20万匹に1匹!? “超レア”カブトムシを発見

岡山県倉敷市で小学6年生の遠藤尊くんが、知人からもらったカブトムシの卵を育てたところ、羽化した成虫90匹のうち、1匹だけが変わった形をしていた。

6月9日、尊くんが母親と弟の3人で、同市立自然史博物館に持ち込んで鑑定を依頼したところ、体の左半分がオスで、右半分がメスという「雌雄型」であることが判明した。雌雄型の昆虫は、遺伝子の変異が原因とされており、その誕生確率は10万匹~20万匹に1匹とも言われ、同博物館にもカブトムシの雌雄型の標本は1点あるだけだった。


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今回見つかった雌雄型のカブトムシは、左右が非対称となっており、メスである体の右側は前羽などの表面に艶がなく、ざらざらしたメス特有の特徴をしている。また、右側の脚は太くて短いがオス部分の左側の脚は細長い。オスのシンボルである角は、とても短く左右非対称に生えている。

同博物館の昆虫担当の奥島雄一さんに詳しく話を聞いてみた。

「真ん中できれいに分かれるとは限らない」

倉敷市立自然史博物館・奥島雄一学芸員

ーー雌雄型のカブトムシと、一般的なカブトムシの明確な違いは?

一般的に正常なカブトムシの成虫は、性別が個体ごとにオスかメスに分かれています。雌雄型の個体は1匹の中にオスの形質を表している部分とメスの形質を表している部分が同居しています。それぞれの形質の現れ方はさまざまです。

今回のカブトムシについてはおおざっぱに言って、背面から見た体の左側にオスの特徴が色濃く出ていて、右側にメスの特徴がよく表れています。

しかし、真ん中できれいに分かれているものではありません。たとえば、前胸の表面右側はざらざらしていてメスの特徴が認められますが、部分的になめらかな表面のオスの特徴を示している部分もあります。

一般的なメス(左)とオス(右)

ーー標本で1点所有しているという雌雄型カブトムシは、今回のとは特徴が違う?

2006年に寄贈されたもので、体長は37.5mm、カブトムシとしては小型です。体全体のうち70%程度の部分がメスで、残り30%程度の部分にオスの特徴がみられます。オスの特徴は主に、体の右半分に部分的に表れています。

頭部はほぼ中央から左がメスで、右がオス。触角の第1節は、左全体は毛深いが、右は毛が1列のみなど、細部にわたって特徴が様々です。

2006年に寄贈された雌雄型カブトムシ(提供:倉敷市立自然史博物館)

雌雄型カブトムシに生殖機能があるかどうかは不明

ーーオスとメスのカブトムシで、生態や役割などの違いは?また、雌雄型はどちらの性質?

オスのカブトムシは交尾の際、精子を提供すること。メスのカブトムシはオスから精子を受け取って体内で受精、産卵するという違いがあります。雌雄型がどちらの性質を持っているかは分かっていません。

まず、雌雄型個体の交尾機能がオスとメスのどちらかの正常なものとなっていれば、その性別の役割を果たすことができるかもしれません。カブトムシの交尾器は腹部の内部にあり、今回のカブトムシではその状態を確認しておりませんのでわかりません。

ただ、腹部の外見からは交尾器が収納されている部分は左右非対称のいびつな形状となっており、雌雄どちらの機能も有しない可能性があります。


ーーオスのカブトムシは角で戦うイメージがあるが、メス同士は戦う?雌雄型は?

メス同士も餌場(樹液)の取り合いで戦うというか、競り合うことはあります。雌雄型については、観察しておりませんので分かりませんが、普通に餌はとっていますので、餌場の取り合いは必要とあらばするのではないかと思います。

ーー雌雄型の角は伸びる?

昆虫を含む節足動物の基本として、成体(最後の脱皮を終えたもの)となった後は、角など外側の殻は大きくなりません。

ーー幼虫時にオス・メス・雌雄型、それぞれ見分けることは可能?

オス、メスはたいてい区別可能です。雌雄型の幼虫は見たことがないのでわかりません。

カブトムシ以外でも雌雄型の昆虫がいる

ウスタビガの雌雄型(提供:倉敷市立自然史博物館)

ーーカブトムシ以外の雌雄型の昆虫は?

当館の収蔵品ではツバメシジミ、ウスタビガ、スズムシがあります。一番人気はウスタビガです。体の真ん中から左がオス、右がメスときれいにわかれています。

雌雄型のスズムシ(左)とツバメシジミ(右)提供:倉敷市立自然史博物館

倉敷市立自然史博物館には約51万点の昆虫標本があるが、雌雄型の昆虫はチョウやガを合わせても6点だけだそうだ。
常設展示に出ているのは約1万点で、現在、ウスタビガとスズムシについては展示しているという。ただ、時期によって展示物は入れ替わるので、これらの雌雄型標本を含む展示されていない収蔵標本を見学するには、予約制の「お宝探検ツアー(昆虫)」へ参加すれば可能ということだ。