「今年の夏は例年以上に暑い」毎年そんなフレーズを、耳にしていると思うが、それにしたって暑い。そんな夏も、来年からは元号を変えてやってくる。

「平成最後の夏」思えばあっという間だったように感じるかもしれないが、この30年間の内に様々なものが移り変わっていった。お祭りや縁日、海の家などでの定番、夏の風物詩である「かき氷」も、その1つだ。


実はかき氷の歴史は意外にも古く、最も古い記録だと、平安時代まで遡るという。清少納言が記した有名な随筆集「枕草子」に「削り氷」という名で出てくるのだ。

1000年以上もの歳月が経過しているが、その歴史の大部分においてかき氷は、高級品として珍重されていた。日本に製氷技術ができたのは、昭和に入ってからのことだったからだ。

そんなかき氷は、平成という時代の中で、多種多様な進化を遂げてきた。

「平成のかき氷」を振り返る

日本では「スイーツブーム」が度々、列島各地で巻き起こる。たとえば、1990年(平成2年)の「ティラミス」、1993年(平成5年)の「ナタデココ」、2004年(平成16年)の「マカロン」、2011年(平成23年)の「パンケーキ」などがそれにあたる。

上にあげたスイーツブームがその年のみで収束していく傾向だったのに対し、かくいう、かき氷はというと、年が経つごとに進化しており、今なおブームの渦中にあると言える。

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子供の頃、お祭りに出かけた際に、必ずと言っていいほど購入していた、屋台の「かき氷」。先が切れ、スプーン状になったカラーストローで食べるという行為にテンションが上がった。

そして、何口も食べていると頭がキーンと痛み出す「アイスクリーム頭痛」は、この時代のかき氷ならではのものだ。

プラスチックのストローで、かき氷を食べる子供
プラスチックのストローで、かき氷を食べる子供

シロップは有名どころで、「いちご」や「ブルーハワイ」「レモン」などが定番だろうか。ちなみに、そういったシロップをかけるのではなく、「スイ」という砂糖水をかけて頂くスタイルも存在する。

ふわふわ系の登場

そんな「シロップ+氷」のシンプルな構成だったかき氷業界だが、FIFA女子ワールドカップで「なでしこジャパン」が初の世界一を手にした2011年(平成23年)に革命が起きる。

これまでのシンプルなかき氷のイメージから一新し、天然氷を使用した「ふわふわ系かき氷」と呼ばれるものを売り出す、かき氷専門店があちこちで出店され始めたのだ。山盛りに器に乗せられたその見た目は、さながら綿あめのようでもある。

ふわふわ系かき氷イメージ
ふわふわ系かき氷イメージ

これを皮切りに、テレビや雑誌で「かき氷」について取り上げられる機会が増加。その結果、「ふわふわ系かき氷」という名前は一気に広まっていった。

かき氷専門店の中には、開店前に整理券を配布し、数時間待たなくてはいけないこともざらにあるほど、かき氷ブームは加速していった。

日本に上陸した「台湾」のかき氷

そして、日本のかき氷ブームに拍車をかけるように登場したのが、海外からの刺客「台湾かき氷」だ。

マイナンバー制度が始まった2015年(平成27年)前後、台湾に本店を持つ「かき氷専門店」がいくつも、東京に支店を構え始めたのだ。

氷自体に味がついており、各種フルーツやコーヒー、紅茶などそのままの味を再現した氷「フレーバーアイスブロック」を使用し、ふわふわを超える「ふわっふわ」かき氷に仕上げるという、これまでの日本にはなかった台湾かき氷は、瞬く間にかき氷界を席巻していった。

台湾かき氷の中でも、やはり人気なのは台湾名物である「マンゴー」を使った、マンゴーかき氷だ。マンゴーのアイスブロックにマンゴーのシャーベットを盛りつけ、さらにマンゴーソースをかけてある、これでもかというほどにマンゴーをふんだんに使用した一品。

マンゴーかき氷イメージ
マンゴーかき氷イメージ

その後、マンゴーを使ったかき氷は、都内を始めとし、爆発的に人気を呼び、各地の店でも売り出されるようになった。

かき氷界の新星「炙りかき氷」

そして、平成最後の夏である今年2018年(平成30年)話題になっているのが、その名もずばり、「炙りかき氷」。


「かき氷を…炙る!?」


氷を温めたら水へ戻るに決まっている。そんな固定概念をぶっ壊したこのネーミング。
そもそもの話として、温かいのか冷たいのか。

疑問だらけで気になる「炙りかき氷」を出しているのは、青山にある「INTERSECT BY LEXUS - TOKYO」だ。

ベースとなる氷は、自然の寒さでゆっくりと凍結させた、純度の高い軽井沢産の天然氷を使用し、ふわふわとした食感が特長だ。純度が高いため、頭もキーンとなりにくい。

その氷を覆うように、百年リンゴの果汁を含ませたメレンゲの、エスプーマをたっぷりとかけてある。エスプーマとは、液状の食材をムース上にする料理法のことだ。その上からガスバーナーで炙っていく。

リンゴと砂糖、卵白を絶妙なバランスで混ぜ合わせ、エスプーマ内の密度を上げることで、氷まで熱を通さずに、エスプーマの表面だけを炙ることができるとのこと。スライスしたリンゴも忍ばせており、食感の変化も楽しめる。

“温”と“冷”が共存する、話題のかき氷は、税込1,000円で楽しめる。

今では、かき氷を食べる人・作る人・楽しむためのリストなどを総称した「かきごおりすと」という造語も出てきている。「ふわふわ系かき氷」が出始めた2011年から2018年の今に至るまで、かき氷ブームが根強く残っていることが分かる。

次の元号では、どのような進化を遂げた、かき氷に出会えるのだろうか。
想像はいろいろと膨らむが、正直こんなに暑すぎる夏はもう、こおりごりである。

プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。