36人が死亡、33人が重軽傷を負った京都アニメーション放火殺人事件から7月18日で1年を迎える。

あの忌まわしい事件から1年。事件で亡くなったアニメーターの思いを受け継ぎ、作品を作ることで供養したいという仲間たちを取材した。

写真の中で、仲間に囲まれ笑みを浮かべている犠牲者の1人、木上益治さん(当時61)。京都アニメーションの技術の礎を築き、監督としても知られたベテランアニメーターだった。

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事件から1年…青葉容疑者は全身やけどから回復

5月27日、ストレッチャーで伏見警察署に移送されるマスク姿の青葉真司容疑者(42)。この日青葉容疑者は殺人などの容疑で事件から約10カ月ぶりに京都府警に逮捕された。

京都市伏見区にある京都アニメーションに火が放たれ、制作スタッフら36人が死亡、33人が重軽傷を負った悲惨な事件は去年の7月のことだった。

警察の調べに対し青葉容疑者は「小説を盗まれたから火を付けた。ガソリンを使えば多くの人を殺害できると思い実行した」などと供述している。

自身も全身の9割以上に重いやけどを負い、一時重篤な状態となって、ドクターヘリで搬送された青葉容疑者には、皮膚移植手術10回以上繰り返すなどの懸命な治療が続けられていた。

現在ではやけどによる傷はほとんどふさがり、追加の手術は必要ない状態にまで回復したという。

亡くなったアニメーターの遺作を引き継ぎ

一方で、その凶行によって命を奪われた犠牲者の思いを受け継ぎ、作品作りに励むアニメーター仲間がいる。取材班は東京・西東京市にあるアニメ制作会社「エクラアニマル」を訪れた。

アニメーター・本多敏行さん
何とか彼の思いを作品にして世の中に出したいなと…

本多さんが「彼」と呼んだのが、事件に巻き込まれ亡くなった木上益治さん(当時61歳)。「AKIRA」など多くの作品に名を連ねる日本を代表するアニメーターだった。

本多さんは亡くなった木上さんと約30年前まで東京のアニメ制作会社で一緒に働いていた仲間だった。

木上さんの作った絵本「小さなジャムとゴブリンのオップ」。

魔法使いになるための修行をしている男の子が友達との交流の中で、魔法を使うことの意味を考える物語だ。

その続きとなるシナリオや作画が残っていたことから、本多さんはこの作品のアニメ化を決意したという。

アニメーター・本多敏行さん
これをちゃんと完成させることは木上くんへの供養にもなるし、かつての仲間が集まって作るってことで彼に捧げるものができればいいなと思っています

本多さんはかつての仲間にも協力を呼びかけ、この作品を完成させたい考えだ。

一方の青葉容疑者は現在鑑定留置中。京都地検は青葉容疑者の犯行当時の責任能力の有無などを検討し、起訴するかどうか判断することになる。

作る人と観る人が故人の思いとつながる…

Live News it!のスタジオでは…

加藤綾子キャスター
木上さんは京都アニメーションの礎を築いた方だったんですよね。木上監督の仲間たちが作るアニメーションというのは物語以上のメッセージがありそうですね。風間さん

風間 晋フジテレビ解説委員
思いを受け継いで新しい形にするというのは正解がないだけに難しいと思うんですけれども、そのプロセスに直接関わる人たちも、出来上がったアニメに触れる人たちも、それを介して故人の思いとつながって、それをふくらませることになるんだと思うんですよね。素晴らしい試みだと思います

(Live News it! 7月17日放送より)