切なのか。東京都の中でも、新宿やその周辺では確かに感染が増えている気がするが、同じ東京でも八王子や多摩などは23区内とリスクが全く異なる。

佐藤正久 前外務副大臣:
最終的には政治の責任です。今回、開始は22日と説明しているが、感染状況を見て場合によっては別の地域を取りやめる可能性もある。命を守ることと経済を回すこと、両方を成立させる知恵として今回東京を外した。ただこれが最終ではなく、まだ変わる可能性がある。それが事業というものだと私は思う。

”東京除外”は一種の柔らかい警告

佐藤正久 前外務副大臣
佐藤正久 前外務副大臣

反町理キャスター:
加來さん、感染抑止効果をどう思われますか。

加來浩器 防衛医科大学校 教授:
東京については移動禁止などではなく、助成がされないということ。これは、やわらかい警告を発したということでいいと思います。「コロナ以前の時代と同じように、無防備に大手を振って観光を楽しめる状況ではありませんよ」と私には聞こえます。

反町理キャスター:
Go To キャンペーンが、感染拡大により最初の1週間で総崩れとなる可能性もあるのでは。

佐藤正久 前外務副大臣:
私も心配。Go To キャンペーンで感染が広がるリスクはある。ウイルス学の観点からすれば、人が動けば広がるに決まっている。だから地方からの視点が大事。岩手県など感染者でゼロすから、間違いなく警戒すると思います。県内で回したい気持ちがあるだろうし、青森県知事は「国は邪魔するな」と言いましたから。

新規感染者の数だけではなく、全体像を類推する必要

長野美郷キャスター:
7月16日までの東京都の新規感染者数と内訳です。東京都は警戒レベルを最高の「感染が拡大していると思われる」に引き上げました。

加來浩器 防衛医科大学校 教授:
疫学の専門家としてグラフを見ると、フェーズごとに検査体制や方法、対象が違う点に留意して判断することが必要。

反町理キャスター:
数だけを見るのではなく?

加來浩器 防衛医科大学校 教授:
本当に発病した数だけを見て、氷山の一角から全体像を類推する形の統計が必要。

加來浩器 防衛医科大学校 防衛医科学研究センター教授
加來浩器 防衛医科大学校 防衛医科学研究センター教授

反町理キャスター:
新規感染者数が増えているから心配、という話ではなくて。中等症以上のケースが微増しているのであればそれが裾野であり、ここから全体の山の高さがが見えてくると。

加來浩器 防衛医科大学校教授:
そうです、類推しながら全体像を追いかける形で対策を進める。隔離に利用できるホテルも再度掘り起し、ホテルが足りなければ自宅療養に。自宅療養においてもコンビニなどに出かけたり、なかには規則を守らずに外に出たり旅行にということも考えられる。危機感を持ってしっかりとした対策を。

エアロゾル感染は空気感染と違う

長野美郷キャスター:
WHOは「空気感染について排除できない」との見解を示した。WHOは当初空気感染を否定していましたが、ここにきて見解を反転したということでしょうか。

佐藤正久 前外務副大臣:
反転ではなく、今まで曖昧にしていた点をはっきりさせた。飛沫や接触感染では説明できない事例、エアロゾル感染などについて、日本も「3密を避けよう」といった対処方針を言及していた。ただ、空気感染とエアロゾルは違う。例えば私がくしゃみをすると、飛沫は下に落ちる。ただマイクロ飛沫のようなものが漂い、ある条件がそろえば移る。

加來浩器 防衛医科大学校 教授:
空気感染の病原体はずっと漂う。結核、はしか、水ぼうそうといったウイルスは飛沫核のみで漂うことができる。飛沫核は乾燥や紫外線などで失活するのが普通だが、これは24時間も48時間も漂う。一方、エアロゾルは3-4時間で失活する。ただ、これらは従来のような手洗いなどの衛生対策で対処できる

BSフジLIVE「プライムニュース」7月16日放送