栄枯盛衰の政界で、常に独特の存在感を発揮している人物が、自民党幹事長の二階俊博氏(79)だ。

秋の総裁選での三選を目指す安倍首相にとって、二階氏は、絶対に欠かせない重要なパートナーであり、ポスト安倍の面々にとっても、二階氏は評価を得たい、あわよくば支持を受けたい対象で、まさに総裁選のカギを握るキーパーソンだ。

二階氏は和歌山県議からの、たたき上げ政治家だ。

衆議院には1983年の初当選、同期には二階派の最高顧問を務める伊吹文明元幹事長や大島理森衆院議長などがいる。


田中派の若手会合に出席する二階氏、後ろには野中広務氏も(1986年)

初当選後、田中派から竹下派に参加し、小沢一郎氏の側近として力をつけていったが、1993年の「政治改革」を巡る政局で、小沢氏と共に自民党を離党した。

その後、新進党や自由党と党が変わっていく中で、小沢氏と決別。2003年に、当時所属していた保守新党が自民党に吸収される際に、10年ぶりに復党した。

経産相や党・総務会長など要職を歴任。そして2016年8月、当時、幹事長を務めていた谷垣禎一氏が自転車事故で交代を余儀なくされると、自民党史上最年長の78歳で幹事長に就任した。

そして今、安倍政権を支える幹事長として、その存在感を増している。

当時の谷垣幹事長とともに、小沢一郎氏にあいさつする二階氏(2014年)

窮地の財務省を突き放す


今年4月、森友・加計問題などで安倍政権が窮地に立つ中、財務省の福田事務次官によるセクハラ疑惑が浮上した。

さらに福田氏がセクハラを認めず、麻生財務相がセクハラを受けたとされる女性記者に名乗り出るように求めたことが追い打ちをかけた。

大炎上とも言える状況に陥った財務省に対し、二階氏は会見できっぱりこう述べた。

「リーダーシップを発揮すべき財務省が弁解に終始しなければならないことは反省してもらいたい」


政権を支える幹事長が、財務省に厳しい発言をしたことに、記者団も驚いた。

財務省内の調査を主導していた矢野官房長も、直後に二階氏への説明に駆けつけるほどの狼狽ぶりだった。

矢野氏から報告を受けた二階氏は、周辺にこう言い放った。

「財務省だって本当のこと(セクハラの有無)知らないんだろ?」

二階氏がこうつぶやいたその日の夜…福田氏は財務次官の職を辞した。

福田氏の進退を迫って発した言葉であったかは不明だが、その威力は絶大だった。

「安倍の次は安倍!」の重み


二階氏は、こうした直言や、問題を的確に処理する実績などで存在感を高めつつ、安倍政権の守護神ともいえる存在になっている。

その1つが、二階氏が幹事長就任後に最初に行った「総裁任期連続3期9年」への延長だ。

安倍首相の長期政権化のためにルールを変えるという、批判を招きかねない内容だったが、二階氏はこれを難なくまとめあげ、安倍首相に恩を売った形となった。

そんな二階氏が常々発する言葉がある。

「安倍の次は安倍!」

 安倍首相の三選を明確に支持したこの言葉は、「安倍一強」を確固たるものにしてきた。

しかしいま、その「安倍の次は安倍」という言葉が、別の重みをもってきている。

きっかけは、先述の相次ぐ安倍政権の不祥事だ。

内閣支持率が低下する中、今後安倍三選に黄色信号が点った場合、二階氏はなんというのか。つまり二階氏が「安倍の次は安倍」と言わなくなるかどうかが安倍三選のバロメーターとなってきているのだ。


二階派の実力と実情


その二階氏の権力の源泉の1つが、自ら会長を務める派閥「二階派」=正式名称「志帥会(しすいかい)」だ。

旧中曽根派と亀井静香氏のグループが合流して作られたこの派閥。

二階氏は、自民党が大敗した2009年の選挙後、当時の二階グループの議員2人とともに合流した。その後、2012年に伊吹会長が衆院議長に就任するにあたり、二階氏は、いわば外様にも関わらず会長に就任した。

