特集は、新型コロナの影響です。今や感染予防は国民最大の関心事と言える状況ですが、耳の不自由な人たちは、情報が入手しづらく不安を抱いています。「手話動画」などに取り組む支援組織を取材しました。

小学部6年:

「これから授業を始めます」

長野市の長野ろう学校。先月18日から登校が再開され、校内にも「新しい生活様式」が取り入れられています。その一つが「透明なマスク」です。

小学部6年:

「これ(フェイスシールド)は見えにくいけど、“透明なマスク”は見えやすいので使いやすいです。(Q.先生の話もわかりやすい)わかりやすいです。口が見えて」

音が聞こえづらく、人工内耳や補聴器をつけている2人。手話や指文字に加え、表情や口の動きも意思疎通を図る上で重要な情報です。しかし、通常のマスクだと…。

長野ろう学校・桜井真治校長:

「顔の表情が見えない、口の形が見えないことによって、コミュニケーションが難しくなるということがあります」

小学部6年:

「普通のマスクだとみんながしゃべっていることがわからないけど、透明なマスクの方は何をしゃべっているかわかります」

授業再開に向けて、学校側はクリアファイルなどで手作りのマスクやフェイスシールドを作りました。

ただ、「声がこもる」「反射して見えづらい」などの難点がありました。そうした中、マスク問題に動いていた県聴覚障害者協会が学校に「透明なマスク」を寄贈しました。

長野ろう学校・桜井真治校長:

「表情がわかるということが、安心できるということにつながっている」

今はこのマスクに、3密を避ける対策も講じて学校生活が送られています。音声に頼らず情報を汲み取る必要がある耳の不自由な人たち。コロナの感染予防で大きな課題となっているのも、その情報をどう入手するかです。

県聴覚障がい者情報センター・上嶋太さん:

「情報というのはすごく大事です。聞こえない人の場合、集まって話をする。それで情報交換するのがいつものこと。それができなくなりました」

協会が指定管理者となって運営する「県聴覚障がい者情報センター」。社会参加を支援する組織ですが、上嶋さんたちはこの数カ月、コロナの情報発信に力を入れてきました。

(2月25日)阿部知事:

「陽性反応が出た方が1名いらっしゃいました。感染者の確認は初めてという形になります」

県内初の感染者が確認された時の会見。手話通訳などはなく、上嶋さんたちは、すぐに詳細を知ることができませんでした。

県聴覚障がい者情報センター・上嶋太さん:

「東京とか、あちこちで市中感染が始まりまして、次に長野にも来るんだろうか、いつだろうかという状況になった時、皆さんが気になったのは、どこで、誰がということが不安になったと思う。聞こえる人がすぐにわかることを、聞こえない人も知りたいと思う気持ちは同じ。その辺が不安に感じたことが記憶に残っています」

不安解消のため、センターは「手話動画」の作成に動きます。長野市で初めて感染者が確認された時の会見は、手話通訳して動画を「ユーチューブ」で公開。

以後、「感染を防ぐ方法」や「デマへの注意喚起」「特別定額給付金の申請方法」なども動画にしました。

動画:

「体温は何度ですか?」

「(スマホの音声)朝、計ったら38度でした」

「今朝から熱が出ましたか?」

こちらはPCR検査の説明動画です。4月下旬から、オンライン上の手話通訳者を介す「遠隔手話サービス」で受診できるようになりました。患者役、医師役を登場させ、わかりやすく説明しています。

県聴覚障がい者情報センター・上嶋太さん:

「実際に行動するモデルを見ると、それがわかりやすい。注意しなければいけないのは、(情報は)聞こえる人と同じではなくて、聞こえない人に合った方法があります。それが何かということを考えて表すのが大事だと、いつも気を付けています」

一方で、情報を手話の動画にしただけでは十分でないこともありました。例えば、症状があった場合、県は「まず電話相談を」と呼びかけていますが…。

県聴覚障がい者情報センター・上嶋太さん:

「聞こえない人は、“相談”というと、会って相談するという習慣がある。長年、電話はできませんし、FAXだと会話の形になりにくいので、“相談”というと、すぐ会ってやるものだという習慣があります」

県は当初からFAX相談を受け付けていましたが、実施していたのは平日の日中のみ。

あまり周知もされていませんでした。そこで…。

県聴覚障がい者情報センター・上嶋太さん:

「もしも土日に熱が上がったらどうしたらいいかと、聞こえない人が不安を感じていたので、県に対して、電話が24時間だったらFAXもそうしてほしいとお願いしました」

FAX相談用の質問表が協会などを通じて聴覚障害者に配布され、3月13日以降は24時間のFAX相談が可能になりました。

目に見えないウイルスに、伝わってこない情報。第2波が懸念される中、センターでは引き続きビデオ会議システムやアプリなどの活用も模索していきたいとしています。

県聴覚障がい者情報センター・上嶋太さん:

「情報がないという不安もあると思いますし、まずどこに相談に行けばいいかや、それより前に情報があることに気が付けない人もいるかもしれません。(行政などは)聞こえない人がいることを十分理解していただいて、発信する際は音声情報だけでなく、文字、手話を含めて考えていただければ」

(スタジオ)

取材した記者:

このコロナの問題ではクラスターやロックダウンなどの新しい言葉も出てきて私たちも戸惑いました。

耳の不自由な人にとっては、そうした言葉も入手しづらく、現場では理解を広めるのが難しいという話もありました。また、動画配信やオンライン上の手話通訳は、高齢者にはハードルが高いという課題もあります。ですから、行政や医療機関はもちろんですが、私たちもわかりやすい情報発信を心がけたいと思いました。

協力 手話通訳士・山川利恵さん