「アメリカが宇宙を支配」

世界が注目した米朝首脳会談で、「米韓合同演習を中止する」と衝撃の発言をした、アメリカのトランプ大統領だったが、休む暇なく世界に驚きを提供し続けている。

現地時間18日、ホワイトハウスで開かれた全米宇宙評議会の会合で、宇宙開発を巡る取り組みの一環として、陸軍・海軍・空軍に並ぶ、「Space Force(宇宙軍)」の新設を指示したのだ。その会合を受けた会見の模様は、ホワイトハウスの公式YouTubeにもあがっている。

また、トランプ大統領は「アメリカが宇宙を支配する必要がある」と語っており、宇宙探査だけでなく国防における宇宙への関わりを表明している。

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“宇宙軍”と言ってしまうと、イメージ的にはSFだったりロボットなどの世界観が浮かび、まるで某有名映画のようで、現実感が湧かないかも知れない。
宇宙人やエイリアン対策だったり、UFO(未確認飛行物体)の特定でもするの?などといった印象を受けるが、実はアメリカでは1985年に「United States Space Command(アメリカ宇宙軍)」という軍が発足していた。

2002年にはアメリカ戦略軍に整理・統合されたが、肝心の役割はというと、通信衛星・偵察衛星をはじめ各種軍事衛星の運用のほか、ICBM=大陸間弾道ミサイルなどの早期警戒衛星の管理を担当していた。さらに、無線通信やコンピュータネットワークの運用も担っており、サイバーテロへの対応も受け持っていた。

・・・お気付きだろうか?

今回トランプ大統領が新設を指示したのは「Space Force」で、過去にあったのは「Space Command」。どちらも日本語に訳してしまうと「宇宙軍」となり、同じ言葉になってしまうが、わざわざ違う単語を使うからには意味があるに違いない。そこで、この両者の違いをフジテレビの能勢伸之解説委員に聞いてみた。

宇宙で衛星をめぐる戦闘が?

ーー「Space Force」と「Space Command」はどう違う?

米軍における「コマンド」は何らかの分野で陸海空軍を統合して、運用する場合に使われる組織であり、過去にあった「スペースコマンド」は衛星の打ち上げと管理を一括して行っていました。今は、その機能は空軍に移管されています。
今回の「スペースフォース」は陸海空軍と並ぶ、新たな軍種になるかもしれません。また、その役割として、宇宙空間における戦闘を想定している可能性も出てきます。


ーー宇宙空間における戦闘とは?

2014~15年以降に、中国が衛星を破壊する能力を開発していると伝えられており、それをアメリカが無視できなくなってきたことが背景かもしれません。宇宙空間には通信衛星以外に、飛行機・船・自家用車などの運用に関わってくる位置情報システムで、アメリカの「GPS」・中国の「北斗」・ロシアの航法衛星測位システム「GLONASS(グロナス)」などがあります。これらの衛星が狙われる可能性があり、それらをどう守っていくのかが焦点になる、それが宇宙空間における戦闘という意です。


そしてなんと、アメリカ以外でもトルコには「トルコ宇宙軍」、ロシアには「ロシア航空宇宙軍」が存在しており、各国とも宇宙を視野に活動を広げている。

カギを握るのは「GPS」

能勢伸之解説委員によると、「宇宙軍」と「ミサイル防衛」の関係性で欠かせないのが、誰もが聞いたことがある「GPS=グローバル・ポジショニング・システム」だという。今では当たり前のようにスマートフォンなどに搭載されており、子供の迷子防止用や地図アプリ、それに車の道案内をするカーナビを使用するのにも、欠かせない機能だ。

スマホにおけるGPSのイメージ

実はこのGPS、防衛面でも大きな役割を果たしているのはご存知だろうか?

たとえば、某国からミサイルが発射されたとして、そのミサイルが日本を狙って飛んでくるとしたら、何としてでも撃ち落としたい。しかし、迎撃(撃ち落とす)用ミサイルも、飛んでくるミサイルの高度や位置などの座標を、正確に把握していなければ、いくら発射したところで撃ち落とすのは厳しいだろう。

そこで出てくるのがGPSだ。
GPSは地球の周りを飛んでいるいくつもの衛星(2014年段階でアメリカは32)の内、少なくとも3つの衛星からの電波を受信することで、衛星からの距離を割り出し、自身の位置を特定する。
小学校で習ったはずの“みはじ”「道のり(距離)=速さ × 時間」の公式を思い出して頂きたい。人によっては、“はじき”「速さ × 時間 = 距離」。

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そうして割り出された距離や角度(相手から発射されたミサイルと、こちらで構えている迎撃ミサイル間の)データをもとに迎撃ミサイルを発射することで、相手のミサイルに命中させて撃ち落とす。
これは防衛用での用途だが、もちろん攻撃用に転じる事もできる。攻撃目標の座標をあらかじめ設定しておき、そこに向かって誘導されるように落ちていく「GPS誘導爆弾」もその1つだ。

この通り、防衛面からは切っても切り離せないほど密接な関係にあるGPSだが、問題は「GPS自体をいかに防衛するか」がカギになってくるということ。位置を割り出す目的で地球の周りを飛んでいるGPSの衛星に、防衛機能は搭載されていない。

・直接、ミサイルで狙われて破壊
・妨害電波による機能停止
・ハッキング


など、様々な脅威にさらされているGPS。ひとたびその機能を損なってしまえば、日常面でも防衛面でも大きな損害になってしまうことは、想像に難くない。

衛星で衛星を攻撃?

今回のトランプ大統領による“宇宙軍新設”発言は、あくまで発言に過ぎず、議会の承認も済んでいないため、発足することは断定できないが、もし本当に新設となれば、こういったGPSのような航法衛星だけでなく、通信衛星や早期警戒衛星などの管理や、そうした衛星を敵の攻撃からどのように防御するかが任務になってくるだろう。

アメリカ議会調査局の報告書によると、「対衛星兵器=ASAT兵器」の試験を、中国が2007年から開始していると書かれている。「目には目を、歯には歯を」という言葉の通り、衛星で衛星を攻撃する「衛星攻撃用衛星」だという。
新設が確定すれば、こうした兵器を叩くことも視野に、活動していくことが予想される宇宙軍。そうなると、宇宙の戦場化が現実になるかもしれない。

こうした事態が背景にあるため、トランプ大統領がこのタイミングで「宇宙軍を新設する」という発言をした可能性がある。