特集は期待の野菜です。それは長野県が新たに開発した主に茎の部分を食べる「茎レタス」。独特の食感と枝豆のような香りが特徴です。流通はこれからですが、一部の料理人たちが早くも太鼓判を押しています。
大きな葉と太い茎。見慣れぬ様相のこちらの野菜、実はー。
県野菜花き試験場・保勇孝亘さん:
「こちら『茎レタス』といいまして、茎を可食部としたレタスとなっております」
通常のものからは想像しにくいですが、これもれっきとしたレタスの仲間。
県野菜花き試験場が開発した茎レタスの新品種「ひすいのかおり」です。
「ひすい」はゆでた時の色あい、そして「かおり」はー。
(記者リポート)
「あ、枝豆の香りですね」
県野菜花き試験場・保勇孝亘さん:
「そうですね、枝豆と同じ香り成分が含まれていますので」
茎レタスが発しているのは「2‐アセチル‐1‐ピロリン」という香り成分。
山形県庄内地方の特産品として知られる枝豆「だだちゃ豆」やポップコーンに含まれている成分です。
開発者はレタス担当だった関功介主任研究員(48)。
ある「気付き」が開発のきっかけとなりました。
県野菜花き試験場・関功介主任研究員:
「ここの圃場(ほじょう)ですね、見つけたのは」
歴代の担当者が集めたおよそ130種類の種をまき栽培していた関さん。
いつものように圃場を訪れたところー。
関功介さん:
「あれ何か大豆の匂いがするぞって思って。周りに大豆はないし、もしかしたらこの中にあるのかって、歩いて回ったらあったんですよね。これかと思って」
香りを発していたのは「茎ちしゃ」という名のレタスでした。
関功介さん:
「レタスの野生種の名前が『トゲチシャ』といいまして、茎を食べるタイプの『チシャ』だったので、『茎ちしゃ』と(種袋に)書いたんだろうなと思います。全く新しい品種が作れるかもしれないと、匂いをかいだ時にピンときたんですね」
その場で葉を食べてみましたがー。
関功介さん:
「苦くて食べられなくてですね、これはこのままじゃだめだなと思いまして」
その後、関さんは味を改良するため、爽やかな風味のロメインレタスの一種と交配を試みます。
偶然の発見から9年。2021年、完成したのが「ひすいのかおり」です。
関功介さん:
「香りを持ったことによって、全く新しい野菜になったなと考えています。この香りをかぐと、食欲がわくだとか、少し甘い感じがするだとか、そういった感じの香りだと思います」
実際にゆでてもらいました。
茎は外側の皮をむいてあります。
そしてー。
(記者リポート)
「畑でかがせていただいたときより、数倍強い香りがしています。ゆでた枝豆とか、ゆでたトウモロコシのような、すごく良い香りがしています」
一方、葉は、さっと「湯通し」。
(記者リポート)
「おいしいですね、ゆでてこの食感が残るってすごいいいですね」
関さん:
「そうなんですよ、塩も何もふってなくて、ただ茹でただけですけど」
(記者)
「本当に枝豆とかトウモロコシっぽい味がするので、味つけなくてもこのまま食べられちゃいますね」
自信はあったものの気になったのは「プロの評価」。
関さんは料理人に連絡を取り、実際に食べてもらいました。
「ホテルシェラリゾート白馬」の総料理長・金沢光久シェフもその一人です。
ホテルシェラリゾート白馬・金沢光久総料理長:
「香りをかいで、ちょっと切って生で食べてみて、その時点で、これはポテンシャル高いなってすごく感じたんですよ。『これ市場に出たらヒットするよ。そのくらいのおいしさがあるよね』ってことを言いました」
金沢シェフに「ひすいのかおり」の魅力を引き出す料理を作ってもらいました。
ホテルシェラリゾート白馬・金沢光久総料理長:
「『ひすいのかおりのステーキ』を作ります」
まず、茎の部分を適当な大きさにカット。
ホテルシェラリゾート白馬・金沢光久総料理長:
「基本は茎から、硬い方から先に焼いていきます」
強火よりも、やや弱くしてじっくり焼きます。
記者:
「トウモロコシみたいな香りしてきました」
ホテルシェラリゾート白馬・金沢光久総料理長:
「ね~、するでしょ」
5分ほど茎を炒めたら、葉も投入し、じっくりと加熱したら皿に盛ります。
これにかけるソースはベーコン、ニンニク、トマト、アボカドを炒めて作ります。
塩、レモン果汁を加え、最後にバジルを入れたらソースの出来上がり。
これを「ひすいのかおり」にかけ、バゲットを炒めたクルトンを乗せたら完成です。
(記者リポート)
「非常にシャキシャキしています。かめばかむほどニンニクの香りと、枝豆のような香りが絶妙にマッチしていて非常においしいです」
中国料理担当の阿部剛士シェフも2品、作ってくれました。
中国料理担当・阿部剛士シェフ:
「茎レタスのここの部分を使ってあえものを作ります」
「ひすいのかおり」は茎の部分を適当な長さに切り、皮をむいて薄切りにします。
中国料理担当・阿部剛士シェフ
「あんまり薄く切らない方がいい、このシャキシャキが面白いので」
ボウルに入れて塩を揉み込み、半日ほど漬けたら、細長くカット。
これを砂糖と塩でもみ込んだクラゲ、熱したピーナッツオイルをかけて1日置いたショウガと長ネギと一緒にあえたら完成です。
続いては炒め物。
葉と茎を食べやすい大きさにカット。
茎は柔らかくなるまで下ゆでします。
白ごま油を引いてニンニクを炒め、鶏ガラスープ、塩コショウ、刻んだ長ネギを加えて強火で加熱。
そこにゆで上がった「ひすいのかおり」を投入。
水溶き片栗粉でとろみをつけ、香味油を加えたら完成です。
(記者リポート)
「これも食感が非常にシャキシャキしていますね。かめばかむほど、ほんのり甘みのようなものも出てきます」
ホテルではまだ茎レタスの料理は提供していませんが、流通量が増えれば扱ってみたいと金沢シェフは話します。
ホテルシェラリゾート白馬・金沢光久総料理長:
「これで(本格的に)生産が始まってくれば、うちはこの香りをお客さまに楽しんでもらいたいなっていうのは、思いますね」
「ひすいのかおり」は、2022年から一般栽培が始まり、現在15軒ほどの農家が扱っています。
その少量の「ひすいのかおり」を使い白馬村にあるペンション「プチホテル バ・ブロー」では、既にペーストを使ったカレーやスープを提供。
客の評価は上々です。
プチホテル バ・ブロー・田中雅乃さん:
「(宿泊客は)レタスっていうことに驚かれる。華やかな香りと、鮮やかな色合い、茎の部分と葉の部分で味わいも違うので、料理の幅を広げてくれるような魅力的な野菜だと思っています」
偶然の発見から生まれた「ひすいのかおり」。
関さんは生産者が増