経理にも新しい働き方を

新型コロナウイルスにより、全国的にテレワークが浸透しているが、職種だけでなく、部署によってもテレワークが難しいことがある。

「総務のリモートワーク実施に関する調査」で、完全テレワークを実施した総務は1.6%だったという結果とその課題を先日、編集部でもお伝えした。

(参考記事:緊急事態宣言中に完全リモートできた総務はわずか1.6%…調査した「月刊総務」に理由を聞いた

そして今回は、こちらもテレワークが進んでいない部署といえる経理の話。
郵送で送られてきた請求書の処理などのほか、テレワークにした場合のセキュリティ-の問題もある業務だろう。

こうした中、請求・集金などの作業を全て自動化し、経理業務の負担を減らすクラウドサービス「請求管理ロボ」を提供している株式会社ロボットペイメントが、7月2日に賛同企業と共に経理の新しい働き方を共創するプロジェクト「日本の経理をもっと自由に」を発表した。

提供:株式会社ロボットペイメント
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10月1日に施行される「改正電子帳簿保存法」で、請求書や契約書などを電子データで保存する規制が緩和されることを見据えて立ち上げたプロジェクト。

ただ、取引先も電子化が進まなければ、完全な電子化は実現しない。このプロジェクトでは「#さよなら紙の請求書」を掲げ、「紙の請求書の電子化」を推進する。

提供:株式会社ロボットペイメント
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現在、請求書電子化サービスの導入率は34.2%、推定125万社。プロジェクトでは、これをまず50%、推定183万社に増やすことを目指しているという。
 

提供:株式会社ロボットペイメント
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「紙」が経理の働き方を不自由にしていた

そして、ロボットペイメントは「経理1000人に聞いた緊急事態宣言下における働き方と電子化推進に関するアンケート調査」の結果も発表した。
(全国20歳~59歳の現役の企業経理担当者1000人を対象に、6月13日~6月15日にインターネットで調査)

まず、「外出自粛期間中に、テレワークを実施できたか」という質問に対し、「実施できなかった」と答えたのは69.1%だった。
 

提供:株式会社ロボットペイメント
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そして、「経理のテレワーク(在宅勤務)を阻害した要因」については「紙の請求書業務」が1位だった。続いて、2位「入金支払い管理」、3位「紙の経費精算業務」と、やはり紙に関する業務が多かった。
 

提供:株式会社ロボットペイメント
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その「請求書業務」を電子化するべきだと回答した経理は約9割。この調査結果をもとに経理人口全体に置き換えると推定184万人に上る人がそう思っているのではないかと試算している。
 

提供:株式会社ロボットペイメント
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そして、「紙の請求書業務が電子化されると経理の働き方は変わると思う」と回答したのが約9割と電子化を期待する一方で、「外出自粛期間中にテレワークができなかったことで転職や退職を考えたか」の質問には、「とても考えた」4.6%、「少しは考えた」14.9%との回答。
20、30代に限定すると約3割以上が転職や退職を検討していて、コロナ禍でもテレワークができない経理の業務に不満を感じていることもわかった。

提供:株式会社ロボットペイメント
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この調査結果から、今後経理の業務内容はどう改善するべきなのか、株式会社ロボットペイメントの担当者に話を聞いた。

従来から「紙」ベースの業務が非常に多く存在

ーー「経理」の仕事を改めて教えて?

伝票作成・管理、現金出納、売掛金・買掛金管理など日々の資金の流れを管理するだけでなく、会社の資産管理や決算書類の作成を行い、会社の資本や利益の流れを管理しています。
また、経理の業務は、毎日の業務・毎月の業務・決算タイミングでの業務を、法律やルールを遵守した形で、ミスなく「処理」を行うことが多く存在しています。


ーー調査を行ったきっかけは?

今回のプロジェクト発足にあたり、実際に経理の方がどれくらいのニーズや課題感を持っているのかインサイトを可視化すべく実施しました。


ーーテレワーク阻害要因について詳しく教えて?

「紙」の業務がテレワークを阻害したと言えます。
その中でも、請求書が1位になった要因として、「自社で電子化が進んでいても取引先から送付する請求書が紙の場合、受け取りに出社する必要がある」のではないかと考察しています。

経理は従来から「紙」ベースの業務が非常に多く存在します。その理由は、「紙」でないと正式な書類として認められなかった時代があったためです。


ーー転職・退職を検討している人の理由は?