その後、二階氏が、豊富な人脈や組織とのパイプなどを生かし、派閥の勢力を拡大し、今は44人の議員が所属している。


4月23日 二階派パーティー


ただ、派閥への勧誘に精を出した結果、二階派には何かと世間を騒がせる議員が多く、スキャンダルの宝庫とも言われる。

2016年には宮崎謙介氏が不倫問題で衆院議員を辞職した。宮﨑氏の妻である金子恵美氏も二階派で昨年の総選挙で野党系候補に敗北を喫した。

また神谷昇衆院議員は、自身の選挙区の市議らに現金を配ったことが報じられた。

そのたびに、二階氏や、最側近である林幹雄幹事長代理らは火消しに追われた。

一方、二階氏の、二階派優遇ともとられる剛腕ぶりは、しばしば他派閥との軋轢を生みだす。

2017年の総選挙では、長らく保守分裂となっていた山梨2区で、岸田派で自民党現職の堀内詔子氏(当時・比例復活)を公認せず、無所属で二階派に所属する長崎幸太郎氏と「無所属同士で勝った方を追加公認する」という荒業にでた。

この対応を巡り、温厚で知られる岸田派の岸田政調会長が激しく抵抗。二階派と岸田派の代理戦争とも称される熾烈な選挙戦が展開された。

結果的に岸田派の堀内氏が勝利したが、二階氏の手法に、他派閥から「強引だ」との批判が相次いだ。

それでも二階派が自民党内で“存在感”を示し続けているのは二階氏のもとに一致結束して行動できる派閥としての団結力だ

二階氏は、かつて「一致結束ハコ弁当」といわれた竹下派の出身で、その血が今でも流れているのだろう。

口数こそ少ないが、背中で派閥を引っ張る力は79歳になったいまでも政治力の源だ。

総裁選に向けた二階氏の最終決断と戦略は


では二階氏は今回の総裁選でどのように存在感を示していくのか。現在の方針は先述のように安倍首相の三選支持だ。

安倍首相の出身派閥の細田派はもちろん安倍三選へ主導的に動いているが、二階派は党内第2勢力の麻生派と共に、安倍三選を支援する「車の両輪」の役割を果たしている。

この3つの派閥で党内の議員のおよそ半数にのぼるだけに、3派の協力体制が維持できれば、安倍三選の可能性は高い。

4月には二階氏が財務省の不祥事の直撃を受けていた麻生氏と会合を行い、両派の連携を確認した。

また5月23日には、二階派の事務総長を務める平沢勝栄氏が麻生派幹部と会談を行い、総裁選への対応を協議している

 一方で党内には、今後安倍内閣への逆風がさらに強まり、安倍首相では来年の参議院選挙に勝てないという声が広がった場合、選挙での勝利を重視する二階氏が、本当に安倍三選支持を貫くのか疑問視する向きも一部にある。

二階氏は5月30日に行われた石破派のパーティーでは、総裁選出馬に向けて意欲を示す石破茂元幹事長を前に「我々はこれからも石破先生と一緒になって自民党をより活発化し、ご支援をお願いする。石破先生はこれからも志はたかいので、期待に応えて皆で一緒に頑張っていくということでお願いしたい」と述べている。


5月30日 石破派パーティーに出席する二階氏

そうした中、二階派が準備を進めるのが派閥としての政策集の策定だ。

二階派はスキャンダルと二階氏のリーダーシップというイメージを他派閥から持たれているが、元々は「政策集団」としての色合いも濃く、2012年の総裁選に際しては、当時の伊吹会長のもとに「志帥会の基本姿勢」を6項目にわたりまとめている。

今回も、政策集に照らす形で、総裁選での対応を最終判断することになるのかもしれない。

 まもなく国会が閉会すれば、自民党は一気に総裁選モードに突入する。

数多くの政局をくぐり抜けてきた二階幹事長と二階派が総裁選にどう臨み、総裁選後の政権への影響力をどう確保していくのか、その行方に注目したい。

 

(政治部・自民党担当 門脇功樹)