特集は「懐かしい世界」を描く17歳です。生まれるはるか前の昭和の街並みなどを描く長野市の高校2年生。作品は公募展などで入賞し、今、地元で個展も開かれています。若者が描く「昭和」な絵の世界を紹介します。
瓦屋根の商店が並ぶ街。
よく見ると、「オート三輪」が走っています。
そして「仏閣型」の旧長野駅舎。
バスも懐かしいカラーリングです。
長野市の川中島公民館で昭和の街並みなどを描いた作品46点が展示されています。
40代:
「あたたかい感じとかも伝わってきます。生き生きしていますよね」
60代:
「印象に残ったのは昔の長野駅。あの絵見て『あー!こんなのだったな』」
描いたのは長野日大高校2年生の竹前優月さん(17)。
「Yuzuki」という作家名で活動し、これまでに、いくつかの公募展やコンテストで入賞経験があります。
Yuzukiさんは自身の作品を「空想画」と呼んでいます。
“Yuzuki”竹前優月さん(17):
「写真を見て描くのもいいんですけど、空想で描くことによって生み出される自然な感じというものをもっと作品に詰め込みたいなと思って」
こちらは昭和40年代後半の街をイメージした作品。
Yuzukiさん:
「この作品は地元の風景をイメージしたところがあって、例えば『七曲り』っていう坂道があるんですけど、それはここら辺にイメージして描いていて。長野駅付近だと東急さんがあったりとか、いろいろにぎわった感じも自分自身では好きなので、長野県をモデルに、ちょっとずつそういった要素を入れてみました」
写真で見た懐かしい風景などをモチーフに、想像も織り交ぜて生き生きとよみがえらせる。
それがYuzukiさんの「空想画」です。
小学4年生の頃のYuzukiさん。レストランでメニューが運ばれるまでの間も昔のテレビや冷蔵庫を描いています。
小さい頃から絵を描くのが好きで、特に好んで描いたのがいわゆる「旧車」。「昭和」をモチーフにするようになった原点ともいえます。
Yuzukiさん:
「最初は車の形とかがカッコいいなと自分的には思って、そこからいろんな建物とかを見るようになって、それで興味が広がったというか。描いていくうちに段々、生活感とか、同時に思い出されて、ちょっとずつ楽しくなってくるというか、描いていく過程で昔のにぎわいとかも同時に感じ取れるので」
制作の様子を見せてもらいました。
Yuzukiさん:
「線をなるべくまっすぐ描くこととか、自然に見えるように陰のつけ方とかを普段、意識していますね」
使うのはボールペン。これを駆使し、陰や色の変化を付けていきます。
約30分ほどでー
Yuzukiさん:
「かやぶき屋根の家です」
外観だけでなく、家の中のちゃぶ台まで細かく表現されています。
Yuzukiさん:
「こだわったところは、陰の強さ。あと家のところに傷みたいなあると思うんですけど、普段の生活感だとかそういうものが絵から生まれると思うので、そこを意識しました」
公募展で入賞するほどになったYuzukiさんの絵。見守ってきた家族はー。
Yuzuki:
「これ(描いたのは)中学3年生くらいですね」
母・真優子さん:
「敬老の日だね、敬老の日のプレゼントで」
祖父母に贈った絵。かつて長野市の地附山にあった「善光寺ロープウェイ」に感謝のメッセージがつづられています。
祖父・恭三さん:
「必ず絵を添えて祝いの言葉をくれるんですね。それに加えて一つ一つの絵が懐かしさを感じる絵であるというのが、非常にうれしくいつもいただいています」
祖母・きみ江さん:
「ずっとずっとまだまだ先、絵を描いてほしいと思っていますし、絵の方もだいぶ上達したと思います」
母の真優子さんはー。
母・真優子さん:
「周りの意見とかあると思うんですけど、自分の気持ちを最優先にして、どんどんこれからもこういった作家活動は続けていけたらなと本人も思っていると思います」
川中島公民館で開催中の個展。
以前、別の場所で見たYuzukiさんの作品に感銘を受けた館長の増田さんが展示を依頼しました。
川中島公民館・増田秀晃館長:
「昔懐かしいデパートとか駅舎とか、あるいは建造物とかがあって『あ、これあるよね』というようなことが絵から感じることが多いので、本人の緻密さとそれから空想の世界に私自身も魅了されました」
「青空に映える千曲川」
モデルは千曲市の平和橋。
「北アルプスを見ながら一休み」
大好きな「旧車」がずらり―。
こちらは完成までに1年かかった作品「にぎやかな街」。
どこかで見たような建物、忙しそうな人や車の流れ。祖母から聞いたデパート屋上の遊園地も想像で描いています。
Yuzukiさん:
「最後までぎっちりと昭和の風景を再現したくて、描いていく過程で昔のにぎわいとかも同時に感じ取れるので、すごく楽しく描いた」
現代にはない活気や時間の流れ。あの時代の温かみが好きだと話すYuzukiさん。
これからも心の中の「昭和」を描き続けます。
“Yuzuki”・竹前優月さん(17):
「昭和のいい時代の風景を絵で、またよみがえらせる感じに描こうという勇気と言いますかね、やる気がすごくわいて、昔を実際に生きてきた方々にはもちろん懐かしく感じてほしいですけど、若い世代の方々にも見ていただきたくて。昔はこういう風景があって今までつながっているということを自分自身では感じてほしくて、そんな作品を描けるように頑張っていこうと思います」