理由は聞いていませんが、「緊急事態宣言中にテレワーク出来なかったことへの不満」についてアンケートをとったところ、下記のようなフリーコメントを現役の経理からいただいています。

・家でできない仕事が多い(40代女性)
・他の職種の方は出来ていたので(40代男性)
・通勤による感染の危険性(60代男性)
・紙文化から出られないから、出社せざるを得なく、感染リスクがある(30代男性)
・部署によって出社必須業務があるところと無いところがある(50代男性)

経理部門の電子化導入は、優先度が低くなりがち

ーーなぜ電子化導入が受け入れられない?

経理部が間接部門であり、IT投資が利益を生み出す「営業」や「マーケティング」よりも優先度が低くなりがちであることが要因かと思います。

また、経理部門の業務は監査法人とのやりとりや、ガバナンスが効いたフローの構築、紙で回ってしまう業務の影響もあり、優先順位が下がっている原因となります。


ーー調査を行って印象的な回答はあった?

「経理の仕事において、紙の請求書業務を電子化した時のメリットは何だと思いますか」という質問に対し、テレワーク以外にも、「印刷代・切手代・郵送代が浮く」「生産性が上がる」「労働時間が削減される」様々なメリットを上げる経理の方がいたことです。

つまり、covid-19(新型コロナウイルス)でテレワークが注目されましたが、それ以前から電子化されていないことについて不便を感じていたということが結果として表れています。


ーー「紙の請求書の電子化」によるメリットは?

定量面では、仮に弊社サービス「請求管理ロボ」を導入した場合、717時間の業務時間が削減されます。(※請求書作成(240時間)+入金消込(178時間)+催促対応(299時間))従来は、紙の作業となっていたため、以降の入金管理や債権管理、会計などが販売から分離していました。

しかしながら、請求書電子化により、請求書が、電子データになるため、以降の業務も全てシステム化が可能となり、ルーチンワークをシステムで行うことができます。

結果として、請求業務の80%削減・効率化出来るといったデータが示すように人がやらなくてもよい業務から経理を開放することで、より企業経営に直結したコア業務に注力できます。​
 

電子化導入でセキュリティーは安全?

コロナ禍での社内の他部署と比べての不公平感という声もあったが、もちろん生産性アップなど電子化でのそもそものメリットを上げる意見もある。

しかし、間接部門のためお願いしにくいのか、今回の調査では、紙の請求書業務の電子化を進めるよう勤務先にIT導入をお願いしたことがある人は14.4%しかいなかった。

提供:株式会社ロボットペイメント
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さらに、お願いしたことで請求書業務の電子化が進んだと回答した人は35.4%と、3人に1人しか要望が通っていなかった。

こうした現状が、今回のプロジェクトにつながっているのだろうが、電子化が進みテレワークが可能になった場合に気になるのがセキュリティー面だ。これについても聞いてみた。

提供:株式会社ロボットペイメント
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ーー電子化導入でセキュリティー面はどう?

コロナ前は、オンプレミスで社内に閉じたシステムで、インターネット環境と遮断した環境で行うのがセキュリティが高い状態でした。
しかしながら、柔軟な働き方を構築する場合、クラウドサービスで場所にとらわれない業務環境の構築が必須になります。

多くのクラウドサービスは、一定の顧客が利用しており、常に外部環境に晒されていることから一定のセキュリティレベルが担保されているため、安全と考えます。

また、紙の場合紛失のリスクはありますが、電子化の場合クラウド環境のログインIDやPWの管理や、平時の際はIP制限をかけ、有事の際はIP制限を外すなどの対策が良いと考えます。
 

提供:株式会社ロボットペイメント
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ーー経理の今後の課題について教えてください。

大手企業の経理はキャリアパスが比較的作りやすい。しかしながら、99%が中小企業の日本では、1人2人経理体制が多く、ルーチンワークに忙殺され、専門的な知識や経理の数字を使った経営戦略やファイナンスなど次のステップへのアクションが取れていないことが課題になっています。

ルーチンワークから解放することで、経理が「処理」をすることが業務であった状態から、経理データを使った、分析や将来予測、経営への示唆など、より付加価値の高い仕事ができるようになり、経理業務を担当する人のスキルアップやキャリアパスの醸成などが可能になります。


ーー今後、経理はどう変わるべき?

定型業務を自動化し、機械ができることは機械に任せていくべきだと考えています。本当に人がすべきコアな業務に集中することで、数値を元にした経理発のファイナンス戦略を立てることができて企業経営に貢献できますし、経理担当者自身も、ワークライブバランスが保った働き方や、経理の勉強時間の確保等、キャリアアップにつなげることができるからです。

 

新型コロナウイルスの影響は、働き方を見直す機会になったという側面もある。これまでの“当たり前”にとらわれず無駄をなくし、生産性をあげるための改革はどの職種や部署でも必要ではないだろうか。
 

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プライムオンライン編集部
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