電撃不信任案でギャンブル依存症対策法案の審議入り阻止

今、国会では「内閣委員会」における法案審議の行方に注目があつまっている。

5月18日の衆議院内閣委員会。
与党側は、TPP=環太平洋経済連携協定の関連法案を採決し、その後、ギャンブル依存症対策法案の審議に入る予定だった。
しかし野党側は、TPPを担当する茂木経済再生相の不信任案を電撃的に提出して審議を止め、TPP関連法案の採決とギャンブル依存症対策法案の審議入りに待ったをかけた。
狙いは、ギャンブル依存症対策法案の審議を遅らせることで、その先にある、カジノを含む統合型リゾート=IR実施法案の成立を阻止するためだという。
“カジノ法案”ともいわれる「IR実施法案」の成立は、働き方改革関連法案とともに、今国会での安倍政権の最重要課題であり、一方の野党にとってはこれらの法案の成立を阻止したいところである。

 

5月18日 不信任案を提出された茂木経済再生相
5月18日 不信任案を提出された茂木経済再生相
この記事の画像(4枚)

ギャンブル依存症対策を”やる気満々”だった枝野代表

この発言に注目したい。

「やるべきことは、ギャンブル依存症を防止し、依存症からの脱却を支援することです。私たちは「ギャンブル依存症対策基本法案」を準備しています」

ギャンブル依存症対策の必要性を訴えるこの発言の主は誰か。
現在の「ギャンブル依存症対策法案」を提出した、自民・公明・維新の各党からの発言ではない。ギャンブル依存症法案の審議入りにストップをかけた立憲民主党の枝野代表が去年11月20日に安倍首相に対して発したものだ。

立憲民主党・枝野代表
立憲民主党・枝野代表

法案の協議に応じなかった立憲民主

自民・公明の与党は、ギャンブル依存症対策法案を今の国会に提出するにあたって、各党に協議を呼びかけた。

その結果、日本維新の会と修正で合意し共同提案になった。
また、現在の国民民主党に所属している議員からも前向きな発言が相次いでいた。

しかし、立憲民主党などの一部野党は、協議の場にすら現れることはなかった。
立憲民主党は去年12月6日に野党共同で「ギャンブル依存症対策基本法案」を提出していたにも関わらず…。

その理由は、前述のとおり、カジノを含む統合型リゾート=IR実施法案の成立を阻止するため。
立憲側としては「与党は、ギャンブル依存症対策法案をカジノ解禁の前提にしているのだから、この法案を通すわけにはいかず、成立に協力するにはカジノ法案をやめることが大前提だ」という主張だ。

しかし、これまでにギャンブル依存症の疑いがあった人は、人口の3.6%、約320万人にのぼるとされる。対策は待ったなしの状態でもある。

世論の中でも抵抗の強いカジノ導入に反対なのは十分理解できるにしても、そのために、既存のパチンコや公営ギャンブルの依存症対策を巻き込むのは、国民の理解が得られるだろうか。

ギャンブル依存症団体からは悲痛な叫びも

「先生方の政権奪取、与党憎し!の思惑のために、我々の悲願である「ギャンブル等依存症対策基本法」を潰さないで下さい」
「日程闘争に明け暮れる現状には心底うんざりです。どうか立憲・共産の先生方は「ギャンブル等依存症対策基本法」の速やかな成立に、お力を貸して下さい」

公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」の田中紀子代表は、自身のブログの中でこう切実な声を挙げて、立憲民主党や共産党に対して依存症法案成立に向けた協力を呼び掛けている。ちなみに、この団体のIR実施法案に対するスタンスは賛成でも反対でもない。

 立憲民主党のホームページには、「現場の切実な声に根ざした政治を実現」との枝野代表のコメントが書かれているが、こうした悲痛な声をどう受け止めるのだろうか。


IR法案と依存症対策法案は分離して対応すべきでは

自民党側は以前から「ギャンブル依存症対策の法案が成立すれば次はIR実施法となることを危惧しているなら、それは国民の期待と違う」と立憲民主党などをけん制していたが、対立は激しくなっている。立憲民主党などとしては、数の力を持つ与党が今国会でIR実施法案を成立させる方針である以上、あらゆる手段を行使してこれを阻止するしかないということなのだろう。

それでもギャンブル依存症に苦しむ関係者のことを考えれば、与野党で速やかにギャンブル依存症対策を議論して早期の法案成立を図り、その上で別途、IR実施法案の議論を徹底的に行うのが筋ではないか。
カジノ導入をめぐる対立の影響で、今あるパチンコ・スロット、公営ギャンブルの依存症患者約320万人が捨て置かれかねない現状は、あまりに不幸なことだ。

 
(政治部・与党キャップ 中西孝介)