北の非核化 中間選挙への影響は?

トランプ大統領は11月6日に投開票される中間選挙を見据え、北朝鮮の非核化を大いにアピールするためディール男の本領を発揮。金正恩委員長を慌てさせ、米朝首脳会談に向けた協議で主導権を握っている‥というのが、このところ主流の解説だ。

アメリカの政治や対外関係については、「2018年は中間選挙がありますからね」と言っておけば、とりあえずは解説風に聞こえ、ニュース解説者にとってはとてもありがたいのだが、実際のところ選挙情勢はどうなっているのか?
北朝鮮の非核化がどれだけ選挙の勝敗に効いてくるというのだろうか?

トランプ共和党は劣勢を挽回中

アメリカでは今、中間選挙でマッチアップする共和党と民主党の候補者を有権者が投票で選ぶ「予備選挙」が佳境に入っている。
トランプ大統領も月に何回かは地方に応援演説に出かけている。共和党支持層を盛り上げ、できるだけトランプ派の人物が共和党の候補者に選ばれるようにしたいからだ。

去年12月までは、与党共和党には大逆風が吹き荒れ、連邦議会下院で民主党の逆転を喫し、上院も逆転される可能性が考えられる‥との見方が優勢だった。が、現在では逆風はかなり弱まり、下院では民主党に多数を奪われる可能性が残るものの、上院はなんとか過半数を維持できそうな感じ‥にまで挽回してきたようだ。

きっかけになったのは、去年12月のトランプ減税の実現だ。それによりアメリカ経済は力強さを増し、少なくとも11月の投票時は好調を維持していると予想されている。好調な経済は政権与党にとって大いにプラスとなる。
トランプ大統領の支持率もここ数カ月はゆっくりと、しかし着実に右肩上がりの改善を続けている。昨年12月には37%の底にあったが、直近では44%まで上げている(RealClearPolitics.com)。

中間選挙では連邦議会下院の議員435人全員と、上院の100人の議員のうち3分の1が改選される。大統領の立場が直接問われるものではないが、大統領の人気が与党の勝敗に大きく影響する。特に新たな大統領が就任してから初めての中間選挙は、その大統領の信任投票の意味を持つ。今回のトランプ大統領が正にそのケースだ。
その意味で、好調な経済と大統領の支持率上昇はグッド・ニュースだ。

トランプへの拒否感は根強い

だが、少し詳しく見ると、心配な事がいろいろ目につく。

まず、大統領の支持/不支持の“強さ”という要素だ。
大統領の就任以降 SurveyMonkey.com が継続的に行っている約100万人の有権者の聞き取り調査によると、トランプ大統領の仕事ぶりを“強く支持する(strongly approve)”は27%なのに対し、“強く支持しない(strongly disapprove)”はその2倍近い42%もあるのだ。これはことし4月18日時点の数字だが、“強く支持しない”は就任直後の43%から上は46%、下は41%の狭いボックス圏にあり、トランプ大統領に対する拒否感の根強さを示している。

中間選挙では、この支持/不支持の“強さ”がとりわけ重要だ。
1974年以降の中間選挙の平均投票率は39.3%で、72年以降の大統領選挙の平均投票率56.4%に比べ17ポイントも低い。当選ラインが低くなるため、大統領選挙なら投票所に行くけれど中間選挙は・・という支持者をどれだけ投票に向かわせるかで勝敗が決まる。投票に行く動機として働くのが、支持/不支持の“強さ”なのだ。そして政治の世界では、ポジティブな力よりネガティブな力の方がはるかに強力だ。トランプにYESの投票をしに行くより、トランプにNO!の票を投じる意志の方が動機として強い。

共和党内には様々な不安要素が・・・

しかも、共和党は支持者の動員力には定評があるのだが、大統領が共和党の中間選挙では投票に行かないという統計がある。大統領が民主党ならNO!を投票しに行くという典型的なネガティブ・パワーによる投票行動なのだ。
統計の通りなら、トランプYESの共和党員は家にとどまり、トランプにNO!の民主党員が投票に行くことになってしまう。

そもそも共和党はトランプ支持で固まっていることになっているが、支持者の詳しい属性分析によると、トランプの支持率を上下に動かしているのは穏健で比較的若い女性の共和党員と中間的な無党派層だという。
このクラスターに民主党の女性候補者がアピールする可能性が考えられる。
#MeTooの影響もあって、この中間選挙では任期途中に辞職ないし再選を目指さずに身を引く現職議員の人数が過去最多レベルになっている。そして、これまでの民主党の予備選挙では女性候補者が多数選出されているのだ。共和党支持ではあるが、中間選挙では女性の民主党候補に投票という風が起きたりしないか、大統領としては気になるところだろう。

「信念に従い実行力がある大統領」が評価の鍵

ではトランプ大統領はどうしたらいいのか?
北朝鮮との非核化ディールの出番となる。

これまた SurveyMonkey.com のまとめによると、トランプ大統領の持ち味や資質として評価が高いのは、
①信じることのために立ち向かう
②アメリカ人の職を守るために譲歩しない
③実行力がある‥の3つだ。
特に①については最近1ヶ月で3ポイントの急上昇。③は昨年11月以降じりじりと10ポイント上がった。
つまり、信念と実行力が、今、旬なトランプなのだ。

当然、大統領もそうと知っており、金正恩委員長との米朝首脳会談では、信念を曲げずに「素晴らしい取引」を実現してみせることにこだわる。結果的にどういう内容の合意になるかは今後の交渉次第だが、少なくともトランプ大統領は国内での受けを強く意識し、「期待に応えるトランプ」を大々的にアピールするはずだ。

それが中間選挙での勝利を万全にするとは言い切れないが、そうすることで勝利の可能性が高まることは間違いない。
アメリカ国民の北朝鮮核武装に対する関心と話し合いによる解決への期待は高い。
トランプ大統領にとっては一世一代の勝負どころだ。

(執筆:フジテレビ 風間晋 解説委員)