山﨑さん演じる医師は“圧倒的記憶力”

俳優:山﨑賢人さんが、「サヴァン症候群」である小児外科研修医を演じるドラマ『グッド・ドクター』(木曜よる10時)の放送が始まりました。

 
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「サヴァン症候群」はあまり聞きなれない言葉ですが、自閉症スペクトラムなどの発達障がいや知的障がいがある人のうち、ごく特定の分野に限って突出した能力を持っている状態を指す用語です。「サヴァン(savant)」は、『賢人』という意味です。
山﨑さん演じる医師も、一度読んだ資料の内容を完璧に覚えている圧倒的な記憶力を持つ一方、発達障がいのため、周囲とうまくコミュニケーションが取れないという人物です。

※発達障がいについては以下に詳述
【クラスに2人は「発達障害」 大人になると二次障害も…】
https://www.fnn.jp/posts/00323570HDK
 

実在する「天才」たち

「サヴァン症候群」は、これまでも何度か映画やドラマで取り上げられてきました。有名なのは映画『レインマン』。
ダスティン・ホフマン演じる「サヴァン症候群」の人物のモデルとなったのは、キム・ピーク氏(1951~2009)。
彼は、9,000冊の本の内容を正確に覚えているという驚くべき記憶力がありました。
しかし、重い発達障がいや中枢神経系での異常もみられ、父親に手助けしてもらわなければ日常生活は困難だったとされています。

ダニエル・タメット氏(Facebookより)

現在、「サヴァン症候群」で世界的に有名なのは、ダニエル・タメット氏(1979~)でしょう。
自閉症スペクトラムである彼は、数字を色相や感覚と結びつけて理解する「共感覚」と言われる能力を持っています。
2004年には、円周率22514桁を5時間以上かけて暗唱し、ヨーロッパ記録を樹立しました。

また、その才能は言語の分野にも及びます。母国語である英語のほか、フランス語、フィンランド語、ドイツ語、スペイン語、リトアニア語、ルーマニア語、エストニア語、アイスランド語、ウェールズ語とエスペラント語を含む11ヶ国語を話す事が出来るのです 。
 

それぞれが、様々な分野に突出した能力

 

まさに圧倒的ですが、「サヴァン症候群」の人には、他にもどのような分野で高い能力を発揮するんでしょうか。

驚異的な記憶力
電話帳を1冊全部覚えたり、国・都市の全ての人口統計、会った全ての人のこと等々、その記憶量は驚くべきものがあります。何年何月何日に、何があり、何を言われ、何をされたか等、過去の全てを詳細に記憶できる場合、嫌な風景や出来事も鮮明に思い出してしまうことがあり、パニックを起こすことも有り得ます。

●芸術的な能力
細かい描写に優れており、写真のような精度の絵を描くことがあります。

●音楽的才能
習ったことがない楽器の演奏が出来たり、一度聞いただけの曲を完全に再現して演奏できる人もいます。

●計算能力
過去や未来の年月日を指定されると、直ちに何曜日か言い当ててしまう『カレンダー計算』の能力は、比較的多くの「サヴァン症候群」の人に見られる能力です。
また、解くのに時間がかかる6ケタの立方根の問題を、数秒以内で解いてしまった等が報告されています。

●時間・空間的認知の能力
時計を見ずに正確な時間がわかったり、離れたところにある物体の幅を正確に言うことができる等の例があります。

複数の分野で能力を発揮するケースもありますが、「サヴァン症候群」の人が能力を発揮する分野は、人それぞれです。
 

2つの「サヴァン症候群」

 

では、「サヴァン症候群」の人は、どれくらいいるんでしょうか。
自閉症スペクトラムの人のうち、約10人に1人が「サヴァン症候群」だと言われています。しかし、それは「自閉症スペクトラムの人には天才が多い!」という事とは違います。また、そういった思い込みは自閉症スペクトラムの人をかえって追い込んでしまうことにもなりかねません。

「サヴァン症候群」には、「有能サヴァン」と「天才サヴァン」の2つのケースがあります。

「有能サヴァン」は、その人の知的発達レベルから想定される以上の能力を、ある分野で示します。それは、障がいを持たない人等と比較して優れているという意味ではありません。一般的にはそれほど突出した能力ではなくとも、本人の全般的な知的発達レベルに比べて、ある能力だけが高い場合を指します。

「天才サヴァン」は、能力がアンバランスにはなっていますが、特定の能力は常識を逸脱するような驚異的なものであるケースです。「天才サヴァン」は、これまでに世界全体で発見された人数は100人にも満たないと言われており、極めて稀なケースであると思われます。

また、天才的な特定の能力はあってもその以外の能力についてはかなりアンバランスなこともあります。何千年にわたる暦の『カレンダー計算」に関して驚異的な能力を発揮する一方、実際の計算問題になると、一桁の足し算も出来ないし、計算を紙に書くこともできないといった「サヴァン症候群」の例もあります。
 

なぜ「サヴァン症候群」になるのか

 

では、なぜ「サヴァン症候群」になるのか、そのメカニズムは、未だに解明されていません。

有力な仮説の1つとしては脳の器質的な要因が挙げられます。
「サヴァン症候群」の突出した能力は右脳との関連が深いと言われいます。
しかし、実際に「サヴァン症候群」の人の脳を調べると、左脳に異常がある可能性がみられます。
つまり、左脳の異常を補うために、右脳が発達したのではないかと考えられています。

先ほど、『自閉症スペクトラムの約10人に1人が「サヴァン症候群」と言われる』と記しましたが、実際に「サヴァン症候群」だと診断されている人はそれほど多くはありません。
というのも、現在「サヴァン症候群」は、国際的な診断マニュアルや、世界保健機関(WHO)の『国際疾病分類』などでは明確な診断カテゴリーとして確立していないからです。
そのため、医学的な診断名として「サヴァン症候群」を用いることは一般的ではなく、診断名としては何らかの発達障がい・知的障がいとされることが多いと思われます。

発達障がいの人は、今は多くの方に身近にいらっしゃると思います。
今回のドラマ等を通して、そうした方々への理解が一層進んで行くことを期待します。

(執筆:医学博士 小林晶子)