「お互いを必要とし利用しあえる相手」

アメリカのトランプ大統領とロシアのプーチン大統領が16日、ほぼ1年ぶりに本格的な首脳会談を行った。「関係改善で一致」「具体的成果なし」などなど当たり障りのない論評が目立つが、両大統領にとって大事なことは、『お互いを必要とし利用し合える相手』であると改めて確認することだったに違いない。
もっと直截に言えば、プーチン大統領はカウンターパートとしてトランプ再選を望み、トランプ大統領はプーチン流支援が陰に陽に差し伸べられることを期待する。少なくとも首脳同士はそういう関係で‥という確認だ。
その意味で首脳会談は目的を果たせたと思う。通訳のみを交えた1対1でおよそ2時間にわたって話し合ったことは両首脳にとって大きな意義がある。

プーチンにとってベストのアメリカ大統領は?

3月の大統領選で圧勝したプーチン大統領の任期は2024年5月まで。内政外交を進めるに当たっては、任期中に誰がアメリカ大統領なのかが最重要の与件となる。アメリカ大統領は2021年1月までトランプ、その後2025年1月までは、再来年11月の大統領選の勝者が大統領を務める。その顔ぶれの可能性は3つ;

①トランプ×トランプ
②トランプ+共和党の別人
③トランプ+民主党大統領

考えるまでもない。プーチン大統領にとって最悪は③だ。オバマもヒラリーも大嫌いだった。だからこその2016年の選挙介入だ。
②の場合も共和党主流派が大統領となると面倒だ。ライアン下院議長の「ロシアは同盟国ではないことを認識すべき」発言や、マケイン議員の「悲劇的な誤り」発言など、考えるだけでうんざりだろう。
その点①のトランプ×トランプはくみし易い。
結論。トランプが再選されるように協力すべきだ。

トランプが無視できないロシアの影響力

トランプ大統領の再選戦略にとってもロシアの影響力は無視できない。
それは2016年大統領選挙を実際に戦ってみたトランプ陣営が一番良く分かっている。
共謀があったと言うつもりは全くない。それはムラー特別検察官が捜査すべきこと。
だが、アメリカの情報機関が「ロシアの干渉は明白だ」と何度も公に認定しているにもかかわらず、トランプ大統領がそれすら否定してみせるのは、ロシアの影響力を実感したことの表れと受け止めるのが自然だろう。情報機関からの報告やFacebookなどSNS大手のフェイクニュース対策の大がかりさを見れば、トランプ大統領とてロシアの工作の規模と影響を知らないで済むはずがない。
しかし、認めてしまったら政権の正統性にケチがつき、『トランプ神話』に陰りが出る。だから否定するしかない。

ロシアはサイバー攻撃力で世界有数の国だ。世論の誘導・操作・宣伝技術もピカイチ。それがロシアのハイブリッド戦争力の重要な構成部分になっている。よってサイバー攻撃力や世論操作・宣伝技術が一層高度化していくことは疑いない。
2016年と同じ手法では通用しない可能性が高いが、2020年のアメリカ大統領選挙を巡っても、新たなやり方で可能な範囲で介入を目指すと想定すべきだろう。彼らはその影響力・効果を経験しているし、こうあってほしいと考えるアメリカの政治状況も明確に意識できているからだ。

米ロ首脳の“無言の取り引き”

トランプとプーチン。2人は権力者でいるという目的のために手段を合理化できる似た者同士だ。
一方は「アメリカ・ファースト」を掲げ、もう一方は「強いロシアの復活」を謳う。
2年後に不確実な選挙を戦わなければならないのはトランプ大統領だ。そしてプーチン大統領には実行力と実績がある。
持ちつ持たれつの2人に請託・受託関係は不要だ。あるのは“忖度”。“無言の取引”と言ってもいいかもしれない。
ヘルシンキでのトランプ・プーチン会談で、2人は分かり合えた。
会談後の首脳共同会見の発言と映像には、そう思わせるものが満載だった。

(執筆:フジテレビ 解説委員 風間晋)