富山県内の河川に遡(そ)上するサケが近年大きく減少していて、特に今年は過去50年でも記録的な不漁となっています。
海水温の影響とも言われる原因を取材しました。
晩秋の神通川。
古くからこの時期に行われてきたのが、海から産卵のために遡上してくるサケ漁です。
*リポート
「神通川ではサケ漁がピークを迎えています。こちらは例年ですと多くのサケが入るスポットですが、今年は神通川に異変が起きているようです」
神通川で10年以上、投網によるサケ漁を行う前田さんです。
*サケの捕網漁10年以上 前田守さん
「Qサケの捕れ高は? メスは去年の3分の1、オスは4分の1くらい。捕れていない。少ない。一昨年より去年が少ないし、段々少なくなってきている。(今年は)特に悪い。今までにないほど悪い」
前田さんは昔からサケが集まっくるという場所で、毎年漁を行っていますが年々、その数が減ってきているといいます。
特に今年は今月10日以降サケが捕れていないといいます。
(20日時点)
*サケの捕網漁10年以上 前田守さん
「Qなぜですかね…? 分からんけど、今年暖かいからじゃないの、水温も温かいし。海が暖かいから、こっちに来ていないのか。自然が変わってきているんじゃないですか。あんまり良いことではないと思いますけど…」
別の場所で、サケのおとり漁を行っている人も…。
*おとり漁の漁師は
「(去年より)6割くらいは捕れていないような気がする。残念ながら少ない」
県の水産研究所によりますと、県内の河川に遡上するサケはここ5年間減少が続いています。
特に、今年は過去最低だった去年の5割程度にとどまっていて、過去およそ50年間で最も少ない記録的な不漁となっています。
*県水産研究所 田子泰彦所長
「富山県全体の川が悪い。例年ここ5年ほど悪いんですけど、その中でも去年よりも悪い。神通川では現段階で半分近く、庄川では3分の1くらいに下がっている」
サケの稚魚は、県内の河川から春頃に海にでて北太平洋のベーリング海で2年から4年ほど過ごして、産卵のため川に戻ってきます。
サケの遡上が減少する理由について田子泰彦所長は、海水温の上昇などによって生き残れないサケの稚魚が増えているためとみています。
*県水産研究所 田子泰彦所長
「日本海の水温が上がってきていて、ここ100年で1度ほど上がって温暖化が進んでいるが、それに応じて海流の流れも変化している。富山のサケや日本海側のサケがオホーツク海に行くまでに、従来よりも海水温が上がる時期が早く、良い環境になっておらず、死ぬサケの稚魚が多いと考えられている。広く回遊する魚は地球規模の環境に影響される」
遡上するサケの減少はサケの増殖にも大きな影響を与えています。
卵を採卵する神通川サケマス増殖場です。
*富山漁業協同組合 深川勉功さん
「お腹についた水分をとってからお腹を割く」
お腹を割くと、中からは鮮やかな卵が溢れだします。
*富山漁業協同組合 深川勉功さん
「だいたい一尾に平均で3000粒入っています」
神通川水系を管理する富山漁業協同組合では、今年も220万粒の採卵を目標にしていますが、遡上するサケが少ないため計画通りの卵が確保できなくなっています。
*富山漁業協同組合 深川勉功さん
「去年の6割ほど。同じ時期で比較して採卵できた数は6割ほどになっている。多い時は1日40~50匹は採卵するが昔は1日100匹という時代もあった」
受精させた卵は約40日で孵化し、その後、毎年2月ごろに稚魚が放流されます。
*富山漁業協同組合 深川勉功さん
「少しでもサケが帰ってくるように力になれればと思って毎日取り組んでいる。4年後に神通川に帰って来るように作業している」
海水の温暖化で川に戻る数が減少するサケ。
今後の増殖事業への不安が増しています。
*田子泰彦所長「このままいったら、サケの増殖事業はできなくなる。原因が北洋の海にあるとなると解決策が見いだせない。川で増殖し放流しているが海の環境が変わってくるとこれから厳しい時代が続くのではと心配している」
国の専門機関は、稚魚が生き残るように、今後は放流の仕方を変えて、稚魚を今より大きくしてから放つことや最も適した水温の期間に放流することを各漁協などに呼びかけています。
環境の変化に適応しながら、サケを守っていく必要があるようです。