拾った香水をプレゼントしたら彼女が死亡

まっさらのパッケージに入った香水を拾い、数日後、それを彼女にプレゼントした。
彼女はその香水のブランドを知っていて、すぐに手首に吹きかけ、擦りつけた。
15分後、彼女の様子が急速に悪化し、病院に運ばれた。
自分も香水に触れたが、匂いが全くしなかったので不審に思い、水道で洗い流した。
程なくして、自分も具合が悪くなり、意識を失った。
8日後、彼女は他界した。

嘘のようだが本当の話である。

死亡したドーン・スタージェスさん
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先月末、イギリス南西部のエイムズベリーという町で、男女のカップルが男性の自宅で相次いで倒れ、意識不明の状態で病院に運ばれた。当初は薬物中毒が疑われたが、その後、2人は、猛毒の軍事用神経剤・ノビチョクに曝されたことが判った。

世界的なニュースとして報道された事件だが、懸命の治療の結果、一命を取り留め退院に漕ぎ着けた男性は、24日、イギリスのテレビのインタビューに応じた。上記は、その証言の骨子である。

英・エイムズベリー 7月5日

この男性は、さらに、次のようにも述べている。

自分は一命を取り留め、意識も回復した。
そして、瓶の中身が香水ではなく、猛毒の神経剤・ノビチョクであると知らされた。
拾った香水は新品にしか見えないまっさらのパッケージに包まれていて、中身を取り出すのに刃物を使ってプラスチック包装を破らなければならなかった。使い掛けではなかった。

3月には元二重スパイ父娘がノビチョクで…

3月には、エイムズベリーに程近いソールズベリーで、元二重スパイのロシア人と娘の2人が自宅の玄関ドアのドアノブに吹き付けられていたノビチョクで重篤に陥るという事件があった。こちらの事件も大々的に報道されたのでご記憶の方も多いと思うが、2人は共に助かり、今は当局の保護下にいる。

ノビチョクは旧ソビエトが開発した猛毒の化学兵器の一種で、イギリス政府は、当初からロシア政府の関与を疑い、既に双方の外交官の追放合戦にも発展している。

3月、ロシア人元二重スパイ父娘がノビチョクで襲撃された

2つの事件の関連は?

この二重スパイ父娘襲撃事件とエイムズベリーの事件で、イギリス当局は、犯行グループや背後関係の解明に当たると共に二つの事件の関連等を調べている。その関連について言えば、これまでは、最初の事件で使われたノビチョクの残りを犯行グループがソールズベリーかその近くで廃棄し、エイムズベリーの被害者はそれに知らずに触れてしまったという推測がなされていた。
しかし、エイムズベリーの2人が接触したノビチョクは、使い掛けの瓶ではなく新品同様にしっかり包装されたパッケージに入っていたことが、今回の証言で判った。となると、新たな疑問が次々と沸いてくる。

英・ソールズベリー 4月10日

最初の事件で使われたノビチョクに残りは無かったのか?あったとすれば、それはどう処理されたのか?
2番目の事件のノビチョクは最初の事件の予備として用意されたのか?それとも全く別に用意されたのか?
2番目の事件のノビチョクが置かれていた場所は不明だが、それは廃棄されたのか?それともわざと置かれていたのか?
わざとだとすれば何故か?最初の事件の捜査のかく乱の為か?もう他には無いと言いきれるのか?

最初に起きた二重スパイ父娘襲撃事件では犯行の関わった可能性のある複数の不審人物が浮び上がっているという報道もある。

そうだとすれば、捜査はかなりの程度進展している可能性がある。しかし、真偽や詳細は明らかにされていない。

イギリスでノビチョクが使用された二つの恐ろしい事件は、事実は小説より奇なりをまさに地で行く、謎が謎を呼ぶ展開となっているのである。

(執筆:フジテレビ 解説委員 ニ関吉郎)