あ、また日本的な風景だ  

「GoToキャンペーン」についてガタガタ文句言ってる人が多いのを見て「あ、また日本的な風景だ」と思った。

このキャンペーンは新型コロナで疲弊どころか壊滅状態にある観光業を救うために税金1兆7千億円を使って国民に旅行に行ってもらおうという計画。自粛にうんざりしていた国民にとっても夏休みに一気に憂さを晴らせる機会なのだ。

GoToキャンペーンの撤回を強く求める野党
GoToキャンペーンの撤回を強く求める野党
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ただ感染の再拡大で「行ってもいいのか」「受け入れてもいいのか」と双方が疑心暗鬼になっている。

旅行に行くかどうかかくらい自分で決めなよ

個人的な意見を言わせてもらうと、いい大人なんだから、行きたい人はルールやマナーを守り、リスクも取って行けばいい。怖い人は行かない。受け入れる方は、感染防止対策をして、リスクを取って受け入れればいい。怖い人は受け入れない。それだけのことではないのか。

だがどうやら日本人はそれではダメらしい。行っていいのか悪いのか、呼んでいいのか悪いのか、誰かに決めてほしいのだ。たぶん安倍首相に。

「国民感情に寄り添いながら国交省において検討を進めている」と発言する西村経済再生担当相
「国民感情に寄り添いながら国交省において検討を進めている」と発言する西村経済再生担当相

でもそんなこと決めるリーダーは世界にいない。そんなことしたら専制君主だ。民主国家ではない。民主国家ではそういうことは自分で決めるのだ。

でもたぶん日本人は自分でGoToキャンペーンに参加するかどうか決められない、誰かに決めてほしいと思っている甘ったれなのだ。

新型コロナで観光業が受けている被害は飲食業の比ではない。感染症が流行しても人々は飲み食いはするが、観光はしない。特に外国人観光客がまさに「一人も」入ってこないという状況は観光業にとっては悪夢だ。

 我々は日常に戻らなければいけない

政府は先週からイベントなどの開催を緩和し、プロ野球やJリーグが観客入りの試合を始めた。芝居やコンサートも始まった。しかしさっそく劇場でクラスターが起き、主催者側の甘い対応に批判が集まっている。

だが我々はそろそろ日常に戻らねばならない。コロナと共に。70代80代の重症化の可能性が高い人たちは慎重になるべきだが、若者はいつまでも家にいてはいけない。マスクと手洗いとうがいをちゃんとして、3密を避けて(これらができてない人たちが意外に多いが)、我々は日常に戻らなければいけないのだ。

【執筆:フジテレビ 解説委員 平井文夫】

平井文夫
平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ報道局上席解説委員。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て現職。