鮮やかな青色に光る蜂。
蜂といえば黄色と黒の縞模様を思い浮かべるだろう。全く別の昆虫のように見えるが、これは「青蜂(せいぼう)」という蜂だ。

その美しい姿から「空飛ぶ宝石」とも呼ばれている青蜂の新種が、今年2月にアフリカ大陸の南東に位置するマダガスカル島で発見された。
青蜂は、ほかの蜂に寄生して生きる「寄生蜂」で、これまでに世界で3000種以上が確認されているが、マダガスカルでの新種発見は30年ぶりだという。

体中に宝石を敷きつめたような美しい青蜂だが、これまでに確認されている種類とは何が違うのだろうか?
そもそも「寄生蜂」とは、どのようなハチなのか?
寄生性ハチ類の分類学的研究に取り組んでおり、フジテレビも同行した昆虫調査でこの新種を発見した九州大学の三田敏治助教に話を聞いた。

「毒針はなく、緑・ピンク・紫の種類も」

ーー「寄生」するというのはどういうこと?

寄生するのは幼虫の間です。寄生蜂の親蜂は、獲物にする昆虫の卵や幼虫に自らの卵を産み付けます。
孵化した子蜂は、寄生した獲物を食べて成長するんです。蜂だけでなく、バッタやイモムシも獲物になります。

ーー青蜂はなぜ青い? 寄生するのに目立ってしまうのでは?

なぜ青色なのかは謎ですね。
実は、「青蜂」といっても緑やピンク、紫などの金属光沢をもっている種類もあるんですよ。しかも、数としては緑色の青蜂の方が多かったりします。
寄生する時は、獲物が巣を留守にしている間に入り口を狙うのですが、目立つ姿をしているので、ほかの昆虫に見つかっているような場面も観察されています。
ちょっと鈍臭くて、かわいらしくもありますね。

ーー毒はある?

毒針は持っていません。
お腹がやわらかく、背中側が硬いのですが、毒針の代わりに、体を丸めて敵から身を守っています。
この状態を「擬死」とする見方もあります。

ーー青蜂は日本にもいる?

かつてはたくさん生息していました。
青蜂は里山を好むのですが、その荒廃とともに数も種類も減ってきてきている状態です。

「発見時は飛び上がるほどうれしかった」

ーーどうやって採集した?

青蜂は、多くの蜂と同じように花の蜜を集めて生きています。そこで、蜜の色に見立てた黄色い皿を使ったワナを仕掛けました。
皿の中に水と少量の洗剤を入れ、森に置いておくと、花と勘違いした青蜂が水に落ちて飛び立てず、採集できるという方法です。

ーー今回発見した新種の特徴は?

発見した青蜂と同じグループは、触角の上に人間でいう“眉毛”のような横線が走っているのですが、見つけた青蜂にはその特徴がありません。
毛が生えているわけではないのですが、この“眉毛”はぷくっと盛り上がっていて、種類を見分けるポイントのひとつです。

ーー新種だとわかった時は、どんな気持ちだった?

実は、これまでとは違う種だと判断したのは、帰国してからなんです。
というのも、青蜂には3000以上の種類があり、それらの特徴と照合するには時間が必要でした。
しかし、マダガスカルで採集した時に「これはきっと新種だろう」という予測はしていました。
青蜂の体長は、大きいものだと2cmにもなりますが、これは3mmと非常に小さかったのです。

青蜂は幼い頃からの憧れで、大学生の頃から研究を始め、「いつかマダガスカルに行って自分で捕まえてみたい」というのが夢のひとつでした。
昆虫分類研究者は、さまざまな手段を駆使して新種を見つけますが、マダガスカルは世界でもそこにしかいない生き物が生息する場所です。
そこで、これまでに取り組まれていない方法を試みて、誰も知らない新種を発見できたので、正直、飛び上がるほどうれしかったです。

今回採集された青蜂は、国立科学博物館で開催される特別展「昆虫」(7月13日 金~10月8日 月・祝)で初公開される。

新種は本来、論文の発表者が名前を付けるのだが、この青蜂は展覧会の来場者の中から、応募で選ばれた当選者の名前をつける企画を実施するという。当選者が自分の大切な人の名前をつけてプレゼントすることもできる。

そして、その名前を入れた論文の発表を経て、発見された青蜂は正式に新種として認定される。

発見者ではなく、展覧会の来場者の名前が付けられることについて三田助教は、「自分と同じ名前だと、その姿や生態に興味を持ってもらえると思います。生き物の多様性を一般の方にも身近に感じるきっかけとなれば嬉しいです」と言う。

小さいながらもユニークな姿と不思議な生態に満ちているという寄生性ハチ類。
青蜂はその美しさで知られるが、専門家は多くはない。
今後は、綺麗だということにとどまらず、種類が豊富でおもしろい昆虫だということを広く伝え、学名や特徴の見極めの発展につなげたいと話してくれた。