皆さんは、国会議員の仕事といえば何を思い浮かべるでしょうか。

まず挙げられるのが、国会の本会議や委員会の場で質問することです。

しかし、それ以外にも政府の姿勢を問うことが出来る制度があります。

それが「質問主意書」です。

国会議員は会期中、政府に対して文書で国政全般について質問できる制度があり、この文書を「質問主意書」と言います。

政府は「質問主意書」に対して文書で答える義務があり、この回答を「答弁書」と呼びます。

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でも、議員は国会の委員会などで直接政府に質問できるはずなのに、なぜ文書での質問という制度があるのでしょうか。

議員は、その委員会の議題の範囲内でしか質問できません。

外務委員会所属の議員は外交だけ、農水委員会所属の議員は、農林水産に関する質問しかできないわけです。

また質疑時間も、原則として所属する会派の議員数に比例して決まります。

特に少数会派の議員は思い通りの質問時間がとれるとは限りません。まして本会議での質問に立つ機会など、ほとんどないのが実状です。

そこで、原則として国政一般のあらゆる内容について質問でき、1人でも提出可能な「質問主意書」という制度があり、広く活用されているのです。

しかも、質問主意書に対する答弁書は、複数の行政機関またがるようなものであっても、必ず関係機関で調整され、閣議決定を経て内閣総理大臣名で提出されます。

法案さながらの対応の末にとりまとめられ、いわば「内閣の統一見解」としての重みがあります。

独特の言い回しも…実際の質問主意書を見てみよう

以下が、実際にニュースとなった質問主意書と答弁書の抜粋した内容です。「政府の見解如何」など、独特の言い回しがされています。

~ 麻生大臣の「次官の番をみんな男にすれば解決する話なんだよ」との発言に関する質問主意書(衆院・第196回国会 質問第244号 2018年4月20日提出)

質問主意書:政府は、政府高官による女性記者などへのセクシャルハラスメントの防止策として、その取材担当記者から女性を排除し、男性のみにすることが妥当なことであると考えるのか。政府の見解如何。

答弁書:お尋ねについては、妥当なことであるとは考えていない。(後略)



~ 北朝鮮から漂着する木造船に起因する諸問題に関する質問主意書 (衆院・第195回国会 質問第83号 2017年12月5日提出)

質問主意書:過去三年間の北朝鮮からの日本海沿岸への漁船等の漂着数はどの程度か。また取り調べを受けた者の数はどの程度か。政府の把握するところを明示されたい。

答弁書:お尋ねの「北朝鮮からの日本海沿岸への漁船等」の意味するところが必ずしも明らかではないが、海上保安庁においては、平成二十六年から平成二十八年までの三年間において、朝鮮半島からのものと思われる漂流・漂着木造船等を百七十六件確認している。 また、お尋ねの「取り調べを受けた者」の意味するところが必ずしも明らかではないが、海上保安庁においては、平成二十六年から平成二十八年までの三年間において、朝鮮半島からのものと思われる漂流・漂着木造船等からの生存者を五名発見しており、当該生存者から漂流・漂着に至った経緯等について事情聴取を行っている。


UFO…幽霊…オカルト質問も常態化?

~ 総理大臣公邸に関する質問主意書(参院・第183回国会 質問第101号  2013年5月15日提出)

質問主意書:旧総理大臣官邸である総理大臣公邸には、二・二六事件等の幽霊が出るとの噂があるが、それは事実か。安倍総理が公邸に引っ越さないのはそのためか。

答弁書:お尋ねの件については、承知していない。

一方で、質問主意書は、いわば“何でも質問できる”ため、こんな質問書も提出されています。

~ 未確認飛行物体に関する質問主意書(参院・第168回国会 質問第84号 2007年12月10日提出)

質問主意書:政府としてUFOについてどのような認識を持っているのか明らかにされたい。

答弁書:政府としては、御指摘の「地球外から飛来してきたと思われる未確認飛行物体」の存在を確認していない。


UFOについては日本の安全保障や国民の不安に基づく質問、また首相公邸の幽霊についても首相の危機管理と国有財産のあり方の観点からの質問だということです。

まさに何でもありの質問主意書。

そしてこれらに対して淡々と回答する答弁書はすべて「内閣の統一見解」なのです。


官僚は徹夜の連続…答弁書の働き方改革は?

こうした答弁書を作成していくシステムについては、各方面から課題が指摘されています。

<課題1>官僚の負担過多


官僚による答弁書の作成は、非常に厳格な手続きで行われ、過去の答弁書などの参考資料を用意したり、大臣ら幹部の決裁を取ったりと煩雑な作業を要します。

そのうえ、質問主意書への回答は、「内閣が受け取った日から7日以内」という期限を厳守しなければいけないため、官僚たちに大きな負担を強いることになっています。

実際、内閣人事局が霞が関の働き方についてアンケートを実施した際、質問主意書を扱う官僚からは「答弁書の作成担当になると、手続きを終えるまで連日の深夜残業が確定し、かつ、他の業務はすべてストップしてしまう」「必ず連日深夜まで残業しないと期日までに間に合わない質問主意書制度は、ルールないし運用に問題がある」との意見が寄せられました。

<課題2>“ゼロ回答”を連発

政府にとって答弁書は、担当大臣の答弁ではなく、内閣全体の意思決定と位置づけられるため、軽々に答える訳にはいきません。

よって、国会答弁よりも慎重な物言いが求められます。

そこで用いられる常套句が、先ほどの答弁書にもあった以下の言い回しです。

「お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではない」
「お尋ねについてお答えすることは困難である」

こうした表現を駆使しつつ、事実上の“ゼロ回答”としている答弁書が散見され、議員渾身の質問であっても、疑問の解決や国政の進展につながらないケースも多く見られます。

 

功罪のバランスと運用の改革は

質問主意書は、活躍の場が少ない野党議員らにとって、国民を代表し内閣の見解を確実に問うことが出来る貴重な制度です。

また、委員会等での質問が少なくても「質問主意書提出数トップ」といった形で存在感をアピールできるような機会にもなります。

しかし、答弁書の作成は官僚にとって大きな負担であり、国内外の課題に対処する官僚の時間と労力を奪うことにもなります。

質問主意書を数多く出せば良いというような風潮には批判も多く、かつては、提出制限が検討されたこともありました。

制限がいいかどうかは別として、何かしら運用のあり方を見直す必要はありそうです。

ちなみにこの国会での質問主意書の提出数は、6月14日現在で、なんと衆議院389件、参議院139件にのぼり、すべて衆議院と参議院のホームページ上に公開されています。


(政治部 官邸担当 山田勇)